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【完結】夢ノ雫 ~Dream Drop Out~  作者: 小桜 丸
第十二章『博』

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第69話『ユメの存在は証明されますか?』

 四童子有栖に言われた通り、ユメ人の彼らは昼休みに保健室へと訪れようとしていた。玄輝たち七人が共に行動していることに周りの生徒が珍しがっているようだ。


「あら? あなた方は…」


 廊下を歩いていた七人は五奉行たちと鉢合わせする。黒百合玲子は微笑むように内宮智花を、霧崎真冬は呆れたように波川吹を、松乃椿は睨むように鈴見優菜を、柏原瑞月は蔑むように金田信之を、柳未穂は変わらぬ笑顔で白澤来を見ていた。


「面白い組み合わせだね」

  

 霧崎真冬がそう鼻で笑った。自分たちよりも優れていない者への蔑み。五奉行はそのような眼差しを七人へ送っているようだ。 


「…俺たちのクラスは皆で仲良くしているので」 

 

 西村駿は若干皮肉を込めた一言を五奉行へ放つと、そのまま黒百合玲子の横を通り過ぎていく。他の者たちも、遅れないように駿の後へ続くようにして歩き出した。


「――おかしいと思わない?」 

「…?」


 最後尾で歩いている玄輝が横を通り過ぎようとした瞬間、黒百合玲子がボソッと彼にだけ聞こえる声でそう呟く。

 

「全てが上手く行き過ぎている。わたくしたちがこうやって、あなた方の前に立ちはだかるのも…この真白高等学校の仕組みも…」

「何が言いたい?」

「…何でもありませんわ。今のはただの独り言として聞き流してくださる?」


 黒百合玲子が何を言おうとしているのか、玄輝には理解が出来なかった。木村玄輝と顔を合わせることなく、ひたすらに呟いていた黒百合に多少の恐怖感を覚えていると、紙切れを一枚だけ"故意"で床に落として他の五奉行と歩いていってしまった。


「――これは」 


 紙切れには電話番号らしきものが書いてあった。 これが黒百合玲子の番号だということは分かるが、何故このタイミングで番号を教えようとしたのか、何故関わりもない玄輝に番号を教えるのか、様々な疑問が頭の中をぐるぐると回っているが考えても埒が明かないため


「取り敢えず、駿たちと合流した方がいいな」


 黒百合の電話番号が書かれた紙切れをポケットに突っ込むと、駆け足で保健室へと向かった。 



◇◆◇◆◇◆◇◆



「あれ? どこ行ってたの玄輝?」

 

 保健室の扉を開くと、駿たちの後ろで話を聞いている金田信之が、真っ先に振り返り玄輝へ何をしていたのかを問いかける。


「…用を足していただけだ」


 玄輝は適当にはぐらかすと、信之に話がどういう状況なのか説明を求めた。信之曰く、西村駿が以前四童子有栖に説明した部分を皆に話していたらしい。どうやらまだ重要な話は始まっていなかったようだ。 


「話の区切りには丁度いいタイミングだ。そろそろ本題へ入ろうか」

 

 有栖が木村玄輝の姿を一瞥すると、愛用しているタブレットを取り出し、一枚の画像を画面に移し、西村駿たちへと見せた。


「私は政府から派遣された『レーヴ・ダウン』。分かりやすく説明するのなら、君達が度々遭遇しているユメ人という存在…それらの根源を探し出すのが、私たちの役目だ」


 画面に表示されているのは四童子有栖の名が書かれた書類と、その組織を表す黒色のシンボル。それに加えて右下には、国の厚生労働省を表すサインが記されている。


「『レーヴ・ダウン』…それに政府って…」


 四童子有栖は政府から派遣されている。その事実は西村駿たちにとって、想定外のことであり、植物状態へと陥るユメ人という症状がいかに問題視されているのかを実感させられた。


「私をわざわざこの国へと呼び戻したんだ。ユメ人が危険視されていることだけは確かだろう」 

「えーっと…有栖先生はユメ人について全て知っているんですか?」

「彼から話を聞くまでは…"ユメ人"と呼ばれていることさえ知らなかったよ」 

 

