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8話




邸に戻り制服を脱いだエリザベスは滅多に着ないドレスを着て、友人達が来るのを客間で待っている。アリサに言わせると「侘しい」部屋の飾り付けや料理もエリザベスにとっては十分過ぎるものばかりで、自然と気分が高揚する。パーティーと言っても夜にはお開きにし、客間も使用する前の状態に戻さなければいけないので楽しめるのは数時間程。それでもエリザベスは年に一度の特別な日を楽しみたかった。


時間になりリラ達友人が到着する。エリザベスへのプレゼントやお勧めのスイーツや料理を持った侍女達を伴って邸の中に入って来た。皆口々に「学園にいる時も言ったけど、リズお誕生日おめでとう」と祝いの言葉をくれる。エリザベスは目頭が熱くなるのを感じた。たとえ家族からの愛が得られなくとも、確かにエリザベスを大事に思ってくれている人々がいる。だからエリザベスは折れることなく生きていくことが出来ている。


リラが持ってきたホールのケーキは季節のフルーツをふんだんに使った見目も美しいものだ。人数分に切り分けられたケーキを一口、口に運ぶとフルーツの甘みとふわふわのスポンジ、甘さ控えめのクリームが口の中に広がる。美味しい、と顔を綻ばせた。アイナやダリアも皆一様に笑顔だ。リラはそんなエリザベスの反応を見て誇らしげである。


「美味しいでしょ?他のスイーツも絶品だからぜひ食べてみて」


「今度うちでお茶会を開く時こちらのケーキを出してみるわ」


「私も」


 リラ、アイナ、ダリアが口々に言う。エリザベスは招待されるのは兎も角、自分から茶会を開いたことがない。父から許可が降りないからだ。アリサや義母は友人を招き頻繁に開いているらしく遠目で見かけたことがあるが、笑顔でその場にいない令嬢や夫人を槍玉に上げ自分の方が上だと示すのに必死だった。アリサ達はお茶会を開けないエリザベスを憐んでいるが全く羨ましくない。あんな怖い催しに参加したくないとすら思ってる。エリザベスは内輪のお茶会にしか参加したことがないし、これからアリサ達の言うお茶会に参加したくない。美味しいスイーツや紅茶を楽しみながら、友人達と語らう。誕生パーティーのようなお茶会なら大歓迎だ。


つくづく貴族令嬢に向いてない。やはり目指すなら職業婦人、そして自立である。未来に思いを馳せながらダリアの持ってきたローストチキン、アイナの持ってきた新鮮な海鮮を使ったカルパッチョのサラダ、ダルの作ったスープやキッシュ等を楽しんでいると客間のドアがノックされた。ダリアがいち早く反応する。


「?何かあったのかしら?まさかコルネリア伯爵が帰って来たの?」


ダリアの言葉に皆嫌そうな顔をする。父はエリザベスの友人には表面上普通に接していたが、エリザベスへの態度を知っているため良い印象は持っていない。


「帰ってこないはずだけど、もしお父様ならパーティーを辞めるように言われるかも…」


「うーん、もしそうなったら私が説得してみるわ」


不安がるエリザベスを励ますダリアは侯爵令嬢。この中で唯一の伯爵家より上の出身で父もそう簡単に邪険には出来ない。友人の手を煩わせることを申し訳ないと思いつつ、「どうぞ」とノックの主を招き入れる。入って来たのは執事だった。


「失礼致します。お楽しみのところ申し訳ありませんが、エリザベスお嬢様にお客様です」


 「私に?」


 エリザベスを訪ねてくる人はここにいる数人くらいだ。その全員がここにいる今、客人に心当たりはない。


だが見るからな不審な相手なら、この執事は当主が不在だから日を改めて欲しいと伝えお引き取り願っただろう。エリザベスに取り継いだということは問題ないと判断されたのだ。そして何の先触れもなく他家を訪問するのはマナー違反、しかし訪問した相手が高位貴族ならそれも許される。


(考えられるとしたら侯爵家以上の方?もしかしてウォルター様?いえ、ないわね。彼なら彼が追い返してるでしょうし)


エリザベスはやはり心当たりがない。しかし逆に訪問者が誰なのか興味が湧いてきた。エリザベスは立ち上がりリラ達に告げる。


 「ごめんなさい、少し出てくるわ」


 「分かったわ、いってらっしゃい」


 彼女達を残し客間から出たエリザベスは執事の後に続き、客人のいるという応接間を目指す。ふと、執事から甘い香りがふわりと漂う。


 (これは薔薇の匂い?でもうちに薔薇はないはずだけど)


 何故邸にない花の匂いが執事からするのか疑問に思ったものの、応接間の前に辿り着くと気にする余裕も無くなった。エリザベスはドアをノックする。


 「失礼します…え?」


 応接間に足を踏み入れたエリザベスは部屋の中から薔薇の香り、そしてソファーに座る人物を見て、思わず声を上げた。その人物もエリザベスに気づき、こちらを向いた。


 「…突然押しかけて申し訳ない」


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