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剣と魔法のこの世界で  作者: 寳凪 洋
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第6話 勇者と一騎打ち

聖印を得るため、騎士王 アーサーとの一騎打ちに挑むことになったタケル。

無事聖印を得ることはできるのか。


桜花を構えたところで、白髪の男が俺とアーサー王の間に割って入ってきた。


「オルメカか…」

「王よ、この試合、私、ヤマト国騎士団長 オルメカが立ち会わせていただきます」

「よろしいですな?」


バツが悪そうに頭を掻くアーサー王であったが、しぶしぶそれを了承した。


「タケル殿も…」

「はい、よろしくお願いします」


オルメカさんは、ゆっくりと頷くと、少し離れたところに移動した。


「では、始めてください」


オルメカさんの合図とともに、桜花の特性である、『集中(チャージ)』での一撃を狙い素早くアーサー王の懐へと飛び込む。

しかし、アーサー王は剣を構えたまま、その場所から一切動かない。

魔人の腕を落とすほどの威力を秘めているのが、分からないのか。

怪訝に感じながらも、桜花を振り下ろす。


「避けるまでもない」


アーサー王はその場から動くことなく、桜花を持っていた剣で受け止める。

剣ごと叩きおろうと、力を込めるが、桜花に込めていた魔力が消えてしまっていた。


「なっ!?」

「いっただろう、避けるまでもないないと」


そのまま、アーサー王に蹴り飛ばされしまい、地面に倒れこむ。

蹴りをまともにくらってしまった。

素早く体制を立て直そうとするも足に力が入らない。


「ただの蹴りなのにどんだけだよ…」


それでも、なんとか立ち上がり、桜花を構える。


「よしよし、初手で終わってしまっては味気がないからな」


アーサー王は満足そうに、頷いている。

余裕かましやがってと腹の底から煮え繰り返るような気持ちであったが、

ぐっとこらえる。

実力の差は初手の攻防で、はっきりしていた。

アーサー王は相当な実力者だ。

今の俺の実力では万に一つの勝機もないが、冷静さを欠いては、その万に一つの勝機を取りこぼしてしまう。

父さんの教えだ。


「やれることをやってみようか…!」


人事を尽くして天命を待つ。

俺は、アーサー王に剣術での勝負を挑む。


剣撃の応酬。

こちらの攻撃はうまくいなされてしまう。

しかも、アーサー王の攻撃はなんとか受けきれているものの一撃一撃がとてつもなく思い。


「ふむ、剣術の方はなかなかいいぞ」

「剣は誰に教わった?」


俺の連続攻撃を剣で受け止める、いなしながら問いかけてくる。


「父親です!」


距離をとりながら答える。


「くっそ、全然歯が立たない!」


アーサー王との力の差を痛感し、唇を噛む。

だが、今の攻防で収穫もあった。


「桜花に込めていた魔力を無効化したのは、あなたのその剣、心器の特性ですね?」


「ほう!よく気がついたな!」


アーサー王がニヤリと笑う。


「さっきの攻防の時に、少しだけ魔力を桜花に込めていたんです」

「その長剣に受け止められた時に、魔力が消えていた」

「それで気付いたんです」


目が覚めてから神子の社を出発するまでの3日で、トモエさに魔力操作の基礎を教えてもらったのが生きた。

桜花の特性『集中(チャージ)』は無尽蔵に魔力を取り込んでしまう。

魔力操作が行えないと、魔人ロキとの戦闘の時のように一撃放っただけで魔力切れになる。


「あの応酬の中で、そのような器用なことができるとはな」


長剣を天に掲げる。


「我が心器『エクスカリバー』の特性は『無効化(キャンセラー)』」

「エクスカリバーが触れたあらゆる魔法、魔力を無効化させる!」


やっかいすんぎんだろう、それ。

アーサー王には魔法や、魔力による攻撃は効かないと宣言しているようなもんだ。