 鈴見優菜から質問をされた有栖は、西村駿の方へと視線を向ける。どうやら西村駿から聞き出した話による情報と、自分が今まで調査をしてきた情報とで照らし合わせて、それぞれの言葉を結び付けていたようだ。


「再確認をさせてほしい。ユメ人というのものは植物状態へと陥った者のことを指し示し、肉体を現実世界へ置き去りにすることで、ユメノ世界と呼ばれる場所にて魂だけ彷徨っている……ということでいいだろうか?」


 七人は四童子有栖の説明に対して、全員でどう答えようか顔を見合わせていた。 ユメノ世界でユメ人を救い出すために戦っている彼等だったが、自信を持って「そうだ」と回答できるほどの、確信を得た情報は持ち合わせていなかった。


「…なるほど」


 四童子有栖はこの時、彼等が持ち合わせている知識はユメノ世界での戦い方のみだということを理解する。戦い方だけは大まかに理解できているが、それ以外の話は詳しく聞かされていないのだ。

 

「それなら別の質問をしよう。君達、七人の中で最も初期のユメ人を教えてくれ」

「初期…それなら私は絶対に違うよね」


 まずは内宮智花が自分ではないと否定をする。四童子有栖の視線が動いたことを確認した白澤来は、次に自分から手を上げて、西村駿、波川吹を見ながらこう説明した。


「オレたちは三人同時にユメ人になったんだ。時期は確か…実力テストの二日前ぐらいだったぜ」

「そうだな。今、知る限りでは俺たちが一番初期のユメ人だとは思うが…」


 西村駿がそのようなことを口走りながら、残りの三人の顔を見た。未だに仲間内で互いに情報交換などはしていない。ならばこのタイミングでその機会を設けようと、駿は考えたのだ。


「私は…紫黒高等学校での一件の時だから…駿たちよりは早いけど、一番初めじゃないよ」

「僕もユメ人になったのは、駿が体育祭についての話をクラスで初めてしたあの日だから…」  


 四童子有栖を含めた七人の視線が一人だけ残った木村玄輝へと向けられる。そう、この七人の中で最も初めにユメ人となったのは木村玄輝なのだ。ユメノ世界へ干渉した回数も他の者より多いだろう。


「…木村玄輝、君は一体誰に助けられた? 自分の力で元の世界に戻ってきたわけではないのだろう?」

「おれがそれをお前に説明して何のメリットがあるんだ?」 

「そうだな…君達が私へ情報提供するメリットは数多くある。まず一つとして、君達が私に協力をしてくれさえすれば、政府からの援助も受けられるだろう」


 ――政府からの援助を受けられる。その条件は悪いどころか、駿たちからすれば良い点しかなかった。私生活に支障が出ないように配慮されるうえ、必要なものは取り揃えてもらえるのだ。


「聞く限りでは、君達のユメ人に関する情報もあやふやだ。私と君達が協力し合えば、より深くユメ人に関して知ることができる。つまり…情報共有だ」


 四童子有栖という存在。 西村駿たちはまだ高校生という未成年の立場。やはり一般的に呼ばれる"大人"という支柱が必要だ。情報も得られるというのなら、その勧誘を断る理由はないのだが…。


「…お前と協力し合うかどうかは、ここにいるおれらが決めることじゃない」


 この選択肢は神凪楓に選ばせる権利がある、玄輝はそう主張したいのだ。木村玄輝を助けたのは神凪楓。つまり、この場にいる誰よりも神凪楓がユメ人に関して詳しく、その決断を下すに相応しい人物なのだ。 


「この場にいない人物、それは神凪楓のことだろう?」


 四童子有栖は知ったような口ぶりで神凪楓の話題を出す。西村駿は神凪楓のことなど話した覚えはない。勿論、木村玄輝も以前に失言はしたものの、楓の事を口に出したことはなかった。


