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【完結】夢ノ雫 ~Dream Drop Out~  作者: 小桜 丸
第十四章【黒】

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第93話【絶望を終わらせられますか?】

「…やっぱり、場所は学校か」


 西村駿たちはもう一度東雲桜のユメノ世界へと訪れていた。周囲の景色は真白高等学校のグラウンド、駿たちの姿も制服姿だ。


「あっれー? 君たちって確か偽物の七つの大罪だよね?」  


 そんな駿たちの前に現れたのは、四種の絶望たち。木村玄輝たちはこんな強大な相手を前にして戦っていたのかと雨空霰たちの強さを再確認させられる。


「世界は私の手によって堕ちる。貴様らが今更何をしようが既に手遅れだ」


 龍神が雷を右腕に纏わせる。まともに食らえば、即死すること間違いないだろう。


「あなたの相手は私たちがする」


 そのタイミングを計らって、四色の蓮である雨氷雫たちが東雲桜のユメノ世界へと介入し、龍神たちの前に姿を現す。


「やっぱり来たな…! 霰ッ!!」

「お前に名前を呼ばれると寒気がするんだ…!」


 雨空霰のダガーとルシファーの剣が衝突し合うと、二人の姿がその場から一瞬にして消える。


「ボクの力試しに付き合ってくれるんだね~! 村正くん!」  

「お喋りするのなら場所を移そうか?」


 村正が二刀流の剣を振るうと、めぐみと共にその場から姿を消す。絢も同じく空亡に刀を突き付けたと同時に、笑顔を玄輝たちに見せながらその場から消失した。


「貴様…一体何を?」 

「私たちが戦うべき相手はあなたたち。だけど、戦うべき場所は違う」


 雨氷雫が木村玄輝たちに一瞬だけ視線を移すと、龍神に銃を構えた瞬間にそのユメノ世界から姿を消した。玄輝たちは取り敢えずの作戦は上手くいったと少しだけ安心して、一時間前を思い出す。



 一時間前――



「霰たちに…黒百合先輩たち…」


 真白町に到着すると雨氷雫に連れられるがままに自宅へと招かれる。大人数で押しかけることになり、狭いのではないかという心配をしていたが、既に五奉行と雫を除いた四色の蓮が集まっていたことで、一瞬だけその場に立ち止まってしまう。


 クラーラとブラッドは狭い場所が嫌いだと言って、外で見張りを志望したことで、家の中までは入ってこなかったが、咲だけは治療をするために優菜により別室へ運ばれていった。


「黒霧が人を操れる以上、俺たちの場所をすぐに探し当てられる。長時間ここにはいられないぞ」


 雨空霰の言葉通り、人を操れるという力は強大なものだ。眠らなければ夜驚症に陥ることもないが、人間は睡眠を必ず必要としている。そうなると人間であれば、政治家や軍人、ましてや宇宙ステーションに住む者たちまで操れるだろう。


「わたくしたちをここに呼び集めた。その理由をまず述べてくださる?」

「……東雲桜のユメノ世界へもう一度乗り込むから」


 その発言に五奉行だけでなく、四色の蓮でさえ反発するような顔つきを見せた。この期に及んで何を言っている。そう言いたげな様子だ。


「西村駿たちがもう一度チャンスが欲しいと私に頼んできた。だから、もう一度だけ――」

「呆れたよ。お前たちはもう少し利口な考えを持つと思ったのに」

「その考えを受け入れるあんたの気が知れない。こんな惨状になってまで、まだ東雲桜を助けようとでも思っているのかい?」


 霧崎真冬がため息交じりにガッカリとした反応をし、柏原瑞月が現実を見せるかのように厳しい言葉を放った。


「悪いが、俺もその考えには賛成できない。今は一早く東雲桜を殺すことが先決だ」

「まーそうだよな。駿たちがそう思うのも分かるが、流石に一人の人間の為に国を捨てるなんてことは無理だろー?」


 月影村正と朧絢もその意見には否定的なようで、椅子に腰を掛けながら霧崎真冬たちに便乗をする。


「先輩たち、もう一度だけでいい。チャンスを…」

「……雨空霰、その判断はあなたにお任せしますわ」


 この中で最も実力が備わっている人物。黒百合玲子が霰へ判断を任せると、一斉に注目の的が雨空霰へとなる。雨氷雫は霰の答えを聞く前に予想が付いていた。その判断が例え残酷であれ、たった一人の為に全てを犠牲に出来ない、と答えるであろうと。


