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アルバード様は本当に私の願いを叶えてしまう方だった。
「まさか、もう苗が……種も……」
お願いして数日しか経っていないのにもうかなりの数の薬草が手元に届いた。
「貴女のためならいくらでも……と言いたいのですが、実は一部はカティアさんに届けてほしいと頼まれたんです」
アルバード様が苦笑して教えてくれる。
「トム・ハンクスという方をご存じですか?」
「ええ。トムおじいちゃん。教会の中庭で薬草を育ててくれる庭師の方です」
薬草の育て方とその楽しみを教えてくれた方で、薬草を育てるのが趣味になったのはトムおじいちゃんのおかげであった。
「そのトムさんが貴女が実家に帰ったのを聞いて株分けしようと用意していた薬草なんですよ。ですが、実家に訪ねたらそんな娘は居ないと追い返されたと……」
「そんなっ!!」
聖女になってから実家という感覚は無くなって、実家は教会という気分になっているのだが、トムおじいちゃんが訪ねて来たのにも驚いたし、株分けしに来てくれたのも嬉しかった。
「その際薬草の苗を庇って、尻もちをついたのをイワンというレイヴン家の庭師が気づいて……」
「腰って、大丈夫なのっ!!」
ああ、治癒できれば、王都ではないし、治癒魔法の力が弱まっているから無理なのは分かっているが歯がゆい。
「ええ。騒ぎに気づいた俺の部下が治療院まで運んだそうで」
そこで手当てを受けるそうですと言われて胸を撫で下ろす。よかった。治療院なら治癒魔法を使える聖女候補の子供が多くいるからそこで手当てしてもらえるし、薬も多くある。
とそこまで考えて、首を傾げる。
「何でアルバード様の部下の方が王都に?」
何かありましたか?
辺境伯であるアルバード様の部下が王都にいるというのに違和感を感じてしまい尋ねると。
「王都でカティアさんとの結婚式の準備のために揃えて欲しいものを買いに行かせていたんですよ」
辺境では手に入らない物も多いですからねと言われて、
「結婚……」
ぼんやりと呟いて、顔を赤らめる。
「そっ、そうですね……けっ、結婚……」
結婚をするのは決まっていたけど、結婚式をすると言われてじわじわと実感してきた。
顔が熱い。
火照った顔を抑えようとするがますます赤くなる。
「本当は好きになってもらってからと思ったんですけど」
待てなくてすみませんと告げるアルバード様に、気にしないでくださいと小さな声で告げる。
「で、話を聞いたらカティアさんに渡してほしいと預けられたんです。本当は俺が用意したかったんですが……」
でも、俺が用意するよりも知り合いから譲られた方が喜びそうですねと言われて、図星かもと思った。
「アルバード様」
顔がほてったままなかなか元に戻らない。でも、きちんと言わないとなとアルバード様を見て口を開く。
「その助けてくださった部下の方に私がお礼を言っていたとお伝えください。本当は直接伝えたいのですが、きっと会うのも大変だと思うので」
とお願いすると。
「分かっています。もうすでに俺の方からも伝えてありますので」
それは確かにそうかもしれないが、それでも伝えてほしいと告げると微笑んで頷いてくれる。
「カティアさん」
「はい?」
にっこり
微笑まれて、手を繋がれる。
「今手が空いてますか?」
「えっ? ええ……?」
結婚式までの準備期間ですし、今は環境に慣れるためにと手が空いている状況だ。ずっと治癒をしてきたし、薬草の世話をしてきたので何をすればいいのか分からないので困っていたところだ。
「ならば、薬草を植える場所を決めましょう」
「えっ?」
どういう意味か分からずに首を傾げると。
「本当はこちらが用意したかったのですが、カティアさんが自分で選んで決めたいのかもしれないと思って用意していなかったんです」
アルバード様は立ち上がり手を差し出してくる。
「一緒に行きませんか?」
と問われて、そんな丁寧な事をされたことなかったので緊張してしまう。
「わ…分かりました……」
とそっとアルバード様の手に自分のそれを重ねるとアルバードさんは嬉しそうに顔を赤らめて微笑む。
(あらっ?)
そこで気が付く違和感。
先ほどもアルバード様と手を繋いでいたが、アルバード様は顔色一つ変えなかった。でも、今は赤くなっている。
先ほどは私だけが顔を赤くしていた。アルバード様は顔が赤いのがデフォルトになっているから顔が赤くないのに慣れていない。
それに何となく悔しい。
そんな事を思いながら歩いているとドクンドクンとやかましい心臓の音が聞こえてくる。
自分の心臓かと思ったら少し違う気がする。
「アルバード様?」
「な、んでしょう」
どこかどもっているさまを聞いて、くすくすと笑ってしまう。
「カティアさん?」
「何でもありません」
緊張しているのが私だけかと思っていたから悔しかったけど、アルバード様はいまだに私を相手にするとこんな風に緊張しているのかと思ったら安堵した。
まだ好きとか愛しているという気持ちは分からないし、この方といると緊張して恥ずかしくて、モダモダしてしまうけど、一緒にいたいと思えるのだ。
こうやって、愛情を育てていけたらいいなと思ったのだった。