「何故、知っているんですか?」

「その答えは一つだ」


 薄い灰色のノートPCをデスクの上に出すと、スイッチを押して起動させる。軽快な起動音と共に、デスクトップの画面が徐々に点灯していくと、


「私は君達のユメノ世界を直接ではないが、一部干渉していたからだ」 


 画面に青髪のツインテールが特徴的な女性が映し出される。六人はその女性に見覚えがなかったものの、唯一白澤来が「あー!?」と大声を上げて指を差した。


「こいつ…! オレのユメノ世界で見たことあるぞ!」 

「ほんまか? 見間違いとちゃうんか?」


 波川吹が疑惑の声を上げるが、白澤来は「本当だって!」と強く主張する。それを見兼ねた四童子有栖が、その女性の名前をこう呼んだ。


「"ミラ"、自己紹介してやれ」

『承知しました』


 有栖の言葉にお辞儀をして反応する画面越しの女性に、全員がその場で息を呑む。


『私はユメノ世界へ干渉するために四童子有栖様によって創られた人工知能です。以後お見知りおきを』

「ぼ、僕…人工知能がここまで進化しているなんて思わなかったよ…」


 人間と変わらぬ素振りをして、人間と変わらぬ言語で話す。唯一の相違点は、画面の向こうにいるかこちら側にいるかの違い。一歩だけミラがこちら側へ踏み出してしまえば、人と成り代わってしまうことだろう。


「やっぱりそうだ! ユメノ世界でオレと戦った――」

『白澤来様、お久しぶりです。以前は実験データの収集に付き合っていただき、ありがとうございました』

「実験データ…? 何をしていたんですか?」


 西村駿がすかさずその言葉を四童子有栖へと追求する。何よりも気になったのが、有栖と駿が接触する前に、ユメノ世界へと干渉していたことだった。


「私は君にその世界がユメノ世界と教えられる前、植物状態となってしまった者の意識は何処へ消えていくのかを研究していた」

 

 四童子有栖はタブレットに先ほどとは違う一枚の書類を表示させる。そこには数多くの数式、グラフ、文字で書類が埋め尽くされており、一体何を求めているのか、駿たちは少しも理解が出来なかった。


「様々な仮説を立てていき…最終的に"夢を見ている"、という結論に至った」

「…マジかよ」

 

 玄輝は四童子有栖が、自分たちと関わる前に真相へと着実に近づいていることを知り、思わず言葉を漏らした。薄々勘づいていたが、四童子有栖という女性は政府に呼ばれただけあって、計り知れない実力を伴っているらしい。


「現実に残された肉体へと手を加えても効果がないのは目に見えている。だが夢を見ているのであれば、そこへ干渉することによって何か行動は起こせるはずだと…私が思いついた作戦はこれだ」


 有栖は人工知能が映し出されたノートPCへ視線を送る。この時、気が付いたのはミラが当たり前のようにこちら側を覗いていることだ。きっと、ノートPCに付属しているカメラから覗いているのだろう。原理は分かっていても、各々少しだけ恐怖を感じていた。


「植物状態となっている人物の潜在意識の波長と、人工知能であるミラの波長を少しのズレもなく合わして、その夢の中へと侵入するという試みだ」

「…そんなことが本当に出来るんですか?」

「私も一か八かの賭けだったよ。正直、八十パーセントの確率で失敗すると予測していた」


 キーボードの文字列を器用に打ち込んで、何かソフトのようなものを立ち上げる。駿たちは何が起こるのかと、ディスプレイをじっと見つめていると、


「しかし、結果はこの通りだ。容易く夢の中へと干渉が可能となった」 

「――!」


 そこには、木村玄輝から内宮智花までの悪魔の情報と姿が、細々に記されたファイルが映し出された。


「ベルフェゴール、レヴィアタン、アスモデウス、ルシファー、マモン、サタン、ベルゼブブ……七つの大罪に関するデータは全て集め終えることが出来た」


 ベルフェゴールのデータまでもが採集されている。これが意味すること…それは木村玄輝が神凪楓に助けられている最中に、四童子有栖が人工知能のミラを利用し、ユメノ世界の何処かで実験データを採集していたことだ。


「お前はおれたちが命を懸けて戦っている時に、こんな事をしていたのか?」


 玄輝の言葉に全員が反応し、四童子有栖へ疑いの目を向ける。こうなることは予測していたのか、有栖は弁解をするわけでもなく、今度は別のデータファイルを起動させた。


「悪魔だけでなく君達のデータも取っているが…その意味は何だと考える?」

「…脅しに使うため?」

「鈴見優菜の言う通り、脅しにも使えるだろう。だが、私はそんなものに興味はない」


 四童子有栖はその場に立ち上がり、改めて西村駿たちと向かい合う。

 