「俺には決められない」

「…どういうことでして?」

「そのままの意味だ。この判断は俺が下すべきじゃないって言っているんだよ」


 雨空霰は今までに見せたことのない迷いの表情を漂わせていた。これには黒百合も目を見開いて、その答えに驚いているようだ。


「"四色の蓮"、わたくしたちはあなた方の存在を信頼していますわ。迷う必要なんて…」

「四色の蓮?」


 神凪楓が口を開く。意識が曖昧だったが、東雲桜のポベートールも霰たちのことをそう呼んでいた。顔見知りなのか、そんな疑問が頭の中に浮かぶ。


「あら? あなた方は知らなくて? 世界を救った大英雄、四色の蓮でしてよ?」 

「…知らないわよ」

「世間知らずだこと…ねぇ? 雨空霰」


 黒百合玲子が神凪楓を若干小馬鹿にしながら、雨空霰に説明をするように促した。

  

「…この世界じゃない別の世界。俺たち四人はその世界に住んでいたんだ」

「それはつまり…おれたちとは違う、別世界の人間ってことか?」

「その通り。俺たちは元々住んでいた世界を、お前たちも目にしたあいつらに滅ぼされたんだ。四色の孔雀と呼ばれるやつと、真の七つの大罪にな」


 霰以外の三人が下を俯きながら黙って話を聞いていた。何かを思い出そうとしているのか、思い出さないようにしているのかは分からない。だがその表情はいつになく真剣だ。


「結局、その世界で俺たちは何人のも仲間を失って、四人だけで生き残った。勿論、あいつらを打ち倒してな」

「……あんなに強いワケはそれが原因だったのね」

「ポベートールはその世界から逃亡した龍神の傘下だろう。まさか、龍神たちを生き返らせようとしているとは思わなかった」


 霰たちの話をしていると、リビングの扉がバタンッと強めに開かれる。

 

「その話、本当ですか?」

「お前は優菜の…」


 そこに立っていたのは咲。治療を受けた後だからか、包帯が至る所に巻かれており、止血を施されていた。


「四色の蓮、あなた方が本当に――」

「やっぱり四童子有栖から聞いた生き残りはお前だったのか」

「――どうして」

 

 咲はやっと会えたという悲しみの感情と、四色の蓮に対する怒りの感情を込めながら、雨空霰の近くまで歩み寄って


「どうして助けてくれなかったんですかっ…!?」


 あの崩すことのなかった無表情がぐちゃぐちゃに崩壊し、少女らしい泣き顔を浮かべて、霰の肩を大きく揺さぶった。


「私は、母とずっと助けを待っていたのにっ…!」

「…知らなかった。あの右手に付いた"腕輪"が示す数字だと、俺たちしか生き残っていなかったんだ」

「私は、私たちはぁっ…! アイツらから逃げるために右手首を切断したんですよっ…!!」


 今まで無人島では空気を読みながら行動をしていた咲も、四色の蓮を目の前にすれば過去の記憶が蘇り泣き叫ぶことしか考えられなかった。今はこんなことを話している場合じゃないと判断した雨空霰が、


「少し静かにしていてくれ」


 咲の溝に拳をめり込ませるとその場に気絶をさせる。その対応に嫌悪感を抱いた玄輝たちと黒百合たちが怪訝な視線を送った。


「…この一件が終わったら、話はいくらでも聞いてやる」

「ふふっ、あなたらしくもありませんわね」

「…黒百合、改めて聞こう。一人の少女すら助けられないこんな"英雄"に、判断を任せるつもりか?」


 黒百合は「やめておきますわ」と霰に返答をして、次に指名をした人物は、


「西村駿、あなたに判断を任せますわ」

「ちょっと玲子…! 何を言っているの!?」


 聞かずとも答えなど分かり切っている西村駿に視線を向けた。この行動には五奉行たちも予想外だったようで、止めに掛かろうとする。


「あなたは東雲桜というたった一人の人間の為に、わたくしたちを危険な目に晒せるほどの覚悟をしているの?」

「……」

「お答えなさい、西村駿」


 黒百合の問いに西村駿は目を瞑り、両拳を強く握りしめながらこう答えた。 


「覚悟をしている。だから、チャンスを―――」

「答えが出ましたわね? 雨空霰」

「…あぁ、そのようだな」

 

