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十二 少年、母親に恋路がばれる

サブタイトル変更しました。2020/4/7

 シラクサと海へ行った帰り、家に入るとマリアは真剣な面持ちで俺の前に立ちはだかった。毎日のように飲んでいた薬草の効果が出たのか、彼女の体調は回復の方向へと向かっていた。

 マリアの言いたいことはわかっている。何の為にジブリールを呼び出したのかを、その理由を知りたいのだ。彼女は命の危険への対処の為に俺にジブリールを渡したから、俺が何か命の危機に瀕するような行いをしてしまったとアリアは考えているに違いない。

「もうわかっていると思いますが、ルシウスさん。今日、貴方は何のためにジブリールを呼び出したのですか?」

 やっぱり!

 顔の正面から張り手をもろに喰らったような気分になった。やましい気持ちはある。彼女の心配する心を利用したからだ。でも、本当のことを言えば、きっとマリアは許してくれるだろう。だが、それでも、自分の母親に己の恋路を語るという行為は、とてもじゃないが気持ちの整理が付けられそうにないのだ。

「お願いです。ルシウスさん。本当のことを言ってください。森の奥で何かあったのでしょう。貴方がいつも持ってきてくれる薬草は、この辺りには咲いていないものだと聞きました。本当は、何か危険なことに巻き込まれているのではないですか?」

 マリアの気持ちは、完全に心配だけで出来ていた。くそっ。言うのか俺は。言ってしまうのか。前世ですらも言ったことがないぞ。いや、まあ、それは年齢=恋人いない歴だったし、というかそもそも初恋が転生してからだし。いや、でもこれは、その、辛い。

 例えばこれが何かの犯罪に巻き込まれているのだとしたら、きっと彼女は全力をもって俺を助けようとするだろう。マリアの心配とは、俺の力で解決できる問題なのかどうかが知りたいという気持ちなのだ。

 だからこそ、言えない。かと言って、マリアに嘘をつきたくない。どうすれば、どうすればいいんだ俺は。

 その時、一つの考えが天啓のように浮かんできた。これが、閃きというやつか。まさに、電気が脳内を駆け巡る感覚だ。いける。これならいけるぞ!

「実は、森の奥で海を一度も見たことがない人に会って、どうしてもその人に海を見せてあげたくて、ジブリールの力を借りてしまったんだ。・・・・・・ごめんなさい」

 マリアの前で嘘は無力。ならば真実で! 真実のみでごまかして見せる!

「・・・・・・その人は、女の子ですか」

 馬鹿な!

 男性とか大人とか他にも選択肢があっただろ! 何でそうもピンポイントに訊いてこられるんだよ。超能力? ねえ超能力だよね? 俺の心読んでんでしょ?

「うん。きれいな女の子だったよ」

 ふ。俺はわかっているぞ。どうせこの後、「かわいかったですか?」とか訊いてくるんだろうなあ。残念! 予想済みでした! 先に質問をつぶせばこれ以上変に勘繰られることも無いだろう。

「そうですか、きれいな子でしたか。・・・・・・もしかして坊ちゃん、その子のことが好きになってしまいましたか?」

 完全に墓穴を掘ってしまいました。

 駄目だ。俺は冷静じゃなくなっている。ちくしょう。もはや打つ手がない。ちくしょう。ちくしょう。

「うん。はなしていて、とってもたのしかった。きっと、エイブたちとか、ほかのまちのこどもでも、なかよくなれるとおもったよ」

 小学生の読書感想文の様な内容を棒読みしてしまった。だがナイス俺! 無意識の内にラブとライクの区別が出来ていないがきんちょを演じることが出来ているぞ。おし。このまま押し切るんだ。押し切れるぞ俺!

「そう、何ですか。みんなに教えたいほど好きになってしまいましたか。その、その子とどこまで進みましたか?」

「───────は?」

「いえ、そのキッスをしたのかどうか、ということです」

「・・・・・・してないよ」

「そうなんですね。おめでとうございます」

 マリアは顔を真っ赤にして、自分の部屋にこもってしまった。やはり、マリアに嘘は通用しなかった。俺は恥ずかしさの余り、その日一日眠ることが出来なかった。


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