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九十九 学生、パーティーに誘われる

「容疑者二人の内、一人は消え、一人は逃走。森の中で途中脱ぎ捨てたものと思われるマントが見つかるも、犯人の特定及び追跡には繋がらなかった。

 こんな散々な結果でも、王様は事件が解決したと周囲にアピールしたかったんだろうね。アテネ姉様にドラゴンゾンビを討伐した褒美を与えるそうだよ。いや、まさに結果オーライってやつだね。今回の件で継承順位が下位の人間は皆アテネ姉様にすり寄って、二位の兄弟も継承レースから降りるという発言をした。これはもう、姉上がバルカン家の次の当主に確定と言っていいだろう。ルシウス君の情報、本当に役に立ったよ。

 ───────いや、それにしても、逃げたマントの人物は一体誰だったんだろうね。君の目撃証言とぴったり一致していたし、あの人物がテロを計画していたとみて間違いないだろう。しかし、まさか同じ組織の人間による密告という線は考えづらいしなあ」

 お前は俺だって知ってるだろ!

 食堂で朝食を共にしているスルビヤに怒りをぶつけそうになったが、俺は大声を出す前に息をわざとらしく呑み込んだ。

 本来の計画としては、俺がドラゴンの死骸を見付けて地上に戻ってからアテネ達に発見され逃走。地下からドラゴンの死骸が見つかる、という計画であったのだ。まさかマクマホン本人と遭遇する羽目になるとは。

「その犯人、まだ見つかってないのか?」

「ああ。追跡魔法を使える衛兵の捜索隊が残されたマントの魔力から常に警戒しているが、一度も、王城のそばにすら現れていないそうだよ」

 マクマホンは今回の件で王族との関係が切れてしまったのか? それとも、魔力を隠蔽するような手段を用いて王城に入り込んでいるのか。いずれにしても、やつを追跡する方法はないのだ。

 どうしたもんかと思っていると、突然スルビヤが立ち上がった。恭しく礼をしたので、これは何事かと頭を捻れば、そこには第三王子のスコット・デューク・カレドニア・アルビオンがいた。

 俺も急いで立ち上がって王子に頭を下げる。

「そうかしこまるな。ここでは同じ学生の身だ」

 俺様王子にしては随分のまともなことを言い出した。もしかしてあれはヘレナの前限定のキャラだったりするのか?

「「失礼します」」

 俺達が礼を解くと、王子はスルビヤに話しかける。

「今回はエラダ伯爵の活躍で王家の一大事を無事乗り越えることが出来た。礼を言う」

「もったいなきお言葉。恐悦至極に存じます」

「グリス伯爵の体調が芳しくないと聞いている。その様な一大事にも関わらず、王家の危機を察知して領地から王都へと足を運んだその忠義。実に感銘を受けた」

「例えその命が尽きようとも王家に忠誠を尽くせと亡き父が良く申しておりました。母の残り僅かな人生にも、親の教えを忠実に果たす跡取りがいるとなれば、喜びが満ち溢れておりましょう」

「お前達程尽くしてくれる家があるとなれば、我らもますます国の為に最善を尽くさねばという気にさせられるな」

 ははは、と笑った後、王子は俺の方を向いた。

「名前は?」

「・・・・・・ルシウス・イタロスです」

「ルシウス。お前は最良の友人を持った。生涯誇っていいぞ」

 スコットは俺の肩を叩いた後、そのままどこかに行ってしまった。なんか意味深な会話を繰り広げていたなあと他人事のように思っていると、横でスルビヤがにやにやと笑っていた。

「あーあ、目ぇ付けられちゃった」

「今ので? それは無いだろ」

「そうだといいけどねえ」

 こいつムカつく。

 俺は机の上に残っていた料理をさっさと口の中に掻き込むと、「ごちそうさま」と言ってスルビヤを置いて食堂を出た。

 スルビヤも急いで俺の後を追いかけてきたが、俺は彼が早歩きで廊下を進んだ



 期末試験が終われば、直ぐに夏休みがやってくる。魔法学園で初めての夏休みを迎えるアンドレ・ロマは心から嬉しそうにはしゃいでおり、一緒に居たスルビヤにいじられていた。そんな彼らとは対照的に、王城に侵入という腹痛しか起きないイベントを前にした俺は、夏休みよ来るな、という気持ちでいた。

 期末試験期間の最終日、学校が開くパーティーにてイズミル・テュルキイェはスコットと接触を図る。つまりその間はイズミルの部屋が確実に空いているということを意味するのだ。

 だがもし潜入するということになれば、俺はパーティーに参加できないということになるが、俺はそもそも参加しようとは思っていなかった。

 しかし、俺の目の前にいる人間は、参加するか否かについて真剣に頭を悩ませていた。偶然昼食を共にすることになった、ユークレイン・バロン・クリムである。

「参加すればいいのでは?」

「で、でも、ウラルとだぞ」

「嫌なの?」

「嫌、いや、いや~、嫌ってわけじゃないが」

 恋すると、人間は皆、ポンコツに。ルシウス心の俳句。

「ルシウスは参加しないんだろ?」

「行っても一人でぼおっとしているだけだしなあ」

「君が女性と一緒に参加してくれれば俺も」

「なに人のせいにしてるんだか。さて、気張った気張った」

 俺がユークレインに発破をかけるも、彼は動けずにいた。こういうのは、本人のやる気がないと上手くはいかないのだ。

「早くしないと、ウラルから誘われちゃうよ」

「わかってるよ」

 こいつは長引くねえ。

 俺が哀れむような眼でユークレインを眺めていると、ウラル・ラッスィーヤが俺達がいる方に近付いてきた。

 俺は悩むユークレインの許を彼に気付かれないように離れた。後は若い二人に任せればいいだろう。

 俺は俺の方で、王城への潜入方法を考えなければ。

 そう思いながら食堂を出ると、見知らぬ声に呼び止められた。

「ルシウスさん」

 振り返ると、やはり見たことがない少女だった。

「はい」

 一体何ごとだろう、と少女の言葉を待っていると、彼女の口から予想外の言葉が漏れた。

「私と一緒に、今夜のパーティーに出てもらえませんか?」

 ・・・・・・これは、何事ですかい。

 俺は目を瞬かせながら、この子とどこかであったっけ、と必死の記憶を探ってみた。前世まで遡り、前世では女性と縁もゆかりもないことを思い出して悲しくなった。



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