剣術でも負けている現状において、万に一つの勝ちの目はない。

アーサー王の表情がそれを訴えてきているように思えた。


「戦闘中だぞ!」


ハッと前を向くと、アーサー王が目の前に迫っていた。

体を捻り回避行動をとるが、間に合わず、エクスカリバーの一撃をくらってしまう。


「ぐあああああ!」


いっっってえ。

躊躇なく斬ってきた。


「タケル、お前が踏み出そうとしている道は、命のやり取りを強いられる道だ」

「相手の命を奪わなければ、自分が死んでまう」


アーサー王は剣を納め、ゆっくりと歩いてくる。

膝をつく俺に向かって問いかけてくる。


「お前に、その覚悟はあるのか?」


その、言葉に頭をガツンと殴られたようにめまいがした。


「突如としてこの世界に召喚され、訳も分からぬまま、異世界の平和のため命を賭すことを強要される」

「理不尽と思わないか!?」

「どうして何の関係もないこの世界の住人のために命を賭けなければならないのか、と思わないか!?」


その言葉に俺は、何も言い返せず俯いてしまう。

そんな俺にアーサー王は予想だにしない言葉を続けてくる。


「俺なら、お前を元いた世界に戻してやれるぞ」


ドクンと心臓が脈打つのが分かった。

元いた世界に…帰れる…?


「神子の『勇者召喚』は、異世界の住人と魔力による縁を結び、こちらに召喚する魔法」

「結んだ縁の糸により、異世界人をこちらに引き止めておけるのだ」

「しかし、縁の糸が魔力である以上、俺のエクスカリバーで無効化できる」

「そうすれば、晴れて自由の身って訳だ」

「諦めれば、すぐにでも縁を切ってやろう」


「「アーサー王!!」」

ユウとトモエさんが同時に抗議する。


「ユウ、トモエ、お前たちは黙っていろ!」

「さあ、勇者殿どうする?」


本当に元いた世界に帰れるのか。

真偽は分からない。

もしかすると、アーサー王が俺を試すためにでたらめを言っている可能性はある。

しかし、そのでたらめに心が大きく揺れ動いていたのだった。

トモエさんの方を見る。


悲しそうな、今にも涙が溢れてきそうな、そんな表情だった。

その表情から、アーサー王の話があながちでたらめを言っているわけではないということがすぐに分かった。


でも、ああ、だけど。

俺は、トモエさんの笑った顔が好きなんだ。

だから、どうか、どうかそんな顔をしないでほしい。


「アーサー王、そのお話、受けるわけにはまいりません」


「ならば、見ず知らずの異世界人のために、命を賭け、また、命を奪うというのか」


「いいえ、違います」


「なに…?」


俺はゆっくりと立ち上がり、アーサー王を見据える。


「確かにいきなり呼ばれて、世界を救えだなんて理不尽にもほどがあると思います」

「最初は意味が全く分からなくて只々混乱しただけでした」

「でも!」

「そんな俺のために、命を賭けてくれた人達がいました」

「世界を救うだとか、そんなたいそれた事はできるかどうか分かりません」

「命を奪う覚悟も、自分が死ぬ覚悟も今はありません」


「だけど、俺に力があるのなら、そんな人達の願いのために、少しでも力になりたい!」

「俺はこの世界で出会った人々のために戦いたい!」


これが、答えになっているかは分からない。

だけど、今の俺が思う率直な気持ちだ。


アーサー王は厳しい表情のまま、こちらへ歩いてくる。

すると、肩に手を乗せて、表情を崩し言った。


「合格だ」

「お前の覚悟しかと受けとめた」

「世界を救う旅に、タケル、お前自身の意思があるかどうか、それを確かめたかった」


「じゃあ…!」


「そなたに、聖印を授けよう」




















第6話いかがでしょうか?

相変わらず戦闘描写は難しい泣


次回は明日16日投稿予定です。


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