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早く結婚させたい

 ワイバーン騒動はあったが結婚式は予定通り行われる。


「もうじきお嬢様が奥様になられるんですね」

 にこにこと結婚式の準備をしている侍女のメイサさんが告げる。


「旦那様がよく我慢できましたね」

 同じく用意をしていたニーナさんも相槌を打ち。


「ですよね。なんてったって」

 ハンナさんが髪形を整えながら。


「「「ヘルマン家は愛が重い」」」

 と全員一致で答える。


「これで結婚を取りやめになったら元凶を叩きのめすでしょうね」

「ありえますね」 

 と笑いながら話をしていると、

「貴方方手が止まってますわよ」 

 侍女長が空咳をして注意する。


 話をするのは構わないが、手が止まるのは注意するというスタンスで、普通は無駄口を言わないと注意するものではないかと気になったのだが、侍女長曰く。


「カティアお嬢様は黙って作業されるよりもいろんな話を聞いている方がリラックスできるようにお見受けしました」

 と言われてその気遣いに嬉しくなった。


「でも、お嬢様。難しいと思いますが、お身内の方が一人も見えないのは寂しいですね」

「馬鹿っ! ダリア!!」

 辺境まで来るのは大変だと思うが家族に祝われたいだろうと侍女の一人であるダリアさんが告げるのをメイサさんが注意する。


「…………あっ、すみません」

 頭を下げてくるダリアさんに気にしないでと笑い掛け、

「いいのよ。――嫁ぎ先を見つけてやっただけありがたく思えと絶縁状と一緒に手紙が来たわ」

 それ以来連絡はない。手紙も出すのに代金が掛かるのでもう音信不通になるだろう。


 まあ、王城に行く事はあるだろうからその際に逢えたらいい方だろう。


「聖女候補として神殿で暮らしていたからもともと連絡を取り合っていなかったからいいのよ」

 寂しかったのは最初だけ。いつしか忙しくて気にならなくなった。


「私は薄情者なんでしょうね………」

 だからこそ聖女になれなかったんだろう………。


 ちくんと胸が痛む。だけど。


 きっとレイチェルなら私よりも立派な聖女になるだろう。それなら自分が聖女にならなくても構わない。

 きっと私よりも……。


「私はやはり聖女に相応しくなかったのね……」

 家族の情が薄くて、それなのに愛されたいという望みのために聖女になりたかったのだから。


「お嬢様はそうおっしゃいますが」

 ニーナさんが口を開く。


「お嬢様が以前治癒をし続けてくれたことを覚えています。私の父はお嬢様のおかげで助かりました」

 今更ですがありがとうございますと頭を下げられる。


「でも、お嬢様が聖女になっていたら王族と結婚が決まっていたんですよね。もしそうだったら旦那様がヘルマン家の愛の深さで早死にになっていたので、私は正直聖女じゃなくてよかったと思っているんですよね」

 ダリアが告げる声に。


「そんな事は………」

「「「「ありますね」」」」

 今度は侍女長も同意していた。


 どんだけ愛が深い一族なんだろうと思いつつもその愛の深さが心地よい。


「幸せですね………」

 ここまで愛されるなんて。

 そう告げると。


「お嬢様はヘルマン家に嫁がれる人ですね。やはり」

 侍女長が告げる。


「重すぎる愛を受け入れるだけの器の持ち主です」

 と太鼓判を押された。






「ところでうちの旦那様。愛が重いヘルマン家の割に愛が重くないよね」

 ひそひそと新しく奥様になるカティアに聞こえないようにダリアが先輩侍女たちに話しかける。

「それはヘルマン家特有の相手の重荷にならない愛し方をするからよ」

「服とか宝飾品を欲する奥方だったら分かりやすいけど、そうじゃないのなら分からないわよ」

 ニーナとハンナが答える。


「服に好みがあったのなら有名デザイナーに最新のドレスを仕立てさせるし、食事が好きなら有名シェフを呼び寄せるわね」

「見た目は分かっていないようだから教えておくけど、あのドレス魔蛾の作った最高級の絹だから」

 ちなみに魔蛾の繭で作られた防具は冒険者や騎士のあこがれである。


「えっと……」

 今とんでもない事を聞いたとダリアが呟くと。


「奥様がなにも欲していないから分からないだけよ」

 とメイサの言葉にほかの侍女たちは頷いたのだった。


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