マジで親バカな理由
初手は周りに居る普通のファン達の魔物が放った大した威力のない長距離攻撃である。
水鉄砲、子供が投げたぐらいの威力の石、スカートが捲れるぐらいの突風など大した威力ではない。
俺は身体強化した後すぐに周囲の建物の屋根まで窓などを使って連続で飛び回り、屋根まで到達した。
その隣には当然ルビーが翼を広げて俺の隣にいる。
「マスター。これってこっちから攻撃しちゃダメなの?」
「止めておけ。ドラゴンが攻撃したらあいつら全員灰になっちまうだろ。あそこにいるのは5桁の連中だからほぼただの一般人」
「5桁?それって何なの?」
「ファンクラブに入った連中のナンバーだよ。全部で5桁までのナンバリングがされてるカードを持っているから、あいつらは大体10000から99999までの連中だろう」
俺がいつも通り屋根に逃げると下から「追い掛けろ!」「それよりも通報でしょ!」っと騒がしくしているのを見てから俺は屋根の上を走る。
ルビーは当然飛んで追い掛けてくるし、下の連中も俺を追いながら他のメンバーたちに連絡を取っているはずだ。
ルビーは不思議そうにしながら俺に聞く。
「結局あれってファン達の暴走じゃないの?本当にあの国王が関わってるの?」
「関わってるって。そうでなきゃあんだけの数集められないって。それにヤバいのはこの先だ」
「この先には誰が居るの?」
「00。つまり999からのファンクラブメンバーはガチだ。本気でドラバカの事を惚れて俺の事を邪魔しようとしてるんだ。俺は何度も一緒になる気はないって言ってるんだけどな~」
鳥系の魔物から空気砲ぐらいの威力の魔法が放たれるが、ピョンピョン飛び跳ねながら魔法を避けて城を目指す。
ルビーも避けながら魔物達を睨んで威嚇する事で魔物を追い払ってくれている分いつもよりだいぶ楽だ。
普段は飛べる魔物達から集中砲火を食らい続けていたので、それだけでもかなり楽に城に向かう事が出来る。
だがこの先は難しいだろうな……
「それでダブル……何とかってそんなに大変なの?」
「ああ。そこから先は俺の様な魔物の研究者から始まり、街のおまわりさん、軍人、親衛隊とどんどん戦える連中が多くなる。駅に居たのは魔物と仲がいいだけの一般人だから大丈夫なんだが……戦える連中は本当にこんな時だけは本気出すんだよな~。あ、ちなみに0の数が増える度にどんどん過激派になっていきます」
「いや、ファンクラブに入った順番だよね?何で強い連中みたいな人達ばっかり数字が小さいの?」
「それは……語るは呆れ、本人達にとってはとても重要な闘いの日々があったから……」
ちょっと雰囲気を出すために哀愁を出しながらルビーにくだらない話をする。
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時はちょうど俺が学校に入ったころ、つまりドラバカも一緒に学校に入ってきた頃の話だ。
王様は可愛い娘達に悪い虫が付かない様ファンクラブ上位者達に命じていた。当時はほとんどドラバカを幼いころから知っている貴族の子供達だけで構成されており、まだ平民はファンクラブに入る事すら出来なかった。
だがドラバカが高校生になって悪い虫が付かないよう王様はあえて公式ファンクラブを作る事で悪い虫を付かない様にも管理する事を始める。
下心があるか、ただの忠誠心か、はたまた崇拝しているだけのか、ファンクラブに入った者達を細かく調べて悪い虫になりそうな者を同時に警戒していく。
実際これによりドラバカに近付く悪い虫はほとんど掃討されたと聞く。
だがここに思いもよらない悪い虫が現れた。
誰でも分かるだろうがそれが俺。
始めは互いに恋愛感情など全くなく、どちらかというとライバル関係と言うのがしっくりくる関係だった俺とドラバカは当時の王様には見逃されていた。
周囲の親衛隊、のちの0000達もあいつはありえないと結論付けた。
仲がいいと言うよりは喧嘩をしている事の方が多い両者に恋愛感情が宿るなど誰にも考えられなかった。
だが、ドラバカはいつの間にか俺に惚れていたのだ!
