パリスとヘレネ
パリスは成人し美しい青年になっていた。
パリスと兄のヘクトルは、父でトロイア王のプリアモスの代理として、
長く続いたスパルタとの和平交渉に赴いていた。
スパルタ王メネラオスは、勇敢で公正な戦士で、
多くの求婚者の中から、絶世の美女ヘレネを勝ち取った男でした。
女王ヘレネがお忍びで町を散策していたとき、偶然パリスと出会い、
女神アフロディーテの導きにより、二人は引かれ合い恋に落ちてしまいます。
二人が一夜を過ごしたあと、パリスが呟いた。
パリス:「もっとも美しい女性を与えるか・・・」
アフロディーテがパリスに約束した言葉だった。
ヘレネ:「えっ?」
パリス:「ううん、なんでもない」
ヘレネ:「わたし、もう戻らないと・・・」
ヘレネは夫であるスパルタ王のもとへ帰っていく。
こうした日々を何日繰り返しただろう。
パリスがトロイアの地へ戻る日が近づいてくる。
最後の夜、別れを惜しむパリスを前に、ヘレネが昔話をはじめる。
ヘレネ:「わたし、昔さらわれたことがあるの、まだ15才くらいのころよ」
パリス:「なんだって!」
心配するパリスにヘレネが言った。
ヘレネ:「大丈夫よ何もなかったわ」
ほっとした顔をするパリス。
ヘレネ:「その人ね・・・わたしをさらった人、お城に潜り込んで見事にわたしをさらって見せたわ」
上目使いのヘレネは、パリスを試そうとしているようだった。
パリス:「僕にもさらってほしいと・・・」
戸惑うパリスは続けて言った。
パリス:「でも、君がここにいるって事は、その人は失敗したんだろ」
ヘレネ:「そ、そうね・・・兄たちが取り戻してくれたわ」
パリス:「で、その人はどうなったの?殺されたの?」
ヘレネは首を振って、少し笑って答えた。
ヘレネ:「ううん、その人は今、アテナイの王をしているわ」
パリス:「ア、アテナイの王って・・・・テセウス?」
テセウスは、かつてヘラクレスと一緒にミノタウロスを倒したアテナイの英雄だった。