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第4話 守護者封印解放

 



 またしても変な声が出てしまった。


 もうわけが分からない。

 ドラゴン以外の生き物がたくさんいること、人間もたくさんいることを知って凄く喜びたいが、そんな余裕が一瞬で失われた。


 なんで俺が王なんだ。

 百年もここにいるから頭おかしくなったのか?


「あの……」


「そなたよ、貴様が次なる王ぞ。」


 そのフレーズ二回目だけど。

 そのフレーズ二回目だけど。

 俺が王とかもう笑い話だ。

 俺は心を落ち着かせ答えた。


「なぜ俺が王になる資格があるのですか?」


「そなたのオーラだ。そのオーラはそこの彼女と同じぐらい大きい。また、この結界内にいることが一番の理由だ。結界に弾かれないのだから、そなたは善なる者なのだろう。

 この道を正せる存在だ。あとは我の直感だ。」


「俺には分かりません。自分にそんな資格があるとは思えない。」


「そなたが王となる運命は変わらない。この結界も、数年で消えてしまうだろう。

 強き者が弱き者を守るのは、世の道理。そなたは、強者にも関わらず弱者を見捨てるのかね?」



「俺もそれは正しいと思う。俺は人間と魔人どちらも笑える世界を創るという考えは、大賛成です。しかし俺は強者という訳ではないし、まして王には……」


「そなたは、強者ぞ。王になれる。

 そなたは王になる器を持っている。皆にない力を。

 そなたが最後の希望なのだよ。」


「あなたが王ではダメなのですか?」


「我はこの地から離れることが許されていないのだ。簡単に言えば呪いのようなものだ。

 だが一番の理由は、我の使命が魔人の王を支えることだからだ。そなたしかおらぬのだ。」


「でも俺は……」


「そうか。そなたが王にならぬのなら魔人の王との契約にのっとって、この世界を消そう。」


「いやいや待てよ! いや、待ってください! どういう事ですか?」


「このままでは魔人達や他の種族も駆逐され、人間だけの世界となるだろう。

 たとえ人間達だけの世界になったとしても、次は人間達同士の戦争がおこるであろう。

 そんな終わらない戦争をする未来など、無い方が良かろう。」


 俺は知っている。人間同士の戦争が起きることを。

 俺は知っている。戦争で沢山の人々が死ぬことを。

 俺は知っている。大切な人を失った悲しみを。

 自分の力で助かる命があるのなら、助けたい。

 自分が正しい道を導けるのなら、導きたい。


 俺は決めた。


「……分かった。王になるよ俺。」


「フッ。そうか。ありがとうよ。最後の希望の王よ。」



 俺は結局、魔人の王になってしまった。

 勇者も魔人の王になったのだから、俺みたいな金属生命体が魔王になってもよいのだろう。

 知らないけど。

 まだ自分が金属で出来た体である事は、ふせておこうと思う。


 そんな心配はいいが、本当の本当に俺なんかでいいのだろうか。

 この目の前にいるドラゴンが正しいのか、自分の目で確かめた訳では無い。


 もし仮に、このドラゴンが悪い奴だったとしても、攻撃したところで今の自分では傷をつけれるかも怪しい。

 というかこんな化け物とは戦いたくない。

 人間の国にもこんなやついるのだろうか。

 考えるのも恐ろしい。今更だが後悔してきた。


 そんなことを考えていると、オーラというものがなんなのか気になった。


「イリス。オーラってなんだ?」


 《フィーラ・アレストリアとマスターを比較するに感知できる魔素量が酷似しています。》


「魔素量?それはエネルギー保有量みたいなことか?」


 《そう考えて大差はないでしょう。》


「目の前のドラゴンは?どう?」


 《魔素量を感知することができません。》


「隠蔽ってやつか。くそっ。

 俺も最初から気がついて隠蔽していれば……」


 《魔素量の隠蔽を試みます。》


 《隠蔽に成功。

 能力『魔力遮断』を獲得しました。》


 また能力獲得したのか。

 このイリスはなんでも屋らしい。

