第13話 依頼
いろいろ話をしながら歩いていたらいつのまにかケイオス街に着いていた。
まだ朝なので門を出入りする人は少ない。
「まずはとった獲物をギルドに売りに行こう。」
「そうね。」
「あまり目立たないぐらいの量を売ろう。お金が無くなったらまた売りに行けばいいだけだからね。」
「ふむ。そうだな。……アレン、能力は人の前で使うなよ。」
「分かってる。取り出す方法は考えているから。」
「ならいい。」
ということでギルドに行くことになったのだが、問題はアリスだ。
そう思い俺は彼女の顔を見た。
「うわっ! びっくりした。」
彼女は目を開けてこちらをじっと眺めていた。
「おろせ。」
「あ、はい。」
トン
彼女はやっと目を覚まし、地面に立った。
「ありがとうアレン。フッ、お姫様抱っこか。やり手だな。」
「はいはい。次から置いていきますよ。」
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目が覚めた四名はギルドについた。
時間は7時頃だろう。
ギルドの中もまだそれほど人で活気はない。
冒険者達はリュックの中身を確認したり、仲間と飲み物を飲みながら作戦会議をしたり、掲示板にはられている依頼を確認したりしている。
俺はあらかじめ、ザックのカバンに入っていた大きい袋の中に適量の獲物を取りだしておいたものを、ギルドのカウンターに置いた。
ドンッ
「お疲れ様です。初めてでこの量は凄いですね! えーとどれどれ……中身は…… 凄い! こんなにもDランクのクロコダイルが! 目撃数は減少していたんですが、また繁殖して増えてしまいましたかね……」
お姉さんは考え込んでしまった。
それは多分山の隅から隅まで三人が走り回ってクロコダイルを討伐していたからですよお姉さん……
ちなみにその9倍の量のクロコダイルさんが俺の固有空間にいらっしゃいますよ……
なんて流石に言えません。
「大丈夫だと思いますよ。俺達がたまたま複数のクロコダイルと遭遇しただけですよ。ははは。」
笑っておいた。
「ふふふ、そうですか。分かりました。では取引額についてですがクロコダイル五匹で1金貨です。」
1金貨!?
つまり10万円に匹敵する大金。
なんて美味しい職業なんだ……
あと9倍の量のクロコダイルがあるから単純計算で一日100万円を稼いでしまったのか……
なんということだ……
四人はクロコダイルを大量に倒し、懐が潤いました。
「そんなにくれるんですか!」
「はい。今、クロコダイルの相場が一匹銀貨2枚となっています。なので金貨一枚となります。」
「ありがとうございます。」
「いえいえ。また沢山のクロコダイルをとってきてくださいね。」
ニコッと俺に微笑みかけた。
「はい。ありがとうございました。」
俺はペコペコする。
「またのご利用お待ちしております。」
満足顔の俺達は隣の建物に魔物を預け、ギルドの二階にある机で朝食を食べながらルーラが来るのを待つことにした。
二階は四人机がズラっと並び、カフェのようだ。
バーと肉料理とサンドウィッチ店の三店舗料理店があり、サンドウィッチ店の朝食を買った。
肉を挟んだサンドウィッチと水だ。
この世界にパンありましたわ。
俺以外の三人は美味しそうに料理を食べている。
言っちゃ悪いが、ザックが作った料理の方が美味しそうだ。
「それにしても金貨一枚か。」
いい宿に泊まれそうだ。
「ここら辺に評判いい宿とかある?」
「冒険者に聞いてみたのだが、このギルドの近くにあるらしい。後で案内しよう。」
知らないか、よし探そう
と言おうとしてたんだけど、こいつはいつそんなこと調べたんだ……
流石出来るおっさん。
話を聞くに、この街の宿は1番安くて二人で大銅貨一枚の宿があるらしい。
そこまで安くなくていいが、できるだけ安くすませたい。
