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第9話 空母リチャード・ローズ

 話はブラックイーグル作戦の二日前にさかのぼる。


 中東に展開するアメリカ中央統合軍の司令塔、空母リチャード・ローズは護衛船団を従えてインド洋をアラビア海へ向けて航行していた。

 垂直離陸機が全盛となった現代、艦載機を加速するカタパルトも滑走路ももはや必要ない。全長百五十メートル、流線形の船体に変わった空母の航行速度は飛躍的に上がった。

 搭載機も有人機だけで、かつての三百メートル級空母並みの百機を数える。さらに無人攻撃機、無人電子戦機、対潜水艦用水中ドローン、耐魚雷装甲、レーザー砲、高感度通信妨害探知システムなど最先端の兵器機器を備えている。


 今回の航海には米中央統合軍の他にも欧州連合軍が参加、インド洋で各国の空母から二人乗り戦闘機が次々に飛来した。妨害電磁波圏内へのオペレーションでも、二人乗り戦闘機が参加するのは滅多にない。

 その数時間前には、小型ステルスジェット三機が相次いで空母ローズに着艦、国防省と中央情報局の高官が次々に降り立ち、あわただしく艦内の中央軍現地指令部の司令室へ消えた。

 中央軍のクルーたちはただならぬ気配を察知して、艦内は緊迫した空気に包まれていた。



 事の発端は、さらに一週間以上前にさかのぼる。

 

 中東のとある王国で、アメリカ人貿易商がスパイ容疑で突然拘束されたのである。

 王国政府の狙いは、数か月前に米軍捕虜となった王家出身の軍人の奪還で、両国間の捕虜交換交渉は水面下でスムーズに進んでいた。

 メディアに嗅ぎつけられることもなく、アメリカ政府の関係者たちは事態を楽観視していた。

 厳しい尋問は避けられないが、特定の質問に対する記憶は自動的に遮断されるよう、貿易商はあらかじめ心理操作を受けていた。

 たとえ薬物を投与されても、このCIAのベテラン諜報員から、重要機密事項の数々が漏れる恐れはなかったのである。


 ところが、事態は思わぬ方向へ転がった。


 画期的な装置が貿易商の尋問に使われるという情報が、地元の情報提供者からCIAを通じてアメリカ政府に伝わったのである。強制的に記憶を暴き出す記憶探査装置が完成して、数日中に地下通路を通じて首都へ運ばれるという。

 情報を入手したCIAは、記憶探査装置が(くだん)の地下要塞のラボで開発され、最終テストを行っていると突きとめた。


 世界でも数少ない高出力レーザー砲と地上にひしめ高射砲群に加え、強力な通信妨害電波装置で守られてきた難攻不落の要塞に電撃攻撃をかけるべきか否か?


 タイムリミットが刻々と迫る中、米政府・軍・諜報部の上層部は、困難な決断を迫られていた。


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