03 光と闇の試練
目の前にあるのは金の装飾が施された金と銀の扉。
どちらを開こうとも問題はない。
しかし、その場合。何かが起こる――的なことをこの空間に送られてから聞いた。
「んーじゃあ金から行こうかな。安全みたいなイメージあるし……」
金の扉を開け、光り輝いている中の空間に足を踏み入れる――
「お! まずはアタシの空間に遊びに来てくれたのね♪ ありがと! それではでは! 光の試練を開始しまーす!」
扉の向こう側では薔薇の咲き誇る庭園っぽいところでやけにハイテンションになっていた白髪の方の女性がいた。
そうだこの機会に名前を聞いておこう。
名前わかんないと不便だし。
「貴方の名前は?」
「名乗ってなかったわね! アタシの名前はウィルオ・ウィスプ! この名前、男っぽくて好きじゃないから気軽にウィルちゃんって呼んでね☆」
「あ、はい、よろしく……ウィル」
「よーし! 名乗りも終わったところだしっ! さっさと始めちゃいますかね! あ、あんまり身を固くしなくていいわよ。するのは質問よ。そのことに対して思ったことを素直に言えばいい」
ほ……ならよかった……さすがにいきなり戦闘とかになったらどうしようとか思ってたから……
質問って何を聞かれるんだろ? 好きな物とか?
「――光の試練」
そうポツリ、とつぶやかれた声に反応するかのように庭園が崩壊し作り替わっていく。
目の前に現れたのは向かい合う形で置かれた白い椅子二つと白いテーブル。テーブルの上にはメモ帳が置いてある。
一方の椅子にはすでにウィルさんが座っている。
これは反対側に座ったらいいのかな?
「……人の優しさを受け入れることが出来ますか?」
反対側の椅子に座ったとたんに淡々とした口調で質問が繰り出される。
ペース早や……にしても人の優しさを受け入れる……
うーん……私はひねくれてるからなぁ……ツンデレ気質になるんだよな……優しくされると……
「それでも――受け入れられるよ」
人にもらった優しさはキッチリもらってキッチリ返す。
これが私の信条!
「人のことを信用できますか?」
「状況によるねー」
当たり前。裏切られた人のことなんか信用できるわけないじゃない。
そう、私は思う。
そんな感じで似たような質問がいくつか繰り返された。
その質問に私はありのままの回答をしていく。
これが私。偽っても仕方ないから。
「質問を終了します――結果を精査――完了」
数秒間の静寂の後に白い空間が崩れていき元の庭園に戻っていく。
「うんうん! 君の質問の答えから私は君についていくことにしたよ♪ 君となら面白そうなことが出来る! そう確信したよ! ほら、契約の握手!」
差し出された手を握り返す。
私とウィルは光に包まれ、気づけば扉の前の空間に戻っていた。
次は銀の方の扉に行けと……
「……すごいわね貴方――じゃなかったアズフェール様!」
先ほどとは違うのはウィルさんがいるくらいだろうか。
「ところですごいって何が?」
「あ、それはね、それはね! 今だと人によって使える魔法量が決まってるじゃん? それと同じように契約する精霊には限りがあるの! その限りは越えられないから、そこが上限量なんだけどね! 基本的には大精霊一人分ぐらいが常人の精霊契約量なの! だから、私と契約してもまだ大精霊と契約できる人は珍しいわけ! 分かった?」
「へー……でも精霊ってあんまり有名じゃないのは何で?」
「それは…………そんなことより早くシェイのところに行ってあげたら? あの子多分退屈してるわよ?」
あれ、なんか露骨に話題そらされた気がする……まぁいいや。
それより銀の扉の方にも行ってみよう。
そこにいるのは――シェイって呼ばれてたな……ウィルに……あだ名なのかな……? それとも名前?
ドアを開ける。
出迎えるのは金の扉の中の白い空間と正反対の黒い空間。
黒い空間は金の扉の中の空間と似たような庭園だった。
しかし違うところがあるとすればもうすでにテーブルと椅子が用意されているというところだろうか。
「……ようこそ……ボク――闇の大精霊シェイドの空間に……その様子だともう光の方とは契約したんですね……じゃあ闇の試練、始めますか?」
この試練が始まる前とは違う陰気そうな雰囲気をまとったゴスロリ少女――シェイ……じゃなくてシェイドなのね……
名前もわかったことだし、試練を始めよう!
「うん、お願い」
「りょうかーい……――闇の試練」
空間は作り替えられず周りだけが黒に染まっていく。
「この試練も、光の試練とおんなじ。質問に答えるだけ。それだけでいいよ」
フワフワとした声と顔がだんだんと底冷えするような声と無表情にに変わっていく。
というかまた質問? 今回もまた不思議になるようなこと聞かれるのかな?
「――人を許せないと思ったことはありますか?」
おぉう……まさかのネガティブ質問……
人を許せない……今日あったね。
人じゃなくて帝国? んーどっちでも根本的には人だからセーフ。
「あるよ」
「……人に嫉妬したことは?」
え? 何この質問……魔力のない人への当てつけ? 嫉妬? したことないね! 強がりじゃなくてホントに。
自分はしょせん自分でしかないしね。
「ないね、嫉妬して何になるの?」
「……質問を続行」
そんなこんなでこちらも白の空間と同じく似たようなネガティブな質問に回答していく。
「――全質問、回答完了――結果収集—―完了」
お、終わった終わった。
はてさて結果は?
「――自分の主にふさわしいと判断……よろしく?」
「うん。よろしくね」
契約の握手を交わすと、ウィルの時と同じように黒に飲み込まれて――……ってあれ? なんで私だけ?
ウィルの時はどっちも光に飲み込まれてたのに!
しかし体の半分がすでに飲み込まれてしまっているため抵抗はできないだろう。
こうなったらしょうがない。
流れに身を任せよう。
そう私が判断するのと、黒に飲み込まれるのは同時だった――
「面白かった!」
「今後どうなるの……!」
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