 四色の蓮や五奉行の中にも不満を持っている者もいたが、黒百合と霰が駿の答えに満足をすると、


「雫、何か作戦を考えていたんだろ? 話してみろ」


 雨氷雫に作戦の説明をするように促した。


「…作戦は―――」


 雫は作戦をこう説明をする。まずは自分たちが狙われている以上、誰かが現実世界に残らなければならない。いわば、防壁だ。その防壁はクラーラ、ブラッド、咲、の三人にしてもらうことにする。クラーラは玄関前、ブラッドは裏口、咲は室内という配置。


「そしてここからが重要…」


 周囲の安全を確保した後はユメノ世界が大きな課題となる。東雲桜たちが龍神たちを復活させたことで、そう易々とユメノ世界を出歩くことは出来ない。木村玄輝たちが干渉すれば、四種の絶望だけでなく、七つの大罪も加えて邪魔をしてくることだろう。


「龍神たちは私たちが相手を引き受けて、七つの大罪は五奉行のあなたたちに任せる」

「相手を引き受けるって…東雲桜のユメノ世界で戦っていれば、アイツらは隙を窺がって木村たちに攻撃を仕掛けるぞ」 

「…"ユメノ世界の中にユメノ世界を創る"」

  

 ユメノ世界の中にユメノ世界を創り出す。それはマトリョーシカのようにユメノ世界の中に自分たちでユメノ世界を創り出し、そこへ閉じ込めるという手法。


「それは試したことがないな。霰や絢は試したことがあるのか?」

「俺は一度もない」

「俺もないかなー…」


 雨氷雫はそのマトリョーシカ作戦の可能性を示しているのは自分たちだという。そこまで大規模な空間を創り出すにはかなりの創造力を消費する。黒百合たちといえどもユメノ世界で空間を生み出すほどの創造力など持ち合わせていないのだ。


「私たち一人ずつで空間を三つ作る」

「…三つも作るのか?」

「五奉行の分もいるから」


 全員がそれに納得をする。その作戦による最大の問題点は、黒霧である桜に木村玄輝たちが太刀打ちできるのかという点。そればかりは自分たちでどうにかしてもらうしか他なかったが 


「俺たちはどうにかします。先輩たちは先輩たちで敵を受け持ってくれるだけで十分です」


 と西村駿がこれ以上は無理を言えないと、渋々了承した。



  現在――


「…あの四人、本当にユメノ世界の中にユメノ世界を創り出したわね」


 上空を見上げると、四角い箱らしき空間が十個以上も散りばめられており、どれも空間のねじれのようなものが発生している。


「あんたら…また来たのね」


 お次に現れたのはベルフェゴールが率いる七つの大罪。

 ルシファーは雨空霰と戦っている為不在だが、気迫から感じるその実力は全く衰えていない。


「制裁を下しますわ」


 黒百合たちが空から降ってくると、サタンは霧崎真冬、レヴィアタンは柏原瑞月、アスモデウスは松乃椿、マモンは柳未穂といった感じで、次々と霰たちが創ったもう一つのユメノ世界へと転送されていく。


「それでは、ごめんあそばせ」


 最後に黒百合玲子がお嬢様らしく一礼をしながら、ベルフェゴールとベルゼブブという二体を引き連れて、ユメノ世界へと消えていった。


「これで、残りは黒霧だけ」


 いよいよ真白高等学校の内部へと足を踏み入れる。現実世界で見ている景色となんら変わりない。唯一変わっているのは、階段が普段よりも長く、最奥にある祭壇へ続くかのように伸びていることだ。

 