 もう何も言わないでおこう。

 いや、一応ありがとうは言っておこう。


「ありがとう。」


 《すみません。よく分かりません。》




「さっきから何ぶつぶつ言っておるのだ。」


 ドラゴンが話しかけてきた。

 確かに周りから見たら俺は不審者か。


「いや、なんでもないです。俺はあなたを何と呼べば良いですか?」


「もう畏まらなくて良い。我とそなたは対等な立場となった。そなたはこれから王として振る舞うのだ。

 だから我のことはインフェルノと呼ぶが良い。」


 インフェルノか。

 俺が転生前の幼い頃、フェルノという名前の鳥を飼っていたから、いざインフェルノと目の前のドラゴンを呼ぶとなったらなんだか可愛く思えた。


 そう思ってインフェルノの顔を見た。

 可愛く思えた感情は消え去った。


「分かった。インフェルノ。これからよろしくだ。」


「あぁ。よろしくだ。

 そう言えばそなたの名をまだ聞いていなかった。」


 俺の名前か。

 俺の名前は如月育真でいいのだろうか。

 しかし、この世界にこの名前は明らかに違和感がある。

 いや、こんな日本人みたいな名前の人もいるのかも知れない。

 俺は決めた。


「俺は如月育真だ。」


 親から貰った名を捨てることは俺には出来なかった。

 本来は信用してない相手に、転生前の名前など打ち明けるものではないと思っているが、こればかりは自分が許せなかった。


「ほう。珍しい名であるな。

 確か、そんな珍しい名を持つ国が……。」


「なんか言ったか?」


「いや、なんでもない。」


 何か、ごにょごにょと言っているように思えたがまぁいい。


「そうか。お願いがあるのだが、俺に新しい名をくれないか。」


 やはりこのままこの名前だと、他の者から不思議なものと思われそうなので、名前を貰っておくのが得策だと考えた。


「おぉ。なんと。事情は知らぬが聞かないでおこう。名を与える事など造作もない。ただ、それは今の自分の名を捨てるのであるか?」


「いや、捨てる訳では無い。」


「そうか。まぁ良い。そなたに名をやろう。そうだな。アレン・アンバーという名はどうであろう?」


「アレン・アンバーか。うん。いい名前だ。」


 アレン・アンバー。

 これがこの世界で名乗って行く名前か。


「そうであろう。そうであろう。はっはっはっはっ。」


 このドラゴンはちゃんと笑えるんだなと思って安心した。

 たまに笑顔になってくれないと、威圧で押しつぶされそうだ。

 そもそも、ドラゴンに対して対等に接するなんて無茶苦茶だ!

 気を抜けばすぐデスマス調になりそうだ。


「では改めて、アレンよ。これからよろしくだ。」


「あぁ。よろしくインフェルノ。」


「では早速彼女から能力を受け取るがいい。」


「ちょっと待ってくれ。質問があるんだけど。

 彼女から能力を受け取るとこの城を守っている結界はどうなる?」


「消えるであろうな。」


 それはまずい。

 この守りが無くなれば恐らく帝国軍が攻めてくるだろう。

 自分はまだこの世界を知らないし、知りたい。

 せめて周辺の地域だけでも見て回りたい。


「なら、まだ彼女から能力は受け取らない。」


「何故だ。」


「俺はこの世界の事をよく知らない。だから周辺地域を見て回りたい。その間に攻められたりでもしたら対処が遅れてしまうからな。」


「なるほどな。良かろう。ならば東のケイオス街にでも行くが良い。そこは人の街だ。魔人に対してあまり反対的な意見をもっていない。人間の街の中では安全な方であろう。隣国には帝国がある。その情報も得てくるが良い。」


 人の町か。

 やっと人に会うことができる。

 顔があればにやけていただろう。


「ありがとう。なら、そこに行くことにするよ。」


「よし。ならば、守護者達は封印を解こう。そなたを一人で行かせる訳にはいかぬからな。」


「分かった。」

 この目の前で寝ている彼女の守護者か。

 一体どんな人達なのだろう。

 いや、人ではなく怪物だったりして?

 それは嫌だ。頼む人であってくれ!


