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家族仲良し大作戦、第二段階その3


翌日


作戦会議の結果、妹の誕生日プレゼントを買いに行くことになった。

(ちなみに二人は未だ会議中)


初めて来るお屋敷の外を窓から眺める。

自分でも目が輝いている自覚があるほど、興味津々だった。


「落ち着きなさいな、ディーナリズ。」


同行者はお母様だ。二人はいない。なんでも仕込みをするそうで。

『『特別感を演出します!』』らしい。


「でもお母様、気になってしまいますわ。」


わたくしにとっては、流れていく街路樹すら珍しい。

そんな中、落ち着くなんて無理だ。


「これからお店に行くのですから、そこでは礼儀正しくするのですよ。」

「はい、お母様。」


言外に、馬車の中では楽にしていいと言われた。

だがまったくそれに気づかず、お店へ行くことへの緊張で脳内が上書きされてしまった。


「到着いたしました。」


御者席から声が聞こえる。

御者を行っていたのはセヤ曰く先輩なアーバンだ。


「ありがとう。」

「馬車を置いてきますので、先に店に行っておいてください。」

「ええ。早めに戻って来てね。」

「かしこまりました。」


アーバンは去っていった。

彼とは後で合流するとして、店を見る。

おしゃれな店だ。女性受けしそうだ。


「混んでいるんじゃありませんの…?」

「貸し切りよ?」

「え、そうなのですか?」

「当然でしょう?」


???

わたくしとお母様の間には、常識の齟齬があるようだ。

まあ、わたくしの知識源は二人で平民なので、仕方がないかもしれない。


お母様と並んで店に入る。


「「「いらっしゃいませ」」」


入口で店員に頭を下げられる。

初めての店で緊張していたが、家のメイドと同じ感じがしてほっとする。

(のちにセヤとセフィドに言うと『『流石貴族』』と返された。)

緊張が解けたので、自分から進んで話しかける。


「妹の誕生日プレゼントを探しに来たの。なにかおすすめはある?」

「さようですか。ではこちらの商品はいかがでしょうか。」


そうして差し出されたのはジュエリーボックスで、金でできたアクセサリーがたくさん入っていた。


「なぜ金なのかしら。」

「金には“人生を豊か”にするという意味があり、贈り物に人気なんです。」


どうやらジュエリーボックスは“贈り物用”だったようだ。


「あの子の色でもあるし、いいとは思うのだけれど…」


そうつぶやく私の脳裏には、セフィドの『赤が好ましい』という言葉がリピートされていた。


「金と、赤い宝石がついているものはないかしら?」


ジュエリーボックスの中は、金中心の物が多く、嵌っている宝石も小さい物ばかりだ。

セフィドの発言的に、金と赤は最低でも同格の扱いがいいだろう。


「はい。ございます。しかし、あまり種類がありませんので、特注にした方がいいとおもわれます。」

「あら、そうなの。」


特注、と聞きお母様を見上げる。

お母様は


「まあ、そうでしょうね。」


と、当然のように答え、そのまま


「一週間で作れるかしら。デザインも含めて。」

「可能です。デザインの打ち合わせをいたしましょうか。」

「ええ。後、この子の意見を何よりも優先して頂戴。」

「かしこまりました。」


あれよこれよと話を進める。

そのままお母様に手をひかれ、奥の個室に連れていかれる。

机の上にはいつの間に準備したのか、大量のデザイン案が並べられていた。

…といっても、何を基準に選べばいいか、全く分からない。


「…いったいどれがいいんですの?」


思わず店員に聞きます。

店員は


「お嬢様がお好きな物をお選びください。」


お母様の『わたくしの意見が最優先』が聞いているのか、明確な回答を華麗に回避する。

わたくしとお母様だと、お母様の方がもちろんだが優先される。


仕方がないので、様々なデザイン案に片っ端から目を通す。

取り合えず保留と却下に仕分け、

四分の一ほどになったデザイン案を机上いっぱいに広げてうんうんと唸る。


わたくしが好きな物…お菓子・花・おしゃれ・セヤ・セフィド

妹のこと言えないぐらい、わたくしも女の子らしいことに気づく。

だけどそれは、趣味が合うことの裏返しではないだろうか。

と勝手に解釈しつつ、デザイン案をまた半分減らす。


これを繰り返し、最終的に二つに絞った。

薔薇に留まる小鳥の図案と、蝶と新緑の図案。


この二つを選んだ理由は、わたくしが薔薇と蝶が好きだから。

他にも薔薇や蝶が入った物はあったが、花だけ、動物だけだとすっきりしない気がしてやめた。


「では、こちらにしますわ。」


悩みぬいた結果、選んだのは薔薇と小鳥の図案だった。

もう完全に直感である。

(二人の名前もうまくいったんだから!)

と思い込むことで悩みを断ち切った形となった。


「かしこまりました。では、出来上がり次第届けさせていただきます。」

「ちゃんと包みなさいよ。」

「はい。」


やっとデザインが終わった。

体感では長時間集中していた気がするが、実際は何分経ったのだろうかと思いつつ、お母様のもとに移動する。


「あら、終わったのねディーナリズ。」

「はい。お母様。お母様はどうですか?」

「ごめんなさいけど、もう少し待って頂戴。」

「では、店内を見て回っておりますね。」

「ええ。気に入ったものがあったら買ってもいいわ。」

「ありがとうございます。」


お母様はまだ選び途中だった。

手元にあった見本のアクセサリーが銀中心だったのを見るに、わたくしのプレゼントと被らないようにしてくれたのだろう。

お母様にわたくしの図案が運ばれているのも、アクセサリーの種類を変えるためだろう。

ちなみにわたくしが選んだのはブローチだ。

お母様もブローチを選んでいたのかは分からないが。

「じゃあ、わたくしのは髪飾りでお願い。」と言っているのが聞こえる。


暇なわたくしは、指輪や腕輪を眺め、

セヤやセフィドに似合いそうな物がないかと探す。


こういう時は、髪や瞳の色で選ぶと聞くが、二人の髪の色は純黒、白銀、またその間の色のグラデーション。

水晶などならあるだろうが、地味になってしまうかもしれない。…となると、必然的に瞳の色となる。


瞳は、セヤはくすんだ赤、セフィドはくすんだ青。


…どちらにしても色味に欠ける。

せめてはっきりとした赤と青ならよかったものを。

仕方がないから色は全く別にして、髪紐でもつけようか。

二回目のピクニックの要望で『髪を伸ばして』と言ってから、二人の髪は徐々に伸びてきているから、逆に髪紐主体にしてしまってもいいかもしれない。


だがどちらにしろ、ここは宝石店だ。

宝石を何にするか決めなければ注文も改造もできない。

こうなったら、宝石の意味で決めることにしよう。


「もし、そこの店員、ちょっとよろしくて?」

「はい。いかがいたしましたか?」

「宝石の意味が載っている本などはありませんの?」

「ございます。少々お待ちください。」


受付の奥に店員が消える。

さあ、お母様が決め終わる前に、わたくしも選びきらなくては。



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