-はじまりの日(2)-
胸の辺りがザワザワがするのがデビットからだと気付いていたセリスだが、デビットはいたって普段と変わらぬ優しい微笑みをしていた。
「セリスは具合い悪いみたいだからフリージアおばさんの所には私達だけで行くよ」
そう、リラがセリスに語りかけたがセリスは頑なに行くと答えた。
「お前何言ってんだよ!そんな顔真っ青にして逆にフリージアおばさんが心配するだろ!」
頑なに行くと言ったセリスにアゼルが怒った。
怒りながらでもセリスを心配してるの伝わってくる。
その様子をセリスの横に居た両親もアゼルの言う通りだと言い、セリスだけフリージアの見舞いに行く事を両親が禁じた。
このザワザワをどう伝える事が出来るのか…セリスは悔しい気持ちになっていると後ろからフリッツ司祭の声が聴こえてきた。
「さあ、もうそろそろミサの時間だ」
その言葉を聴いたまだ立ったままだったアゼル達が焦って座り静まりかえるとミサがはじまった。
◇ ◇ ◇
ミサが終わると、両親がセリスの手を繋ぎアゼル達に別れを告げ帰宅した。
母のマーガレットがセリスをベッドに連れていき寝かせて額に手を当てると「少し熱っぽいわね…。今日はもう休みなさい」と告げセリスの部屋を一旦出ていった。
ザワザワして気持ちが悪い…でもそれが体調が悪いからでは無い事を自分は知っているのに上手く説明出来ない自分にセリスは苛立ちを感じていた。
ガチャっとドアが開くと母のマーガレットが水を入れた洗面器を持ってきて机の上に置き、同じく持ってきていたタオルを洗面器の水に浸して搾るとセリスの額の上に乗せた。
「少し熱もあるみたいだから…」と言いかけたマーガレットがゴホゴホと咳をした。
「お母さん…!」
セリスは心配し起きようとしたが片手で押さえ付けられ大丈夫だからとマーガレットは言った。
「ごめんね…私の身体が丈夫だったら。お前まで…」
マーガレットは身体弱い…それはマーガレット自身が1番理解している。
「お母さんのせいじゃないよ…っ」
セリスが軽い風邪等を引くと母のせいでは無いと告げても自分のせいだと責めてしまう母をずっと見てきた…。
「うちにお金があればお前の母親の…マーガレットの手術も出来るのに…」と嘆く父ブルーノの言葉が忘れられない。
母が居ない時に「お前が居なければ…マーガレットの治療代だって…」と何度言われただろうか…。
父であるブルーノは母のマーガレットをとても愛していた、そして息子である自分を憎んでいるのも幼い頃には何となくではあったが気付いていた。
そして、いつの頃からかは忘れたがマーガレットが出かけて居ない時に父のブルーノが簡単には見えない所に暴力をふってくるようになった事だ…セリスにはそれがとても辛かった…。
妻であるマーガレットを愛するあまり、やり場の無い怒りを息子である自分に暴力としてぶつけて来る父親。
だが、どんなに酷い事をされようと父親であるブルーノを憎む事が出来ず、そんな父親を哀れにすら思った。
母であるマーガレットは優しい。自分が父ブルーノから暴力をふるわれている事を母マーガレットが知ったら、嘆き悲しみ父親であるブルーノを憎み一生許さないであろう事も理解している…。
だから言えないのだ、両親は仲が良い…お互いを想いあってまわりからもおしどり夫婦だと言われるぐらいに…。
「お前さえ…居なければ…」
この言葉が胸を抉る。
可哀相な母…可哀相な父…。
自分さえ我慢したら…と必死に堪えて来たのだった。




