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剣と魔法のこの世界で  作者: 寳凪 洋
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第4話 勇者と旅立ち

謎の力に覚醒し、魔人を追い返すことに成功したタケル。

そして、神子・トモエから力の正体と、勇者の旅の目的が語られる。

目を覚ますと見知らぬ部屋だった。


「ここは?」


えっと、あの鎧の男に殺されそうになって…。

それで…。


「そうだ!ユウは?トモエさんは?」


ベッドから飛び起きる。

とそれと同時に、扉が開き、その2人が入ってきた。


「タケル様!」

「タケル!気が付いたんだな!」

「ユウ!トモエさん!無事だったんだね」


硬く握手を交わし、互いの無事を喜んだ。

そして、トモエさんは、お医者様を呼んで来ますとでていった。


「にしても、随分お寝坊さんだったな」

「一週間も寝てたんだぜ、お前」

「一週間!?」


そんなに、寝てたのか…。


「あの鎧の男は?」

「覚えていないのか!?」


少し驚いたように、ユウが言う。


「お前が追い返したんだろう?」

「そこの、武器使ってさ」


ユウがベットの横に立てかけてあった、刀をみる。


「これって…」

「そうだ、いきなり右手に出てきたこの刀で…」


これは一体なんなんだろう。

普通の刀でないことだけはたしかだ。


「それは、タケル様から生み出された『心器』です」


そんなことを考えていると、

トモエさんと白衣を着た男が入って来た。


「これが、『心器』…?」


「それについては、後でご説明します」

「まずは、診察を」

「こちら、Dr.ドクです」

「ヤマト国 お抱えの医者です」


Dr.ドクと紹介された細身で長身の男が一歩前にでる。


「初めまして、勇者殿」

「さっそく診させていただきますね」


聴診器を当てたり、軽い問診を2、3行い、ふむふむと頷く。


「特に問題はなさそうだね」


「本当ですか?ドク」

嬉しそうな表情をトモエさんは浮かべた。


「ただ、うん、実に興味深い」


しげしげと俺を見つめるドク。


「えっと、なんですか?」


その視線に耐えきれず、嫌悪感をつい表に出してしまう。


「ああ、すまない」

「『心器』は修練に修練をかなさねた選ばしものだけが、手にできる特別な力だ」

「勇者殿は、それをこちらに来てから一晩でそれを覚醒させてしまった」

「研究者として、これほど研究意欲をそそられるものはないよ」


とりあえずと、椅子から立つドク。


「体については問題ないよ、一週間も眠っていたのは、心器覚醒の反動だろう」

「2、3日は栄養のあるものをとって、ゆっくりするといい」

「じゃ、僕はこれで」


ドクはそう言うと、記録を書き残し、部屋から出て行った。


入れ替わりに、トモエさんが椅子に座る。


「此度は本当にありがとうございます」

「タケル様がいなければ今頃どうなっていたことか…」


「いえ…俺は何も…」

「気づいたら、全て終わってたそれだけです」

「それよりもトモエさん、この間の続きをお願いできませんか?」


トモエさんは頷き話し始める。


「この世界、インディトラに迫っている脅威については、お話した通りです」

「魔王ディアボロスの封印が解けかかっていて、それを封印しなおすために俺を召喚した」


「ええ」

「このまま放っておけば封印はとかれ、魔王が世界にときはなたれてしまう」

「それだけは、何としても避けなければなりません」


ふうと一息つくとトモエさんは、俺が覚醒させたという刀をちらりと見る。


「ただ、勇者様を召喚したからといって、すぐに封印できる、というわけではないのです」

「結論から申し上げますと、今のタケル様には封印の力はありません」


俺はトモエさんの方をみる。


「それってどういうことですか?」


トモエさんは、更に話を続ける。


「とある『心器』が必要なのです」


俺は今まで1番聞きたかったことをトモエさんに聞く。


「そう、その『心器』とあと『魔法』って一体なんなんですか?」


「順にご説明します」

「『心器』も『魔法』もこの世界に生きとし生けるもの全てに平等に備わっている力です」

「もちろん、その大小はあります」

「一週間前、タケル様が覚醒した力が『心器』」

「『心器』はいわゆる其の者の心の力」

「敵対する者から自分を守るために、自分の心を具現化させたもの」

「つまり、あの刀はタケル様の心の力そのものなのです」


俺はベッドに立てかけていた『心器』をとりじっと見つめる。


「これが、俺の心の力…」


すると、不思議なことに、心器の名前がふと頭に浮かんだ。


「『桜花(おうか)』…?」


「なるほど、それが、タケル様の心器の名前なのですね」


どうして急に?と不思議に思っていたが、

トモエさんはそんな俺に構わず、続ける。


「『心器』には、特別な力が宿っています」

「勝手ながら、タケル様が寝ている間にタケル様の『心器』を解析させていただきました」

「桜花の能力は、『集中(チャージ)』」

「あの男に放った一撃は無意識に能力を発動させていたんでしょう」

「魔力を込めることで、必殺の一撃を撃つ能力のようですね」


「『集中』…」


「話しを続けますね」


「次に『魔法』についてですが、自分の精神を力に変え発動する能力のことです」

「例えば、私の『召喚魔法(サモンマジック)』も『魔法』です」

