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01 忌み子

30分に一回ぐらいの頻度で連続投稿します!

この世界では魔力と使える魔法の種類で人生が決まる。

生まれた時に本人の魔力量と生涯で使える魔法の種類が決まり、その魔力量に合わせた教育が施されるのがこの世界における掟である。

しかし、たまに生まれてくる魔力なし、魔法の覚えられないような『忌み子』が生まれてくる時がある。

そういったものは捨てられ不要児とされ専用の孤児院で「無」に等しい人生を送ることになる。


――この日はこの国、ディア・ライデッド帝国で現在皇帝、アールズ・ライデッド皇帝の初の子供の生まれる日だった。


                 ◇ ◇ ◇


「―――――!」


無事に赤子は生まれた。

しかし、この後が問題だった。


「ではでは、さっそく魔力量、使用魔法種類を確認していきましょうか」


怪しげな老人――役職『魔力量、使用魔法種類測定師』が生まれた赤子に不思議な模様をした紙を額に張り付ける。

紙が光り輝き――


「……っ! これは……」


今もなお光り輝いている紙に触れた測定師が驚きと信じられないような響きを含んだ声を上げる。


「どうかしたのか!?」


その様子に気づき皇帝は測定師に詰め寄る。


「――おかしい……これはあってはならぬことだ……! 『忌み子』です! この赤子は!」


「は――――?」


その場は静寂に包まれ、次の一言で状況が動き始める。


「測定しても、魔力がない、使用する魔法も見えない! これはまごうごとなき『忌み子』ですぞ! 皇帝様! 今すぐこの子供を捨ててしまいましょう!」


「なぜ? 何故だ! 何故英雄となる器のものが生まれぬ!?」


その場は阿鼻叫喚となり、赤子は満場一致で捨てられることになった。

しかし、皇帝が子供を捨てたなどという噂が流れたら困るため、その計画は秘密裏に進められた。

そして、普通の『忌み子』とは違う、普通民の住む地域に赤子は捨てられた、ひどい雨の中―――


                 ◇ ◇ ◇


それはひどい雨の降り注ぐ日のことだった。

ぽつりと置かれているバスケットに目を奪われてしまった。

そのバスケットの近くにより、中を覗き込むと中にいたのは――


「え?……赤ちゃん?……なぜ……?」


自分の存在に気づいたのか泣きじゃくり始める赤子は魔力を全く感じられない。

そこで自分は気づいてしまった。

この子は『忌み子』だと。

普通、『忌み子』は匿ったりしてはいけないのだが、その時の自分はどうやら気が触れていたらしい。

赤子が放つ謎の気配に引き付けられた。

そして赤子をバスケットごと拾い、自分の家に丁重に持ち運ぶ――


――この赤子が、自分の運命を変えたものだと知らずに――


                ◇ ◇ ◇


そうして16年の年月が経ち――


「ふわ……よく寝た……」


まだ、まどろむ意識の中、目を覚ます私――アズフェール・ルベスタ。

わずかに開いたドアの隙間からはいいにおいが漂っている。

その匂いでぼんやりとしていた意識がはっきりとしてきた。


「……着替えどこだっけ?」


私は掃除が苦手で、部屋がいつも散らかっていてどこに何を置いたかが分からなくなっている始末だ。

あれ? ここに置いたはず――あ、あった。

ベットの隙間に挟まっていた服を引っ張り出し着替える。


「アズフェール? 起きてる?」


「うん、起きてるよー」


「ご飯できたから早く来なさいよー?」


「はーい、着替えたら行くー」


声をかけてくれたのは捨てられていた私を拾ってくれた義母――アフェ・ルベスタだ。

いつも優しくしてくれるいいお義母(かあ)さんだ。

しかし、私は、魔力なし。この帝国でも、他の国でも、忌み嫌われている存在。

そのことに気づかれたらお義母さんの命が危ない――いつもそう思うのだ。

なのになぜ?……私には分からない。


まぁいいや。美味しいご飯を食べて気分転換しよ……


ドガッ! その時だった。ドアの向こう側から、異音が聞こえた。

何が起きたのかわからず混乱する。

恐怖心が私を襲ってくる。体が震える。何をしたのか――?


「我は帝国騎士第10軍団長である! 今回はこの家に魔力なしの反応があったためやってきたが、魔力はあるな……では気のせい……いや、いるであるな……あのドアの向こうにいる」


「――――っ」


思わず声が出てしまうところだった。

その指は私のいるドアにしっかりとむけられていたのだから――


「なぜ急に我が家に?」


「何? 知らないのであるか? この帝国では今、匿われている、もしくは隠れている不穏分子――魔力なし狩りをしているであるのだぞ?」


――魔力なし狩り……それで魔力のない私を……


狩る……ってことは殺されちゃうのかな……?


「――衛兵、行くがよいぞ!」


部屋のドアが開かれ、明るい日差しが部屋に差し込んでくる。

目の前には大柄の男二人と、不思議な髭の形をしたピエロのような男が立っている。


「……ふむ、やはり貴様が魔力なし――『忌み子』であるな。つまりこの女性も――……衛兵、そちらの女性を――」


衛兵と呼ばれた人は持っていた槍でお義母さんのお腹を刺す。

お義母さんはどさっ、と軽い音で床に倒れこむ。

え……? お義母さん……血が……なん……で? 私が魔力なし――『忌み子』だから……?


「次にその嬢ちゃんを捕縛しあの遺跡に置いていけ」


「はっ」


私の処罰に関してはもう何も言わない。

それが当たり前だったから……でも、お義母さんが……

ぐるぐると思考が回る。


いつの間にか目の前には衛兵の男がいた。

首元に軽い衝撃。


私は、お義母さんを殺した帝国を許さない、理不尽なこの国を――


私の意識はそこでぷっつりと切れてしまった――











『忌み子』はかなり恨まれているため、『忌み子』を匿った人は殺されて当たり前という文化が定着している。

物騒だね……

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