「では封印を解く。」


 女性が横たわっている台座を重心とした正三角形の頂点に、それぞれ魔法陣が現れた。

 すると地面から円柱の形をした物体が地面から現れた。

 その筒の中に守護者が入っているようだ。



 《敵の攻撃姿勢を感知。直ちに防衛態勢に移行。知覚速度を上昇します。》


「え、ちょっ。」


 え、なんで? と思った。


 と、同時に世界の速度が遅くなった。

 これは、能力『並列思考』で知覚速度を上昇させたためだろう。


 そのおかげで、三柱の内、二柱には人の存在を確認できた。

 美女とできるおじさんがいた。

 ただ一柱だけ空である。


 俺は能力『空間知覚』の効果を高め、視野の拡張をし、もう一人の視認を試みた。

 そして見つけた。

 俺の頭上に女性が、剣を振りかざしながら突っ込んできていた。


「おいイリス!どうしたらいいんだ!」


 《そのまま剣を掴めばよろしいかと思われます。》


「え? それ手は大丈夫?」


 《問題ありません。》


「あ、そうなの? じゃあ……」


 俺はすぐ近くに迫っている剣を掴んだ。

 すると、若干の衝撃はきたものの上手く威力を相殺できた。

 同時に認識速度も戻った。


「hxaa?」


 斬りかかってきた女性がキレ気味である。

 俺は知覚速度の上昇と視野の拡張をしたせいで、少し疲労を感じていた。

 どうやら無制限に使用とはいかないらしい。


 というかなんて言った? 


「annxtxanxxanixxx?」


 え、え、ぜんぜん分からない何語? 

 ドラゴンの言葉は分かったのにどうして……


 《名称インフェルノは、能力『精神感応』によりマスターの意識に直接語りかけていました。直ちに外国語を解読、学習します。》


 なるほど、そうだったのか。


「neekxxixxiteruxx?」


 《言語を解読中。解読完了しました。言語習得完了しました。

 能力を使用せず、常時自動言語翻訳可能です。》


 まじか!? 

 言語もそんな簡単に……


「ねぇ聞いてる?」


 おぉぉお! 

 言葉が理解できた! 

 話せるのかな?


 《自分の思考を声にのせてください。》


 自分の思考を声に? 

 ん、こんな感じか?


「こんにちは。」


 あ、喋れた。


「こんにちは? あんた頭大丈夫?」


 このタイミングでこんにちはは不自然すぎたな。

 でも良かった。

 言語が分かる。

 言葉が喋れる。

 この世界でやっていける。


「クレア待つのだ。その者が次の王であるぞ。」


 ドラゴンが間に入ってくれた。


「チッ。この子が新しい魔王?何そのお面。早く顔を見せなさい。」


 俺が軽々と剣を防いでしまったから怒っているのだろうか。

 不機嫌だ。

 だけど王様に対してこの態度はやばくない?

 あと、俺顔ないからお面とったらやばいのだ。


「フッ。貴様は王に興味津々だな。」


 もう一人の女性が嘲笑うかのように言った。


「何? 別に知らないといけないことでしょ。」


 今落ち着いてよく二人の顔を見れるが、どちらもめちゃくちゃ美人。

 斬りかかってきた女性は、黒髪のボブで目がシルバーがかった色だ。

 服は黒色の軍服を着ている。

 もう片方の女性は、銀色のロングヘアで後ろで結んでいる。

 目も銀色がかっていて、黒のロングコートの軍服を着ている。


「まぁ君達落ち着きなさい。君が私達の王になるものでいいんだね?」


 そう問いかけてきたのは、もう一人の守護者。

 男性で、白髪、白髭、青い目だ。

 バーで働いていそうなイケてるおっさんだ。

 服はスーツのような軍服を着ている。


「そうだ。」


「だそうだ。私は彼が王で良いが、お二人さんはそれでいいかい?」


「私は問題ない。」


 銀髪の女性が言った。


「フンっ。私は認めないわ。ちょっと私の剣を受け止めたからって調子に乗らない事ね。ただのコテ調べだから。それにあんたを信用なんて出来ないから。」


 黒髪の女性が言った。まだ信用出来ないのは当たり前だ。

 自分もまだここにいる全員を信用してはいない。

 恐らく他の守護者もドラゴンも彼女と同じだろう。


「まぁ今はそれで良い。今は仮のアレンの守護者となってくれ。」


 ドラゴンが言った。


「分かりました。では、改めまして私はザック・リチャード。今は仮の守護者だが、君を守り抜くことを約束しよう。」


 男性守護者が言った。


「私はアリス・ヴォン・ダンタルテ。貴様を私の心ゆくまで守ってやろう。」


 銀髪の女性が言った。

 この人が魔王の元に、養子としてきた子だった。

 ちょっとイメージしていたのと違う。

 いやちょっと所ではないな。

 本来は王様に貴様はダメでしょ!

