パリスの審判
不和の女神エリス:「うまくいきましたわね、ゼウス様」
ゼウス:「そうだな、これで大きな戦争が始まるな」
天界での不穏な空気をよそに、トロイアに駆け付けたヘーシオネ姫、そのあとを追いかける旦那のテラモン
トロイア城についたヘーシオネ姫は、弟のプリアモスに問いかける。
ヘーシオネ:「天界でパリスという羊飼いのビジョンをみたわ。それがアレクサンドロスと同じ背中にアザがあるの。」
プリアモス:「アレクサンドロスが生きていると!」
深刻な表情のプリアモス。
プリアモス:「神託によれば、アレクサンドロスはトロイアを滅ぼすと・・・」
プリアモスは部下にアレクサンドロスを殺すように命じていたのだ。
プリアモスが考えあぐねていると、長男のヘクトールが進言してきた。
ヘクトール:「父上、もしそのパリスという少年がアレクサンドロスなら引き取りましょう」
プリアモス:「そんなことをすれば、トロイアは滅ぶぞ」
ヘクトール:「そんなことは私がさせません。例え神託といえど結果は変わる場合もあります」
プリアモス:「お前は、優しく勇敢な戦士だな。いずれ立派な王になろう」
ヘーシオネ:「そうよ。それにトロイアは一度ヘラクレスによって滅んだわ。もうその神託は無効かもしれない」
トロイア王家は、パリスを迎え入れる流れになった。
テラモン:「あーあ、次は王子さま探しかぁ」
トロイアに着いたばかりのテラモンは、すぐさまアレクサンンドロスが捨てられたというイデ山に向かうことになって不満そうだった。
プリアモスの部下が幼い王子を殺すことをためらい、イデ山に捨て、それを羊飼いが拾いパリスとして育てられていたのだ。
テラモンがイデ山にたどり着いたころ、パリスは女神たちの誘惑をうけていた。
3人の女神を前にパリスは言った。
パリス:「僕は、女神様が美しいことはわかりますが、だれが一番美しいかはわかりません」
子供のパリスには、大人の女性の魅力はよくわからなかった。
ヘラ:「もし、私をもっとも美しい女神に選んでくれたら、あなたをこの地の王にしてあげるわ。」
パリス:「ぼくは、羊飼いのままでも十分幸せです。」
ヘラ:「もう、おバカちゃんね。王よ、この地で一番偉くなれるのよ!」
パリス:「う~ん・・・」
パリスが考え込んでいると、アテナが割り込んできた。
アテナ:「もし私を選んでくれたら、すべての戦いに勝利をあたえれあげるわ」
パリス:「ぼくは戦いに興味はありません」
アテナ:「なにをいってるの?男の子なら、みんな誰でも一度は最強を夢見るものでしょ!」
アテナは最強がいかに素晴らしいか、パリスに説きはじめた。
パリスの辛そうな表情をみかねたアフロディーテが入ってきた。
アフロディーテ:「もし私を選んでくれたら、もっとも美しい女性を与えるわ」
パリスは目をキラキラさせていた。
パリス:「ぼく、このおばちゃんにする!」
アフロディーテ:「・・・お・・お・おばちゃん・・・」
ヘラとアテナは大笑いしていた。
アフロディーテは、頭をクラクラさせながら天界へ帰っていった。
アテナ:「ナヨナヨした、女みたいな子ね、フン」と鼻息をならした。
ヘラ:「あんな子に決められても・・・もうどうでもいいわ」といって肩をすくめながら立ち去った。
テラモン:「さて、こわいおばちゃん達は、もう帰ったかな」
そういって、パリスの前に現れたテラモンは、パリスを連れてトロイアへ向かった。
パリス:「おじちゃん、誰?」
テラモンはすぐさまパリスに拳骨をくらわせた。