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正しくない対応

 次の日から始まった新月熊の捜索。

 新月熊の匂いは鬼ごっこしている間に嫌でも覚えたのでその匂いを追っている。

 俺じゃないとできない捜索だろうな。もしくは魔物に頼ったやり方だ。


 だがその前に今日は血の匂いが強い。

 この臭いは……血の臭い?


「マスター、ここって昨日の……」

「匂いを頼りに来たからな、どうしても近くの強い臭いの方に来ちまったみたいだな」


 それは昨日新月熊に襲われていた人達の最後の場所だ。

 辺りには黒くなった血の跡がまだ残っており、黒くなった血の跡がこびりついている。

 それに彼らが使役していたと思われる犬系の魔物の臭いもする。

 こうなってほしくはなかったんだけどな……


 そんな現場の後を見ていると肩を叩かれた。

 何だろうと思っているとドラバカが震えながら地面に指を指して言う。


「何と言うか……何か引きずったような跡があるんだけど。村の方に」


 ………………まさか?

 生き残りが居て死体を持って帰った?


「マスターどうする?私に乗ってく?」

「ああ、頼む。バレない様にな」


 そう頼んでから俺達は元の姿になったルビーの背に乗って村を目指した。

 そして上空から見た村は、惨劇と言う他ない。


 村は壊滅していた。

 畑や家だけでなく家畜小屋や倉庫など様々な物が破壊されていた。

 しかも血の臭いが強過ぎて新月熊がまだ居るのかどうか分からない。

 ドラバカはこの惨劇を見て必死に口を抑えている。


 こりゃドラバカはここでアウトだな。

 俺は……悪い意味で慣れていた。


 野生の魔物が住んでいる場所には多少の犠牲になった跡などが残っている事もあったし、ちょうど鉢合わせた別の研究グループが犠牲になった現場を直接見た事もある。

 俺はその時助けられなかった事の方が多かったし、次は自分の番になるかも知れないと思うと動けなかった。

 相手は野生の獣。悪意はなくとも襲ってくる事はある。

 その犠牲にならない様にしなけらばならない。


 ルビーに頼んでドラバカを1度拠点まで運んでもらう。

 その後俺の元に戻ってきて欲しいと頼んだ。

 ドラバカは俺の行動に素直に従った。正体不明の魔物に対して自分は足手まといだと察してくれたのなら助かる。


 俺は村に1番近い木の上で待機する事にした。

 視力を身体強化で強めて見える範囲で新月熊を探す。

 まだ新月熊が居るかもしれないし、運良く去っていれば住人を保護しなくてはならない。


 しばらくじっとして観察していると、新月熊の親子が居た。

 小さな子熊が2匹と大きな大人が2頭。

 襲った熊かどうかまでは分からないが暴れず、喧嘩していない所を見ると本当に群れを形成しているのかも知れない。

 雄だけとか雌だけとかではなく、本当に大人も子供もいる大きな群れに。


 新月熊が悠々と歩いていると言う事は既にこの村は全滅したのだろうか?

 まぁ生き残っていたとしてもこれでは冬を越せるとは思えない。

 むしろ死んでしまった方が楽なのではないかと思ってしまう程だ。

 そんな風に思っていると子熊が2匹とも立ち上がって鼻をしきりに動かし始めた。

 何の匂いを嗅いでいるんだろうと思うと、子熊2匹はこちらに向かって走り出す。


 まさかと思ったが子熊を追って親熊2頭もこちらに向かって歩く。

 俺は子熊の動きを観察していると子熊は俺が居る木下近くにまでやって来た。

 どうするべきかと考えていると、親熊も遅れてやって来た。

 別な木に移動するのが最も安全かも知れないが、どうしたものか……


 そう思っていると子熊が2匹俺が居る木を登ってくる。

 これは……どうするべきかな。

 子熊にあるのはおそらく好奇心だけだろう。

 この村を破壊した新月熊ではない事は想像がつく。

 でもどうするべきか……何の匂いだ?