俺的にはこの街に一週間はいるつもりだ。
七日で四人十万ぐらいでいいだろう。
ザックが紹介してきた店は一泊二人で大銅貨五枚らしい。
それでも凄く安い。
この世界には電気がないからテレビや空調設備はもちろん無いけど……
そんなわがままは言ってられない。
「ありがとう。後でそこに行ってみよう。宿がとれたら、この街でやることは情報収集だけだ。ルーラにも聞くけどこの街の人や遠い所からきた冒険者にも聞いてみよう。」
「そうだな。」
「いや、やることはそれだけでは無い。」
アリスが言った。
「何すんの?」
「冒険者になったから冒険者をするぞ。ちょっと依頼を見てくる。」
椅子を立ち、一階へ向かった。
「え、お、おい!」
彼女はそのまま階段を降り、見えなくなった。
「まぁいいんじゃない?」
クレアが言う。
確かに俺ももっと冒険者らしいものをしてみたいとは思っていたからな、いいか……
「まぁいいか。」
俺はサンドウィッチを口に運んだ。
皆が食事を終え、アリスが戻って来るのを待っていた。
「遅いな…… あ、来た。」
「依頼取ってきたぞ。」
「何の依頼?」
アリスから依頼内容が書かれた紙を受け取り、内容を確認した。
「うちの息子を家から出してください。報酬金貨十枚……え……なにこれ。」
クレアとザックもそれを聞き、横から覗きこんできた。
二人とも目をパチパチさせ、俺達は戸惑いながらアリスの方向を向く。
「さぁ、依頼を果たしに行くぞ。」
「いや、そもそもルーラがまだで……」
「依頼内容が薄すぎて何をすればいいか全然分からないじゃない!――」
クレアが割って入ってきた。
「というかよりにもよってなんでこんな依頼を受けてきたのよ!」
俺の気持ちをクレアが代弁してくれた。
全くその通りだ。
ゴブリンがいました。助けて!
デススパイダーを目撃。調査して!
などを想像していたが、まさか赤の他人の息子のメンタルトレーナーになるとは……
ん? 待てよ、アリスはこの文章をそのまま捉えてしまっているのか!?
「フッ。そんな事も分からないのか。ただその息子を無理やり外に連れ出せばいいのだ。」
「はぁ……」
三人はため息をついた。
そんなことだけに金貨十枚を俺たちに支払うわけがない。
しかもこの仕事は一週間で終わるには厳しいだろう。
「とにかくキャンセルしに行こう。」
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「キャンセル料は銀貨一枚です。」
1階の受付でキャンセルを頼んだのだが、一万円かかるらしい。
「…………」
俺は無言で頭を抱える。
さっき依頼を申請して、数分で戻ってきて一万円を払う。
なんて間抜けな行動だ……
「……分かりました。」
俺は小銭入れから銀貨を取り出そうとした。
「まぁいいんじゃないか。――」
ザックが俺の肩を持って言った。
「やれるとこまでやればいいじゃないか。もし上手くいけば金貨十枚も手に入るからね。」
「確かにそうだけど……」
「毎日私達四人が相手をする必要は無い。交代でその息子を相手すればいいのではないか?」
「確かにそれなら残りの三人は情報を聞きに回ったり、狩りも行けたりできるな。――」
確かにそれでこの依頼はやれそうだ。
達成できるかは別だが。
「分かったよ。じゃあこの依頼を受けよう。」
「しょうがないわね。」
クレアも了解のようだ。
確かに金貨十枚は美味しい。
だが、時間がある人はこの依頼をすぐさま受ける者もいそうだ。
対象ランクもDランクで、冒険者全員に依頼を受ける権利がある。
俺はその息子の情報が少ないので、受付の人に聞いてみようと思った。
「すみません、その息子について教えて貰えますか?」
え、知らないんですか?
みたいな顔をされた。
「あ、はい、彼は男で魔女と言われています。」
「……はい?」




