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聖女じゃなくても愛されて幸せになりました  作者: 高月水都


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【外伝】星空の真ん中で

いちゃいちゃ

「昔と変わっていないですね!!」

 カティアが枝を掻き分けながら進んでいく。


「ああ。でも、以前は木の枝にぶつかりませんでしたね。私の背が小さかったから」

 ふふっ

 思い出したように笑うと。


「ねえ、アルバード様」

 隣のアルバードを見る。すると、

「大丈夫ですかっ⁉ 寒くないですか⁉ ああ。足元に気を付けて」

 と心配そうにこちらを見てくるアルバードの姿があった。


 ……妊娠が分かり、安定期だからとアルバードを説得させて……いくら甘くて愛が強すぎて、どんな願いを叶えてくれる夫であっても妊娠中に無理をしないでほしいからと頑なに断り続けていたが、一生懸命お願いして、何とか連れてきてもらったのだ。


「ああ。やっぱり……」

「アルバード様っ!!」

 じろっと睨むと。


「ごめんなさい」

 とアルバードが謝るが、すぐに目を細めて微笑む。


「アルバード様?」

 何で笑うんですかと首を傾げると。


「いえ、やっと怒るようになってくれたと思って」

 ほっとしたんですよ。

 そう告げられて、そっと手を繋がれる。


「最初からこうすればよかったですね。すみません」

 今までつないでいなかったのですみませんと言われてその手の感触と温かさで顔が赤くなる。


 しばらく二人手を繋ぎ歩いていくと、

「着きましたね」

 と急に枝がなくなり、開けた場所に辿り着く。


 そこは大きな湖が広がっていて、空を鏡の様に映し出している。


「あの時は星空でしたね……」

 カティアはそっと地面にしゃがもうとするとアルバードがどこからともなく椅子と毛布を取り出してカティアを椅子に座らせて、毛布を腰に掛けてくれる。


「ありがとうございます」

 お礼を述べると、

「当然の事をしただけです」

 と微笑まれる。


「綺麗ですね……」

 空の青と雲がしっかり映し出されて、このままぼんやり見ているとどちらが空なのか分からなくなりそうだ。


「昔ここに連れてきてもらった時。実際に空の真ん中に来た気がしたな……」

 





 テントの中で、何度も何度も寝返りを打つ。

「うぅ……」

 目を閉じると脳裏に浮かぶのは血まみれの人々。


 血に染まった手を伸ばして、

『タスケテ』

 と声を上げている。


 その手がどんどん増えて、治癒しても治癒しても間に合わない。


『ナンデタスケテクレナインダ!!』

『オレタチヲミステルノカ』

 叫ばれて、憎まれて、腕を掴まれる。その掴んだ腕が怖くて怖くて必死に振りほどこうとする。


「やめて!!」

 自分の叫び声に目を覚ます。


 がたがたがたっ

 身体が震える。


 はぁはぁはぁ

 息が乱れる。

 汗が服にこびりついている。


 休まないといけないのに休めない。

 また、この夢を見る。


「しっかりしないと……」

 私は聖女候補なのだから。


 私がしっかりしないと……。

(怪我人が治せない……)

 小刻みに震える身体を抱きしめて、大丈夫だと必死に言い聞かせる。


「…………」

 ちょっとだけ。

 怪我人の様子を見に行こう。


 見たらきっと……。


 そっとテントを抜け出して外に出る。怪我人のいる場所に行こうと思って足を向けると。


「――どこに行くんですか?」

 呼び止められる。


「あっ……」

 最初に治療した兵士さんだ。


「魔力を回復させるのに休まないといけないでしょう。この時間は別の治癒術師が診てますよ」

 だから戻ってくださいと包帯を巻いた姿で告げられる。


 治癒はした。でも、完全回復をしたわけでなく自然治癒が可能な段階まで治癒して、死人を減らすように治癒してほしいと言われたのだが、完全に治っていないさまを見て心が痛む。


「でも……」

 私は聖女候補だ。本物の聖女が居れば……。


「聖女様」

「私は……聖女じゃ……」

 役に立たない候補にすぎない。


「……少し散歩しませんか」

 お手をどうぞと言われて差し出される。それに誘われるようにそっと手を置く。


「ここです」

 戦場から少し離れた場所まで案内された。

 離れて大丈夫なのかと心配になったが、微笑んで誤魔化された。


 いったいどこに連れてこられたのだろうかと案内された場所を見て。

「わぁぁぁぁぁぁ!!」

 歓声を上げてしまった。


 頭上に輝く星空。そして、足元にも同じように星空がある。


「大きな湖で水が澄んで鏡の様になっているんです」

 落ちないように気を付けてくださいとそっと肩に手を置かれて、そのぬくもりに安心した。


「綺麗……」

 上も下も星空。

 星空に包まれて、宇宙に取り残されたような錯覚を感じる。


(でも、大丈夫)

 そっと後ろを振り向く。


「どうかしましたか?」

 微笑んで支えてくれる人がいる。


「………空からすれば私も聖女様も小さなものですね。星だってたくさんあって輝いているんですから。一人で頑張ろうとしないでください」

 貴方は頑張りすぎですと告げられて、不思議な気持ちになる。


「そっか……」

 星だってたくさんある。たくさんの星でこの綺麗な星空を作っている。


「そうですね……」

 肩の力を抜いていいと言われそっと張り詰めたものが消えていく。


 そして、いつの間にか眠っていたのだろう。朝テントに戻っていて、夢だったのかと思えるほどだった。


 服に葉っぱがあったから夢じゃなかったんだとホッとしたものだ。





「あの時兵士さん……アルバード様に言われなかったらきっと聖女候補で治癒能力以外できる事がないかと探さなかったです」

 あの後薬草を栽培するために庭師に教えてもらう事なかった。


 あの体験を糧にして頑張って、頑張りすぎないで助けをもらおうと思えるようになった。


「それ結局頑張ってますよ」

 苦笑されて言われてみたらと恥ずかしくなる。でも、

「それがあったからアルバード様に会えたんですよ」

 頑張って努力してきたから手に入った。


「そう言えば、アルバード様は星空も青空も持っていますね」

「? 星空も青空も?」

 どういう事だと首を傾げられて、

「ほら、黒い髪(星空)青い目(青空)

 と湖に近付いて見せるとアルバードはそっと自分の髪の毛と目に触れて、

「じゃあ、カティアさんは大地ですね」

 と稲穂のような金茶の髪と葉っぱのような緑の目を青空のような目に映しながらどこか揶揄うように告げたのだった。

今更ながら

カティア 金茶の髪を肩まで伸ばしています。(動くの邪魔な時は一つで縛っている)

     目は緑色。(当初は茶色にしようか迷ったが、大地のイメージで)


アルバード 黒髪(実はわずかに銀色が混ざっているから正式には黒銀。鉛筆のイメージで)

      目は青色。(青空と同じ)


黒髪青目というのは私の好きな組み合わせでよく使います。

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