「精神の力、『魔力』によって自然界の精霊に呼びかける魔法なのです」


じゃあ、と質問する。


「俺にも、魔法は備わっているのですか?」


「ええ」

「ただし、『心器』にしろ『魔法』にしろ、その力を覚醒できるかどうかは分かりません」

「むしろ、覚醒せずにその生を終える者の方が多い、とさえ言われています」


とここで、ユウが口を開く。


「むしろ、なんの修行もしてないのに『心器』を覚醒させた、タケルが特殊すぎるってわけ」

「ユウは、覚醒してないのか?」

「俺どころか、姫ちゃんだって覚醒してねえよ」


トモエさんの方を見るとコクリと頷いた。


「私やユウくんが使っている『心器』はいわゆる複製(レプリカ)と呼ばれているものです」

「一流の鍛冶職人が、覚醒させた所有者の『心器』を借り受け、解析を行い、特殊な鉱石でその能力や形状を再現、させたものをいいます」

「再現しても、能力は半分以下に落ちてしまいますが、魔物と闘うのに『心器』は必要不可欠ですから」


「なるほど」

「『心器』と『魔法』については、なんとなく分かりました」

「ただ、この2つと魔王の封印がどう繋がるのですか?」


ユウがベットの隣にあった脇机に地図を広げた。

見慣れない地形が描かれている。


「これは、このインディトラの世界地図です」

「この世界は、王国のある大陸が4つと、私たちが今いるヤマト国を含めた島4つで構成されています」

「王国のある大陸にそれぞれとある『心器』が4つに分けられ、封印されています」

「実は、その中に勇者様だけがつかえる魔法『封印魔法(シール)』が封じられているといわれています」


ようやく合点がいった。


「つまり、魔王を封印する『魔法』を手に入れるためには、各大陸に封印されている4つにわけられた『心器』を一つにする必要があると」

「でも、そんな大事にものならそれぞれの王国で管理してるんですよね?」

「そうです」

「各王国に依頼して、持ってきて貰えばいいんでは?」


むしろ、そうであってくれと願いを込めて口にして疑問であったが、

早々に、トモエさんに否定されてしまった。


「それは、ダメなのです」

「ヤマトに伝わる古い伝承には、『勇者の力を求めし者。4つの試練に打ち克ち、真の勇者とならん』とあります」

「勇者とその仲間のみが入れるダンジョンの最奥地に封じられていると考えられています」


やっぱり、そうやすやすとはいかないのか。


「なら、善は急げ!ですね」


封印が解けかかっているなら尚更だ。


「はい!」

「タケル様が完調次第、私とユウくんと共に旅でていただきたいのです」


「えっ、トモエさんとユウも一緒に?」


「神子は召喚した勇者様と共に旅立つのが習わしです」

「そして、その護衛として『護人』を2人つけるのです」

「1人はすでに別任務で一足先に旅立っていますので、旅先での合流になります」

「2人目に関しては、タケル様が寝ている間に選抜試合を行い…」


「勝ち残ったのが俺ってわけ!」

どうだと言わんばかりに胸をそらすユウ。


「まっ、相棒の槍『ニーベルング』さえあれば、負けやしねえさ」

「あんときは、修理にだしていたからなあ」


確かに一週間前の戦いとは別の槍を持っている。

たぶん、これがユウの複製(レプリカ)なんだろう。

なんにせよ、ユウが旅に同行してくれのは素直に嬉しい。


「よろしくね、ユウ!」

「おう!」


※※※※※※※※※※※※※※※※※



そして、3日後。

あっというまに旅立ちの朝を迎えた。


「よくお似合いですよ、タケル様」


俺は、用意されていた服を着ていた。


「なんだか、不思議な着心地です」


隣に控えていたミサトさんがいう。


「それはミスリル銀という魔法鉱石を加工し、その糸で縫われた特別な服です」

「防御力を高める魔法が込められており、そこらの鎧よりも防御力は高いですよ」


説明を終えると次に、ユウの方を向き肩に手をおいた。


「ユウ、しっかり神子さまと勇者様をお守りするんだよ」

「分かってるよ」

「姉ちゃん」


ミサトとユウが姉弟だと知ったときは、それはそれはビックリしてベットから飛び上がってしまった。


「ミサト、私が留守の間、社のことは頼みましたよ」

「はっ!」


ミサトさんがトモエさんの方に向き直り、深くこうべをたれる。


「旅の御無事をお祈りいたします」

「どうか、アマテラスの加護がありますよう」


トモエさんは俺とユウの方を向いた。


「では、タケル様、ユウくん参りましょう」


こうして、俺の勇者としての旅は始まった。


行先は決して平坦ではないだろう。

それに、俺にできることなんてしれているのかもしれない。

でも、俺にできることをできる限りやってみようと思う。

それが、『勇者』として選ばれた俺の、最初の責任であると思うから。


旅立ちの日の朝日はやたら眩しくて、そして、胸の鼓動はやたらと早い。


俺は、世界の命運がかかる重要な旅であるにも関わらず、

不謹慎にも、少し、ワクワクしていたのだった。


この剣と魔法の世界でこれから待ち受けているであろう冒険に…。




いかがだったでしょうか。

いよいよ、というかやっとタケルの冒険が始まります。

どんな冒険になるか、タケルと一緒にワクワクできる冒険を、書いていきたいと思います。


もしよろしければ、感想や評価お待ちしています。

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