家族仲良し大作戦その1
「さあお嬢様!」
「これから!」
「「家族仲良し大作戦をいたしましょう!」」
「かぞく…?」
かぞく
わたくしの家族…
なかよし‥‥‥?
当時のわたくしの家族は、お父様、お母様と妹だった。
お父様とお母様はわたくしをすごく甘やかして、結果わたくしは我儘になった。そして手が付けられなくなった。
そんなわたくしを両親は遠ざけるようになり、今四歳の可愛い妹に釘付けなわけだ。
愛情を得られなくなったせいでわたくしはかまってもらおうと余計我儘になり、周りにも八つ当たり。悪循環が続いていた。
ちなみに妹は両親に似た柔らかいピンクブロンドの髪で、父譲りの美しい金の瞳だった。
母方の祖父に似て真っ赤な髪に、父方の祖母に似た真っ赤な目という隔世遺伝のわたくしでも滅茶苦茶可愛がった両親には、自分たちに似た妹はわたくしより可愛くて仕方がなかったという事情もある。
お父様とお母様に疎まれ始めたわたくしを、家に仕える者たちも嫌煙し始め、四歳にして孤立し、そのまま七歳まで成長したわたくしに向き合ってくれたのが七歳児と六歳児ということは、全く持って遺憾である。
わたくしが構われなくなったのは四年前、つまり妹が生まれてからずっとである。
そんな両親と妹と和解しろと二人は言ってきたのだが、
「無理に決まってるでしょ。そんなこと。」
わたくしはさっさと諦めた。
この時にはもう、わたくしは両親の愛情に期待していなかったし、わたくしの事を解ってくれる二人がいるからもういいや、と思っていた。
なお、わたくしが我儘を言わなくなったことで、二人とわたくしの従者たちの評価がひそかに上昇を続けていたことには、両親もわたくしたちも気付いていなかった。
両親は妹に構える時間が増えてきていると思っても、その原因を知ろうとしなかったし(わたくしの我儘が無くなって、呼び出しと報告書が減った。)
わたくしは何も考えず行動していたし、身の回りの世話は一年前から二人がしていたので、変化に気づいていなかった。
二人は最初から、わたくしの世話をしなければならない二人に家来たちに哀れみからやさしくされていたので、哀れみが尊敬に変わったことが分からなかった。
「ダメですよお嬢様。」
「お屋敷の最高権力者は当主たる旦那様なのです。」
「いつか来る学校に通う時、婚約するときなど、旦那様がすべてお決めになられます。」
「そんなときまでお話をしないわけにはいかないのです。」
「「なら今から仲良くなさっていた方が気が楽ですよ。」」
わたくしは全く乗り気じゃなかった。
かまって欲しくて我儘言い続けた。そして一切かまわれなかった事から、
両親がわたくしを嫌いと幼いながらに気づいていたからだ。
…それにわたくしは、もう両親を尊敬できなくなっていた。
理由は単純。
子供可愛さで教育放棄、それが両親がしたことだったからだ。
親は子供に善悪を教えなければならない。しかしお父様とお母様は、その当然のことを一切しなかった。
そのせいでわたくしは自分勝手に育ち、そう育てた尻拭いをセヤとセフィドに押し付けた。
二人はわたくしにしていい事、悪い事を教え、知らなければいけない知識を教え、やらなければいけない事を教えた。
どちらが尊敬できるかは、言うまでもないだろう。
もう、顔を合わせても世間話すらしていない。義務的なことだけ。妹に至っては会ってもいない。
両親と親として接するつもりもない。
‥‥‥のだが…。
「旦那様と奥様、妹様の情報は僕たちが調べてきますから!」
「いつまでもこの不遇な対応をお嬢様に享受させる訳にはいかないのです!」
「そもそもこの家の継承者は書類上、長子のお嬢様です。だって男児がいませんから。なのに次期当主としての教育どころか、ちゃんとした教育すらないなんておかしいですよ。」
「もっと怒っていいのですよお嬢様。私たちみたいに変なところもなかったのに、自分たちが甘やかしすぎたことを棚に上げて見限られたのですから。」
やる気満々な二人。
わたくしは冷や汗をかく。いつぞやのピクニックと同じような展開になりそうだぞ。
でも今回はピクニックの時とは場合が違う。
四年間でバキバキに壊れた親子の情は簡単に取り戻せるものではない。
「別にいいわ。わたくしは家を継ごうとも思っていなくてよ。」
これは垣根無しの本心だ。
わたくしの教育は二人が行っているが、それをやりながら、無駄にした七年間は長いと気づいていた。
貴族がある意味も自分ではちゃんと理解していると思っているが、そんな立派な貴族にわたくしがきちんとなれるかは自信がない。当主なんてなおさらだ。
「「そういうわけにはいきません!」」
だが二人は強い語調で否定する。
「お嬢様、自分の価値をお捨てになるのはおやめください。」
「お嬢様は今、失った七年分の教育をすさまじいスピードでこなされているのです。」
「お嬢様には才能が有ります。それはこの状況を打破するに足りるものです。」
「「解決する方法のある中で、お嬢様の現状を見過ごせれるほど 僕たち/私たち は大人しくないのですよ。」」
この時の二人の眼は熱意に満ち、
わたくしは、わたくしが何もしなくても行動するであろうことを悟った。