「…これは、おれのユメノ世界か?」


 廊下を歩いていくと、辺りの景色が真白町へと変わっていく。写真を並べられるように、首が曲がった金田信之の死体が転がっている男子トイレ、無残な姿で爪を壁に立てている駿の母親、そして屋上でベルフェゴールの姿が木村玄輝に差し代わり偽物の駿が殺されている姿が壁に映し出されていた。


「僕のユメノ世界…」


 風景がガラリと変わり、辺り一面が青色へと染まる。そこには、どこまでも続く青色の水面に浮かぶピアノや楽譜、海底に沈む真白町、様々な古生物、神凪楓を締め付けているレヴィアタンが映し出される。よく見てみるとレヴィアタンの体が徐々に信之へと変わり、神凪楓を握りつぶしている光景へとなっている。


「…私の」


 ピコピコとしたゲームの世界を表すように、辺りがピカピカと光り出す。 

 映し出されるものは、ファンタジーでよく見る村や城下町の風景、森でぴょんぴょんと跳ねているスライムのようなモンスター、玄輝や信之へと槍を突き刺しているアスモデウス。一歩ずつ歩を進めると、アスモデウスが鈴見優菜の姿へと変わっていく。


「イトナ…」


 進んでいくと暖かい光に包まれるかのように、玄輝たちを真っ白な壁が迎え入れた。天使たちが飛び交う天界、玄輝・楓・吹・白澤の四人が真っ暗闇に立っている光景、真っ赤な血の池地獄。そして、ルシファーがいくつもの骸の上に座っている光景が映し出される。


 これも、ルシファーの姿が西村駿へと移り変わっていくようだ。


「…懐かしいぜ」

 

 スポットライトが上から玄輝たちの事を強く照らすと、ゴングの音が聴こえ始める。壁には、数体のロボットが決めポーズをしていたり、人工知能のミラの姿があったり、マモンがボロボロのロボットを壊している光景が映し出されていた。マモンの姿は白澤来へと変貌していく。

 

「思い出したくない記憶やな…」 


 炎が燃えるかのようにして、赤色の光が駿たちを包み込むようにして燃え盛る。炎の壁に囲まれた真白高等学校、白澤来たちの残酷なる死体、サタンが霧崎真冬を食い千切る姿が映し出されていくようだ。


 ふと目を離した隙に、サタンの姿は波川吹自身の姿へと変わり果てていた。


「………」


 緑色の草が辺りに生い茂る。巨大なムカデがはい回るジャングル、綺麗な花畑、ベルゼブブが蠅を操り木村玄輝たちへ攻撃を仕掛けている姿。


 考える間もなく、ベルゼブブの姿は内宮智花に変化をしていた。


「…どうだった? 自分たちのことを改めて振り返ってみて」


 長かった階段を上り終えると、そこは学校の屋上。待っていたと言わんばかりに、屋上の柵に腰を下ろしながら微笑む東雲桜がいた。


「振り返る必要もなかった。俺たちは過去も後ろも見る必要がないんだからな」

「わたしから言わせてもらうと…今の西村くんたちより、自身の罪に溺れて好き放題に暴れる西村くんたちの方が、何倍も素敵だったと思うよ」


 空を見上げながら、何の悔いも残っていないような、そんな清々しい顔を見せる。


「…西村くん、前にわたしの将来の夢を聞いてきたことがあったよね?」 

「……あぁ」

「あの答えを今教えてあげるよ。わたしの夢はね…"この腐りきった世界を滅ぼすこと"」


 東雲桜の目は本気だった。

 叶えられない野望を口にするだけの愚か者の目ではない。ひたすらにその野望を叶えるために、あらゆる手を尽くしてきた獄道者の目だ。


「…どうしてそこまでこの世界を憎んでいる?」

「どうしてかって…? アッハハ…西村くんは相変わらず鈍感だなぁ…」


 辺りに黒い霧が漂い始めると、そこへ様々な人間たちの姿が映し出される。無職らしき男がパソコンの前でひたすらに時間を潰している光景、一人の女性がハンカチを噛みながら遠くで女性と話している男性を見ている光景……

 

