俺、この国の未来が心配です
長い機関車の旅を経てようやく王国に帰ってきた。
ずっと座っているか、短い停車時間の間に駅弁を買いにダッシュしたぐらいしか記憶がない。
エコノミー症候群になってはいない様だがこれ以上座っているとなるそうな気がする。
何はともあれ無事王都に帰って来て思いっきり伸びをした。
「っ~~はぁ。やっと着いた」
「長かったね~。私が飛んでいった方が早かったんじゃない?」
「俺達全員を乗せてか?ルビーってそこまで成長してたっけ?」
「そう言われると……自信ない」
機関車から降りて思いっきり伸びをした後、ルビーと軽く話しをしながら降りた。
マダスやドラバカ、野良猫もパートナーを抱えながら降りてきた。
「ふう。流石にずっと車内って言うのは疲れるね」
「お菓子ももうないしね」
「車内にキュイ達を遊ばせる場所も必要かもしれないわね。今度イージスお姉さまに相談してみようかしら」
「ふわ~……」
「ほらリーパ、思いっきりだら~んってしない。もう降りるんだから」
「にゃ~」
全員ずっと車内にいたことで精神的な疲労が溜まっている様に感じる。
俺も軽くストレッチをしているし、同じ場所に長時間要ると言うのはなんか嫌だ。
「そんじゃさっさとドラバカの親の所に行くか。報告書も渡さないといけないし」
新月熊の生態調査の報告書は直接親バカに渡すてはずになっている。なのでこのまま王城に言って渡してくるつもりだ。
ちなみに報告書の価値に関しては後日評価された後に研究資料として支払われるので、もうちょっと待つし必要がある。
基本的に後払いなのでやりくりが大変なのだ。
そんな感じでホームを降りて駅から出る前に妙に人が多い様に感じる。
何らかのイベントと被ったんだろうか?
そう思っていたら俺達が駅から出た後に理解できた。
大段幕にデカデカと“お帰りなさい!アイリア様!!”っと言う熱意の伝わる物が張り出されていたのだから。
「な、なによこれー!!」
そしてその周囲にはアイリアのファンとでも言うべき人達が整列して待っており、手のひらサイズの国旗を振って歓迎してくれている。
俺達はこの光景を見ながら少し呆然とした後、俺はドラバカに聞いた。
「もしかしてお前、今日帰ってくる事国王に教えてた?」
「た、確かにイージスお姉さまの魔道具で連絡しておいたけど。こんな事になるなんて思わなかったわよ~」
「とりあえずドラバカ、お前先頭歩けよ。どう見てもお前がメインだろ」
「だよね。こんなに歓迎されているアイリアよりも先に歩くなんて私無理」
俺の言葉に野良猫も同意してくれた。
マダスは何も言わないが野良猫の言葉に何度も頷いている。
庶民はこのようなパレード的な物に耐性などあるはずないので慣れている王族に任せましょう。
「いや!だからってそんな!背中押さないでよ!!え、これ本当に私に押し付ける気!?ちょっとヤダ!!」
俺達平民はアイリア様を盾に歓迎モード全開の道を押し込んだ。
押し出されたアイリア様は歓迎する国民に対して笑顔で手を振りながら道を進む。
そして俺達平民はお供ABCとして少し離れた位置でアイリア様の後を追う。
「にしても本当にドラバカって人気あるのな。姉妹の中で何番目の人気度だったっけ?」
「アイリアは5姉妹の中でトップよ。最も気難しいドラゴンを従えていると言うのもあるし、1番まともだからね」
「他の姉達はキャラが濃すぎたんじゃないか?戦闘狂に引きこもり魔女、合法ロリに合法主義者と最も普通の価値観に近いから親しみやすいんだと思う」
マダス……それ聞かれたらファンの人達に怒られるんじゃないか?
どの姉妹にも過激派組織は存在し、日々5姉妹のうちだれが1番か競い合っていると言うしょうもないオシ戦争があるとかないとか。
俺はよくドラバカのファンに暗殺されかけてたけど。
「ふ~んアイリアってそんなに人気があるんだ」
「ルビーも興味がおありで?」
「私も似たような感じの事になってたし、多分家に帰ったらこんな感じになるんじゃないかな?私はお父様達に連絡する手段がないからここまではならないだろうけど」
……これだから名のある種族は。
つまりこれと同じような事がもう1回あってもおかしくないって事か。今のうちに覚悟しとこ。
そう思っている間に駅を抜けると王族用の馬車が用意されていた。
アイリアと抱かれているキュイが馬車に乗ると扉が閉まった。
そして走ってしまう馬車。………………あれ?俺達だけ歩き?
なんて思っている間に周りの人達がそれぞれパートナーと共に俺に向かって目線を向けている。
その眼の色は……怒りだろうか?
「マスター」
ルビーはそう言って俺の近くに来る。
またこれかと思いながらもいつもの事だと割り切ってマダスと野良猫を促す。
「いつもの事が起きたみたいだ。マダスと野良猫は先に行ってろ」
「いつものことながら頑張れよ」
「この国って本当に変わらないわよね」
ドラバカとは違う馬車を既に用意されていたのか、次の馬車が颯爽と現れマダスと野良猫に乗るよう促す。
どうやら周りの連中は俺だけが目的の様なのでマダス達の事は見逃してくれるようだ。
その代わり俺の事は逃がすつもりはないらしい。
「これどう言う事?明らかにマスターの事を狙ってるみたいだけど」
ルビーの問いに俺は悩みながらも言う。
「何と言うべきかな……あの親バカ国王の事は覚えてるか?」
「この国のボスだよね」
「そうそう。多分今日来るのを知ってるから俺だけこうして歓迎してくれるつもりなんだろうよ。そしてここに居るのは全員ドラバカのファン、過激派は十分に戦闘できる魔物とティム関係にあるからものすんごい厄介だぞ」
「……国王がこんな事させているの?本当に?」
ルビーが信じられないと言う風に言うが、残念ながら事実だ。
なんせドラバカファンクラブ代表と言うか創立者は、あの親バカ国王なのだから。
馬車が進んで遠くに行くと、さっきまでドラバカを歓迎していた連中が俺達に向かって決して友好的ではない瞳の色で俺を睨んできた。
そして最前列に居た誰かが言う。
「突撃ー!!」
こうしていつものバカげた歓迎、ドラバカファンからの襲撃を受ける俺とルビーだった。