 まぁ、自分が王様扱いされるのはちょっと疲れるから、友達感覚の方がいいんだけどね。


 友達でも貴様はないか。

 んーーまぁいい。

 好きにさせよう。


「私はクレア・ロイド。さっきも言った通り信用した訳じゃないから。変なことしたら切るわよ。」


 黒髪の女性が言った。


 ほんとに恐ろしい。

 彼女の機嫌を損ねないようにしよう。

 あれ?

 立場変わってる?


「俺はアレン・アンバー。新しくこの地の魔王となった者だ。」


「では早速だ。アレンは今から東の人の町へ行く。守護者達よ、務めを果たすが良い。」



 これから人の町へ行くのだが、一体どんな町なのだろう。

 こんな怖そうなお姉さん達が守ってくれるらしいけど、気を抜いたら殺されそうだ。

 おじさんに守ってもらおう。

 この人達と行くのは心配だが、この世界で初めての人間の国へ行くのだ。


 俺は期待に胸を膨らませた。










 ステータス


 名称 アレン・アンバー


 種族 ホムンクルス(金属生命体)


 称号 魔人の王


 能力 『固有空間』

 『金属操者』

 『空間知覚』

 『並列思考(イリス)

 『攻性防御』

 『魔力遮断』


 魔法 なし


 耐性 状態異常耐性

 物理攻撃耐性

 変熱耐性






 名称 獄炎龍・インフェルノ


 種族 (ドラゴン族)


 能力 『精神感応』

 『魔力遮断』

 その他不明


 魔法 不明


 耐性 状態異常無効

 物理攻撃耐性

 魔法攻撃耐性

 精神攻撃無効

 高熱無効







 名称 アーヴァイン・ヴォン・ダンタルテ


 種族 魔人族


 称号 魔人の王


 能力 不明


 魔法 不明


 耐性 状態異常無効

 物理攻撃耐性

 魔法攻撃耐性

 精神攻撃耐性

 変熱耐性


 その他

 気前のいい男。

 いつも笑っているが、戦場では真面目で冷静。

 部下に的確な判断を下し、敵には速やかな死を与える。

 自らの思想と同系のものを持つ者は、種族に関係なく仲間と思える。







 名称 フィーラ・アレストリア


 種族 人間


 称号 勇者 魔人の王


 能力 『範囲結界』

 『思考加速』

 『空間知覚』


 魔法 聖魔法


 耐性 状態異常耐性

 物理攻撃無効

 魔法攻撃耐性


 その他

 周りに優しく、人に気をくばれる美人な女性。

 家事が得意。

 メリハリがしっかししている。

 田舎に暮らしていた元農民。





 名称 アリス・ヴォン・ダンタルテ


 種族 魔人族


 称号 魔王の守護者


 能力 不明


 魔法 不明


 耐性 不明


 その他

 魔王アーヴァインの元へ養子としてきた。

 強気な女性。

 髪型は銀髪ロングで美人。

 よく嘲笑う。

 剣を所持。





 名称 クレア・ロイド


 種族 魔人族


 称号 魔王の守護者


 能力 不明


 魔法 不明


 耐性 不明


 その他

 強気な女性。

 髪型は黒髪ボブで美人。

 よく人を馬鹿にしたような目で見る。

 剣を所持。






 名称 ザック・リチャード


 種族 魔人族


 称号 魔王の守護者


 能力 不明


 魔法 不明


 耐性 不明


 その他

 頼れそうな五十代ぐらいで白髪、白髭のダンディなおっさん。

 目は青色。








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