「もし、あの場で木村玄輝がベルフェゴールに殺されていたら。もし、あの場で神凪楓がレヴィアタンに敗北していたら。その後の後始末はどうする?」

「…それは」

「私はその為に情報を採集した。あの悪魔たちがどんな性格で、どんな力を扱って、どんな姿をしているのか」


 有栖自身もユメノ世界へと人工知能を初めて干渉させた際に、悪魔という存在が現れ、人間を襲っていたという話をミラから聞いた時は、ミラを構築するプログラムに誤りが生じていると疑っていたのだ。


「でもよ! オレと戦った時はミラはとてつもなく強かったぜ!」

「それは既に君のデータを採集し終えていたからだ。ミラはその者のありとあらゆる情報を得て、学習するようにプログラムされている。つまり、情報を得られなければあの悪魔たちを相手に太刀打ちなど出来るはずもない」


 四童子有栖はミラの戦闘能力を試すために白澤来と戦わせたと追記で説明を加える。白澤は朧絢とミラが戦っていたということも口に出したかったが、公言するなと言われていたため、そのまま押し黙るしかなかった。


「君達の力になれなかったことは非常に申し訳ないと思っている。私に出来るのは君達が失敗したときの尻拭い、それだけで精一杯なんだ」


 四童子有栖は自身より年下である高校生達へと頭を深く下げる。頭を下げられた西村駿たちは、どう対応すればいいのか困り果ててしまっていたが、木村玄輝が有栖の前に立ち


「おれはミラの声に聞き覚えがあったが…今、やっとどこで聞いたのか思い出したぞ」

「玄輝――」

「駿、ここはおれに話をさせてくれないか?」


 西村駿は珍しく真面目になっている玄輝の顔を見ると、縦に一度頷いて一歩だけ背後へと退いた。


「…おれがガッシーのユメノ世界でどうすればいいか迷っている時に、ミラを使って助言をしてくれのはお前だろ?」

 

 それは金田信之を助けにユメノ世界へ干渉したときの話だ。信之を正気に戻すにはどうすればいいかと迷う玄輝に、何処からともなく聴こえてきた声。"痛みが最も効きます。殴ってください。"と助け船を出してきたのだ。


「一刻を争う時にあの助言がなかったら、おれは大切な友人を失っていたはずだ」

「まさか、君に慰められるとはな」

「こいつはおれたちを助けようとしていたんだ。皆もその気持ちだけは伝わるだろ?」


 木村玄輝は共感を求めるようにして、西村駿たちのいる背後を振り返った。気に入らないヤツはいるが、悪いヤツではない。四童子有栖がどれだけ必死だったのかも、分かってくれているはずだ。



「縺昴l縺ッ蛛ス繧翫□」「膰堺�器�膰削蒐��鐔順孝膺���」「膵違��菴�������」「蠕�▽縺ョ縺ッ邨カ譛帙□縺�」「茱炊��薈帥��筝私査����」「�演�我�」



「――あ」


 可笑しくなる予兆も何もなかった。それなのに頭が可笑しくなりそうな言葉を一斉に浴びせられる。自分の気が狂っているのか、黒霧が攻撃を仕掛けてきたのか、突如眩暈に襲われる。木村玄輝は訳が分からないまま、その場で意識を手放した。



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「やー! ハローハロー! 二日ぶりかな?」

 

 私はそう言いながら"アナタ"の顔を見る。 


「この世界は残酷だよね。私が"死ね"っていえば、絶対に死んじゃうし…」


 私は退屈そうに伸びをしながら、"アナタ"に共感を求める。


「きっと"アナタ"はこう思っているはずだよ。私が一体誰なのか?」

 

 私は"アナタ"の回答を期待している。


「んー…ごめんね。"アナタ"が何を言っているのかイマイチ聞こえないや」


 私は"アナタ"にこう言った。


「その答えは、"アナタ"が一番よく知っているんじゃない?」

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