ちなみに理由は不明。マダスも野良猫も教えてくれない。
最初の内は魔物に関する調理だと思っていたはずが、いつの間にか魔物用の料理と言いながら俺に弁当を食わせて感想を聞きだしたり。母や姉以外に意見を聞こうとしなかったフェアリードラゴン、キュイの育成について意見を述べあったり。
っと少しずつ交流を重ねてはたから見るとあれ?あいつら付き合ってね?っと言う状況が客観的に見えていたそうだ。
王様も慌てて報告してきた時には遅かった。
既にドラバカは俺に恋をしていて本気で俺を狙っていた。
その瞳は完全に雄を狙う雌の眼だったと、野良猫は語る。
当然国王は頑張った。滅茶苦茶頑張った。俺と結婚という最悪の事態を避けるために。
まずは他国の王子などからの見合いのお知らせを見せながら、ここの王子は誠実だ。こっちの王子は優しいと評判だ。こっちの王子は気が合いそうだ。っと言い続けたが全然ダメ。
ではやり方を変えて俺からドラバカについてどう思っているか聞きだした。俺は当時から恋愛対象としては見ていないので当然交際する気はないと伝えた。
これを聞いた王様は一安心……となるはずだったのにドラバカは諦めないと言う。
どうしたら諦めてくれるか頑張った王様だが……結局諦めた。
そこまで娘が本気なら見届けてやると思った。
根負けして娘の恋愛に邪魔をしないよう通達した。
そして見守る事1年。
俺は宣言通りドラバカと一切交際する気がないのでどれだけ仲良くなっても結婚までたどり着かない。
いい加減イラついてきた所に帝国の成金ドラバカが出現。
下品かつ傲慢な態度で娘に言い寄って来る特大の悪い虫の迎撃に全力を出した。
ここまでくると何故マスターと言う男が娘と婚約しないのが悪い!!っと言う逆ギレ全開の理由で俺の事を攻撃するようになったのだった。
まる。
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「――っと言う本当に下らない理由があるそうだ」
いつの間にか0の攻撃範囲内に突入していた俺達は長い長い、そして本当に下らないこの迎撃の理由を答えていた。
ルビーは呆れ返った様子で言う。
「本当に下らない。結婚ってお互いの同意があってこそでしょ。人間の結婚って違うの?」
「いや、本来であればルビーが正しい。ただ王様から見ると可愛い娘をもてあそぶ嫌な男に見えたんだろうな……こればっかりは個人的な感情だからどうしようもない。そしてドラバカはいい加減諦めろ」
俺はいつまでこの歓迎を受け続けなければならないのか、本気で悩んでいる。
そして諦めろと言った言葉が気に入らなかったのかより攻撃が激しくなる。
たまにティムしている人間の感情のせいで威力が上下する事があるが恐らく魔物越しに今の会話を聞いたんだろう。
それにファンの中には女性がドラバカの純愛を応援している連中もいない訳ではない。
いつまで経っても振り向かない俺にお怒りの様だ。
でもさ、よく考えてみてくれよ。
相手は王族だぞ?俺は平民で確かに大喜びしてもいいのかも知れないけれど、俺は王族の仲間入りをして責任のある立場にはなりたくない。
今まで魔物の事しかしてこなかったのに、政治だとかそいうものにも首を突っ込めって言われたら無理としか言いようがないぞ。
そう言う事もちょっとは考慮してくれませんかね?
「もう素直に言えば。私と結婚したからアイリアとは結婚できませんって」
「あ、そのセリフもうちょい待ってほしかった。もうすぐ00を相手にしなくちゃいけないから。多分怒ってるだろうな~この事聞いてたら」
実際下の方がしんと静かになっている。
恐らく俺が結婚したと言う所に反応したんだろう。
そして次の敷地内は今までにない程の質になっていると容易に予想できる。
俺は覚悟を決めて城に向かうのだった。




