アガメムノン
テュエステスがミケナイ王になったという知らせを聞いたアトレウスの息子アガメムノンは、
スパルタ王デュンダレオスの力を借りるためスパルタへやってきた。
アガメムノン:「もうすでに聞き及んでいると思いますが、父アトレウスは殺され、叔父のテュエステスにミケナイを乗っ取られてしまいました。どうかデュンダレオス殿のお力をお借りしたい」
デュンダレオス:「聞けば、黄金の子羊を持っていたのはテュエステスだというではないか」
アガメムノン:「いいえ、違います。黄金の子羊は我が父アトレウスが女神アルテミスから賜ったものです。それが叔父テュエステスに奪われたのです」
アガメムノンは、母アエロペが叔父テュエステスと通じていたことは知らなかった。
アガメムノン:「これまで父アトレウスは20年以上も安定して国を治めてきました。その実績こそが真の王である証です」
デュンダレオス:「確かに、アトレウス殿はしっかりミケナイを治めていたな」
アガメムノン:「叔父のテュエステスが、王を宣言しても国はまとまっておりません」
アガメムノンの言葉には一理あった。
スパルタ王デュンダレオスは思った。ここでアガメムノンに恩を売っておくのも悪くはない。
それに、国がまとまっていない今なら、ミケナイを制圧するのも簡単だろう。
まして、息子であるアガメムノンが親の敵討ちをするのだ、士気も高いだろう。
こうして、スパルタ王デュンダレオスの力を借りたアガメムノンは易々と、
叔父テュエステスを倒しミケナイ王となった。
しかし、スパルタ王の力を借りての奪還は、スパルタ王の力を誇示する役にはたったが、
アガメムノン自身の力を示すものにはならなかった。
そこでアガメムノンは、スパルタ王デュンダレオスの強固な後ろ楯をえるため一計を案じる。
デュンダレオスの娘との結婚だ。
デュンダレオスには2人の娘がいた。クリュタイムネストラとヘレネだ。
ヘレネは絶世の美女と知られ、15才の時にテセウスにさらわれ、多くのライバルもいる。
もう一人のクリュタイムネストラも美しい女性だったが、すでに結婚していた。
普通ならどうにもならない状態だが、アガメムノンは違った。
クリュタイムネストラの夫を事故に見せかけ殺害し、傷心しているクリュタイムネストラに近づき、
まんまと結婚したのだ。
こうして、アガメムノンはミケナイ王の座と、スパルタとの血縁関係を手にいれた。




