第2話 勇者と防人の少年
タケルの前に現れた、異形の生物『魔物』。
異世界の地で、この窮地を乗り越えることができるのか。
「なんだよ…これ!」
目の前に立つ異形の生物。
大きさこそ人とあまり変わらないサイズであるが、動物のような体毛、頭には2本の角、そして、人とは明らかに違う大きな筋肉と赤い瞳。
一瞬で理解した。
これが、魔物なんだと。
思わず一歩後ずさる。
と同時にその魔物がこちらに気づいた。
グォォォォ!!
魔物の雄叫び。
体験したことのない恐怖が体を覆う。
逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ。
でなければ…
殺される…
「動け…動けって!!」
だが、俺の足は全く言うことを聞かない。
ただ、ガタガタと震えるだけだった。
一歩、また、一歩と近ずいてくる恐怖。
「勇者様、お下がりください!」
武装した兵士達が俺を追いこし、魔物へ向かってかけていく。
魔物に対し、臆することなく戦いを挑んでいった。
助けがきてくれたという安堵感か、俺はその場にへたりこんだ。
「大丈夫か?」
俺とあまり年が変わらない少年が膝をつき声をかけてきた。
「ユウ、勇者様を安全なところへ!」
魔物へと戦いを挑んでいた兵士たちの一人が少年へ声をかけた。
「了解!!」
「立てれるか?」
ユウと呼ばれた少年が、手を差し出した。
「あ…ありがとうごいます。」
手を借りてなんとか立てることができた。
「よし!そしたら、逃げんぞ!」
こっちだ!
と先に走り出した、少年の後を追って俺も駆け出した。
走りながら、周りをみてみるとあちらこちらで兵士達が魔物と交戦していた。
一体、どれくらいの魔物が襲ってきているのだろうか。
そんな様子をみながら、しばらく走り、止まった。
少年は辺りを確認し、俺の方へと向きなおり、少しほころんだ顔を見せた。
「ふう、ここまでくればひとまず…」
「ケガはねえか?」
「あっ、はい。大丈夫です。」
少年は頷いて、その場に座る。
「座りなよ。とりあえずここまで来とけば安全だからよ。」
促されて少年の横に座る。
ふうと一息つくと、途端、また、膝が震えだした。
恐い。
俺は、本当に異世界にきたんだ。
そのことを、嫌が応にも理解してしまった。
「勇者様って、何歳?」
突然の質問に少し戸惑う。
「えっと、16歳にこないだなりました。」
「なんだ、同い年じゃん!」
「俺はユウ」
「俺もこないだ16歳になったんだ」
「あっ、俺は…」
「タケル様だろ?今日は神殿中がその話題でもちきりだったからな」
遮るようにユウが言った。
なんでもない会話だが、今はそんな会話が少しここちよい。
「同い年か…」
「今更だけどさ、タメ口でもいい?丁寧な言葉遣いって苦手でさ」
少しはにかみながらユウが言った。
その言葉と、表情に俺も笑顔になる。
「もちろん!」
「へへ、ありがとう!よろしくな、タケル」
ユウと硬い握手を交わす。
お互い少し照れくさくて笑いあってたころ、
すっかり足の震えは止まっていた。
「とりあえず、ここで状況が落ち着くのを待とう」
「心配ないって、うちの防人衆はインディトラん中でも特に優秀だかんな」
「すぐ、制圧するよ」
「防人衆ってさっきの兵士の人たちのこと?」
「そうそう」
「平たく言えば、ヤマト国の軍隊だな」
前を向きながら、ユウは続ける。
「俺たちから、戦争を仕掛けることは絶対にしない」
「いわば、専守防衛の軍隊だな」
「だから、防ぐ人で『防人』ってわけ」
「つっても、人間同士の戦争なんて聞いたこともねえけどな」
ユウは大きな笑顔みせていた。
「タケルのいた世界には、魔物はいないのか?」
「うん、さっき初めてみた」
「そうか!じゃあ、平和な世界なんだな」
「どうだろう、魔物はいないけど、その分しょっちゅう人間同士であらそってるよ」
「そうなんか…ん?」
ユウは素早く立ち上がると持っていた槍を構える。
「どうした?」
「まさか、ここまでくるとはな」
来た道の曲がり角から魔物が姿をあらわす。
「ちっ、やるしかねえか」
「タケル、俺はここであいつを迎え撃つ」
「ここからは、一人で逃げるんだ」
それが無謀であるということは、素人の俺にも、すぐに分かった。
さっき逃げながら見た、防人達の戦闘。
複数人、少なくとも2人以上でパーティを組んで、戦闘に臨んでいた。
それだけ、魔物は脅威であるということは、容易に想像がつく。
「1人でなんて無茶だ!」
「俺だって防人衆の端くれだ」
「タケルが逃げる時間ぐらい稼げるさ」
「大丈夫、やばくなったらすぐにトンズラこくからよ」
持ってけと、腰に差してあった短剣を渡してきた。
「いいか、まっすぐ走ってにげろ」
「そうすりゃ、神殿の外に出られる」
「それと絶対に交戦するな」
「ただ、どうしても逃げられなくなったら、それで、隙をなんとか作れ」
魔物はもう目の前まで迫ってきていた。
だけど、俺は…
「ユウ、俺も一緒に戦う」
「なにいってんだよ!早く逃げろって!」
「ここで逃げても、次、魔物に出くわしたらもう駄目だ」
「俺一人では逃げきれないよ」
腹をくくれ。
足の震えは、もう、ない。
「だったら、ここで、戦うことにかけてみる」
真っ直ぐにユウをみる。
「勇者様は大バカ者だ」
「お前を守りながら戦う余裕はねえぞ」
呆れたように、ユウが言った。
「分かってる」
大丈夫。
ユウに貰った短剣は扱える重さだし、武術の基礎は父さんに教わってる。
戦える。
「じゃあ、タケル、行くぞ!」
「ああ!」
魔物に向かって駆け出す。
俺にとって、初めての戦闘が始まった。
いかがだったでしょうか?
そして、投稿が遅くなり、申し訳ありません。
次回については、早めの投稿を予定しております。
嘘じゃないですよー
頑張りますよー
感想お待ちしています。