「人間たちはいいご身分だよね? 勝手に自暴自棄になって、悪いのは全て自分たちなのに、人間同士で醜く責任を押し付け合って…。戦争がなくなり平和を言い張る割には、自殺や他殺、そんな犯罪が絶えずにこの世界で起きている」 

「………」 

「それが平和なの? 平和という言葉を飾り付け、出来上がっている"偽りの世界"でしょ?」


 桜は「馬鹿らしい」と吐き捨て、黒い霧を更に辺りへと広げた。


「そんな世界を、わたしが一から"創り直す"」

「…独裁政治のつもりかしら?」

「アハッ…! それでもいいかもね」

 

 東雲桜の言い分は間違ってはいない。間違ってはいないのだが、西村駿も含めて全員が桜の本心ではない気がしてならなかった。


「東雲、それがお前の本心なのか…?」

「……何を言っているの? これがわたしで、わたしの本心だよ」

「…桜ちゃん、それならどうして――」


 

 ――泣いているの?

 


 桜が自分の顔を触ると、僅かに手が濡れた。そう、東雲桜は知らないうちに涙を流していたのだ。


「………」

「おれたちはずっと考えていた。どうしてお前がこんなことをしたのか…その答えを考えても考えても頭の中に思い浮かばないんだ」


 涙を流していることに驚いていた東雲桜は、片手で頭を抑える。木村玄輝の言葉を続けるように西村駿が口を開き


「長い間一緒にいた俺だからこそ分かる。東雲、虫すら殺せないお前にこんなことが出来るはずがない」

「…るさい」

「…東雲、お前は本当にこの世界を憎んでいるのか?」


 そう問いかけた。


「うるさいっ! わたしは憎んで…! この世界を憎んで…っ!」

「辛いのならそう言えばいい。俺が、俺たちが受け止めてやる。だから、東雲の本心を、言葉を、聞かせてくれ…!」

 

 両手で頭を押さえて何かに抗う桜の背後に、一段と濃い黒色の霧が漂いポベートールが姿を現す。


【ケッケッケッ…桜、アイツらの言葉に耳を貸すな。オマエの野望はただ一つだろう?】

「そう、だ…! わたしは西村くんたちを殺し……て……」

「戻ってこい…ッ! 東雲桜…!!」



「う…う"あ"ぁ"あ"ぁ"あ"ぁ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"!!1」



 西村駿の呼びかけとポベートールの囁きによって、東雲桜が悲痛の叫びを上げると、黒い霧がユメノ世界を包み込むようにして周囲に張り巡らされる。


【ケケッ…力が暴走しちまったか…!】 


 前方の霧が少しだけ晴れると、ポベートールの前に黒い霧に半身を浸食をされ、紅色の瞳、黒色の肌へ変化をした東雲桜が立っていた。


「わ…たっ……しは…? 蜉ゥ縺代※」

【まぁいい。桜、アイツらを殺した後に現実世界の人間たちも皆殺しにしちまえ】


 桜の悲鳴がユメノ世界に響き渡ると、木村玄輝たちはそれぞれ東雲桜を捉える。


「桜ちゃん、待っててね! 迎えに行くから…!」

「まだ楽しい時間は終わってないんや。さっさと帰ってこい」


 鈴見優菜と波川吹が槍と双剣を創造して、東雲桜へ"戻ってくる"ように呼び掛ける。


「世界が憎いのなら、オレたちが憎しみを忘れさせるほど楽しませてやる」

「大丈夫、私たちがついているから」


 白澤来と内宮智花がガントレットと魔導書を創造して、東雲桜を"安心させる"ように呼び掛ける。


「僕たちはいつでも桜の仲間だよ」

「私たちはあなたを見捨てたりしないわ」


 金田信之と神凪楓がキーボードと銃剣を創造して、東雲桜へ自分たちの"仲間"だと呼びかける。


「お前には沢山の仲間がいるんだ。今更、お前の事を見捨てるわけにはいかないんだよ」

「あぁその通りだ。俺たちが絶対に東雲、お前の事を救ってみせる」

「"ぁ"あ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」


 木村玄輝と西村駿が赤黒い剣と白銀の剣を創造し、東雲桜に必ず助ける"約束"をすると、屋上の床を蹴って走り出した。

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