 これは……火薬か?


 そう思った直後、銃音が村で響いた。

 そして俺の居る木の下で倒れる1回り小さい親熊が倒れる。

 即座に大きい方の熊が銃を撃った誰かに向かって駆け出した。

 子熊たちは驚いて急いで木の上にまで登る。

 すぐ俺の姿を見付けて何故か俺に捕まった。


 それよりも問題はあの親熊の方だ。

 遠くからなのでどこを撃たれたのか分からないが急所だった場合死んでいまう可能性はとても高い。

 野生の動物であれば母親の居ない子供の未来は死だけだ。

 なので緊急を要する問題と言う事だ。

 俺は子熊を抱えて木から飛び降りた。もちろん親熊は踏まないようにだ。

 途中何度か銃声が聞こえたがあっちの親熊は無事だろうな。


 とにかく傷を確認。

 銃弾は……貫通してない。これは逆に面倒だな。

 貫通していればただの治癒で傷を塞げばいいだけだが、この状態で治癒を行ってしまうと銃弾が体内に残ってしまう。

 そこから膿だのなんだのが出来てしまったらどうしようもない。

 この銃弾を取り除いた後に治癒をするようにしなけらばならない。


 そう思ってリュックから簡単なメスなどを取り出そうとした時、親熊が戻ってきた。

 当然親熊は俺を殺そうとしてくる。

 母熊を守ろうとしているのだから当然の行為だ。

 俺は身体強化を最大にまで上げて親熊と組み合う。

 でも当然強いのは親熊の方だ。

 筋力も体型も、体重も全て勝っているのは親熊の方。スキルで頑張ったところで勝てるはずがない。


 だが意外な援軍が子熊たちだ。

 子熊たちは可愛らしい声で鳴き、親熊を止めた。

 親熊は渋々と言う感じで俺を襲うのを止めたがまだ安心はできない。

 直ぐに銃弾を取り除きたいがメスを取りだしたら躊躇ちゅうちょなく襲ってくるだろう。

 この状況ではまだ治せない。

 そう思っていると空からルビーが戻ってきた。


「マスター?この状況どういう事?」

「丁度良かった。ルビー、俺は今からあの母熊の中にある銃弾を取り除く。その間邪魔をしない様に見張っててくれ」

「分かった。ちょっと本気出す」


 そう言ってルビーはドラゴンのオーラを身にまとった。

 邪魔をしない様に脅しているんだろうが……人型でも効果はあるよな?

 そう思いながらもリュックから麻酔とメスを取り出す。

 麻酔で傷の周囲を鈍らせていたくない様にメスで切る。

 手早く、邪魔なく、スピード勝負。

 ピンセットなどもアルコールで消毒して手術を開始する。


 身体の構造は普通の熊と同じ。

 傷口は左下腹部。致命傷ではない。

 麻酔が聞いてきたようで苦し気な呼吸は落ち着いてきた。

 でもじたばたするな、手元が狂う。


 だがそれもルビーが優しくささやくと大人しくした。

 俺はその隙に切って銃弾を取り除きやすくする。

 開創器で広げたまま切って銃弾の所まで到達させる。

 そしてようやく見えた銃弾をピンセットで取り除く。

 これで治癒を使っても問題はない。


 溢れる血を治癒で体に吸収させながら銃弾の部分から少しずつ傷を塞ぐ。

 開創器を調節して少しずつ閉じながら治癒を行えば菌の類が体内に残る事もない。

 俺は傷がきちんと塞がったのを見て俺は大きく息を吐いた。

 これで一応大丈夫だろう。

 ただ母熊はしばらく麻酔の影響で動けない。

 なので母熊を安全な所まで運びたいんだが……


 そう思っているともう1頭の親熊が吠えて歩き出した。

 子熊もそれに従っているので俺は母熊を背負って歩き出す。

 俺達は一体どこに行くんだろう?

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