15
その日は快晴だった。
結婚式のためのドレスはとても品がよく、見事にサイズがぴったりだった。
「まるで、私たちの結婚を祝っているようですね。カティアさん……」
ノックと共に入ってきて告げてくるアルバード様はこちらと目が合うと顔を赤らめて微笑んでいる。
「ああ。とっても綺麗だ……やっぱり似合う……」
幸せそうに言葉を紡ぐ眼差しがとてもまっすぐでお世辞ではなく本気で言われているんだなと十分伝わってくる。
「カティアさんに似合うと思って素材から集めた甲斐がありました!!」
素材を集めた?
どういう意味だろうと首を傾げていると花嫁衣装を着せてくれた侍女さんたちがひそひそと話をしているのが見える。言っている内容は聞き取れないが、耳飾りとかネックレスとかドレスに縫い付けられている飾りとかいろいろ言っているようだ。
「こんなカティアさんの傍にいていい権利を得られて幸せです」
嬉しそうに微笑まれて、
「でも、カティアさんの気持ちを無視してこんな形にして手に入れようとするなんて申し訳ありません」
と頭を下げられて、もしかしてこの結婚をよく思っていないのかと勘違いされているのではという事実に気が付いた。
そういえば、私はたくさん想いを告げられていたが逆に告げてはいなかったと気づいて、さぁぁぁぁと青ざめる。
「カティアさんっ⁉」
心配してくる声。
「顔色が悪いです。もしかして病気っ⁉ それとも………まっ、マリッジブルーという………」
さぁぁぁぁ
アルバード様の表情が蒼白になる。
「どうすればいい? カティアさんにこの結婚が間違いだと言われたら…ああ、そうだ、死のう。死ねばカティアさんに迷惑を掛けない……」
ぶつぶつと物騒な事を言い出したのでそばで控えていた侍女も護衛の方も慌てふためいている。だが、一番慌ててしまったのは当然私だ。
慌てた結果。
どすん
勢いよく抱き付く格好になって恥ずかしいがここで怖気づいては駄目だ。頑張って言うんだ。
「わ…私も………」
声が震える。ああ、思いをきちんと伝えるというのはこんなに怖い事だったんだ。
「私も、きちんと……あっ、アルバード様の事が……好きですっ!!」
最後は叫ぶような声になってしまった。
「あっ………」
アルバード様は何も言わなかった。
もしかして呆れられた。引かれた?
どうしようと不安になって恐る恐る上を見上げてアルバード様と顔を見合わせる。
アルバード様の表情は困惑気味だった。嬉しくて嬉しくて恥ずかしそうに。
「見……見ないでください……」
こんな情けない顔を。
弱弱しい声で言われて、ああ、不安だったのはアルバード様も同じだったのかと思うとなんというかしてやったりという気持ちになってくる。
初めて想いをぶつけられるばかりであったのが反撃できたような達成感。
「あ~~~もう~~~~~!!!」
「きゃっ⁉」
いきなり抱き上げられた。
「どれだけ惚れさせればいいんですかっ!!」
くしゃくしゃと崩れた顔。それがとても可愛くて新しい魅力が溢れている。
「さっさと式を終わらせて独り占めしたい……」
「馬鹿孫っ!! 嫁さんを実質自分だけのものにできると宣言の場所を潰してどうする!!」
ばちこんっ
いつの間にか現れた前当主に頭を叩かれてアルバード様は冷静に戻る。
「ああ。そうだな。取られないように牽制しないと」
「ああ。こんな素敵な花嫁だからな。ヘルマンから奪うという恐ろしさを身を以て知らしめないとな」
ふふふっ
ヘルマンの二人が意味が分からない話をしているのをどうすればいいのかと侍女さんたちに視線を向けるが誰も口を出さずに、唯一目が合った侍女長さんが口パクで諦めてくださいと告げてくるのが見えた。
「ジジイ。見せびらかすのならずっと抱っこして連れて行けばいいのでは」
「そうだな。お姫様だっこか肩に乗せるかは嫁さんの希望を聞いて行えよ。ちなみに儂は肩乗せじゃった」
左肩に乗せて見せびらかした物じゃ。と話をしているのでもう一度侍女さんたちを見ると目を逸らされる。
だからこそ、自分で事態を打破しないといけないのだと思って口を開こうとすると。
「カティアさんはどちらがいいですかっ?」
目をキラキラと輝かせてそれ以外の選択肢を残さない問い掛けにどちらも嫌だというのに勇気がいる。
でも、しっかり伝えないといけないと思って頑張って口を開いて……。
「ば…バージンロードは手を繋いで歩きたいです………」
とそれ以外は抱っこで大丈夫と言っているような発言をしたのに気づいたのは告げた後。
アルバード様の笑顔がまぶしすぎて否定も出来ずにそれ以外は抱っこが決定した瞬間だった。
披露宴も誓いのキスもずっと抱っこ状態。




