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帰国中

 華陵の別館で何事もなく一泊した次の日、俺達は王国に帰る。


「そんなに慌てなくてもよろしいのに」

「どうせ帰るのにも数日かかる訳だし、さっさと帰るよ。新月熊の事何か分かったら教えてくれ」


 新月熊の棲み処に近かったあの村の残りの住人がどうなったのか、それは結局冬が終わった後に調べるしかないと言う結論になったそうだ。

 この首都付近ならある程度人間が住めるように調節がされているとしても、あの秘境は人間の調整は一切されていない土地なので人間が行っても自殺に等しい。

 よって残酷ではあるが、あの村の残りの住人達がどうなったのかは冬が終わった後に調べると結論が出たそうだ。


「ちなみにマスター様が契約した新月熊から何か連絡は?」

「俺も一応パスを通してやってみたんだが……意識がはっきりしてない。大怪我をしたとかそういう感じじゃなくて、ただ単に反応が鈍いだけだから冬眠に入ったか、入りかけてるんじゃないかと思う」

「そうですか……新月熊と人間が戦っていないようでしたら構わないのですが」


 人間の事は人間で片付けると言った直後にそう言う事をするとは思えないが……

 そう思っていると華陵は言う。


「ただ単に生き残った者が村を離れただけかもしれませんし、そう思い悩まないで下さい。マスター様が認めた新月熊、悪い者ではないでしょう」

「……そう言ってもらえると助かる。そんじゃ次来るときは連絡入れるよ」

「はい!その時はぜひ!」


 そう言う約束をしてから俺は汽車に乗り込んだ。既に席には俺以外の全員が座っている。

 汽車が発射した後、窓を開けてみんなで華陵とホムラに向かって手を振った。2人も手を振り返してくれる。

 これできょうでの調査は終わりだ。

 次はルビーの実家に行くと言う内容だが……何が必要なんだろう?


「なぁルビー。ルビーの実家に行く前に買っておいた方が良い物ってあるか?」

「ん~特にないかな。人間サイズの部屋はあるし、特に準備しとかなきゃいけない物ってないかも」

「そうか?と言うか人間サイズの部屋あるのか」

「あるよ。一応人間の姿で過ごす事になれるように訓練するし、特別大きいのは私達だけだから」

「それじゃ他は人間とそう変わらない?」

「そうだね。ナーガ達も頭から尻尾までは長いけど基本的に人間の背の部分までしか身長って言わないもん」


 なるほど。ナーガの背の長さは人間基準か。

 それじゃあの尻部分から下は……足?それとも尻尾?ナーガ基準じゃどうなんだろう……やっぱり胴体か?


「それよりもまさかエレメンタルフレイムドラゴンの棲み処に行けるなんて、普通じゃどうやってもいけないわよね。その前に排除されるのが目に見えてるし」


 ドラバカがそう言う。

 確かに普通に考えればそれが妥当だろう。ドラゴンだけではなくその配下にとっても神聖な土地のはずだ。

 そこに踏み込む事の出来る人間は一体どれぐらい居た事だろうか。


「そう考えるとルビーと契約してよかったな。今更だけど」

「あれ!?それ以外に役にたってる事なかった!?」

「ただルビーの家に行けるって点を強く言ってるだけだ。普段からルビーは俺の癒しだよ」


 そう言って抱き避けるとルビーは直ぐに黙った。

 黙って甘える。頭を俺の肩に乗っけて幸せそうな緩みきった表情をする。

 それを見てジト目で俺の事を見るドラバカ。


「本当にバカップルだよね。それよりもお父様にはどう伝えるの?そしてルビーちゃんの家に関しては報告書にまとめるの?」

「まとめないさ。本当にルビーの家に行く時はただの観光って事にしておこう。俺達人間がエレメンタルドラゴンの縄張りに入るのは早過ぎる」


 ドラゴンを神聖視している国は多いが、その数と同等に敵視している国も多い。

 宗教的な問題だったり、過去力のあるドラゴンの手によって支配されていた地域なども存在するからだ。

 そう言った国や地域はドラゴンの危険性を重視して完全な住み分けを希望していたり、過激な所では絶滅させろとの声も上がる所がある。


 あまりにも影響の強過ぎるドラゴン達は世界各地に存在する。

 一応最強生物と言う事で繁殖力が弱い種族は多いが、その1体のドラゴンなら町1つぐらい簡単に破壊しつくす事など容易いのだ。

 だから王都、ドラバカの実家で100を超えるドラゴンの群れとは国1つぐらい何てことなく破壊しつくす事が可能と言える。

 ただ……エレメンタルドラゴンと言われる全くその生態や力が全く分かっていないドラゴンに関してはどうなるのか分からない。

 バハムートと呼ばれていた海のエレメンタルドラゴンは、恐らくあの子供だけで津波を起こせば人間の町など簡単に沈める事が出来る。


 ルビーが人懐っこいので忘れがちだがドラゴンは力の塊。自然災害の具現化などと呼ばれるだけの強大な力を持っている。

 それを手にしようとするバカな連中も、いない訳ではない。


「ドラゴンか……そういやまた繁殖に成功したみたいだぞ」

「ドラゴンの繁殖だと?あれって自然界でしか生まないんじゃなかったの?」


 マダスはどうやら新聞を読んでいま知ったらしい。

 そして俺はこれまでの常識的な事を言う。


 ドラゴンの繁殖は謎が多く、人の手で生活しているドラゴンは決して卵を産まないと言うのが常識だった。

 仮にその話が本当だとすると人類史上初となるのではないだろうか?


「ああ。ちなみに成功させたのはあの金ぴかドラゴンバカだよ。帝国の現皇帝ゲシュタルさまが成功だってさ」

「あ~あいつか。なるほど、金の力ね」


 ドラバカはそう言うがそんなはずはない。あの成金ドラバカは傲慢な所などが目立つが腕は確かに一流なのだ。

 それにあいつのパートナーは戦闘力よりも知識の方が高い。

 恐らく成金ドラバカに知恵を貸したのはあの爺さんドラゴンだろう。


「それにしても本当に卵を産ませたのは人類史初の偉業よ。卵を産ませたって事はどの様に繁殖するのかも知っていると見た方が自然だし、これはかなり大きな一歩ね」


 野良猫は冷静にその事を判断する。

 あいつの厄介さは傲慢でも仕方がないと思えるだけの実力がある所だ。

 血筋、権力、金、知識、魔力量、スキル、そして確かな実力。

 真の才能の塊と言うのはまさにあいつの様な者の事を指すのだろう。何をしても最高の結果を残し、失敗したとしてもそれを大きく塗り潰すだけの成功を確実に達成する。

 だから1部の者は分かっているのだ。


 あいつはあいつで間違っていないと。


「……あいつは人類史に大きく名を残す事をこれから先も連発していくだろうよ。それは誰かに止められるものではないし、止めようもない。ただあいつがそのうち自然と止まる日をそっと待つしかない。帝国はこれから先相当前進するぞ」


 その言葉に対して人間組はみんな頷く。

 魔物組はよく分かっていなさそうだけど。


 成金金ぴかドラゴンバカの才能は、俺が1番よく知っているのだから。

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