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新月熊発見

 新月熊かどうかまでは分からなかったが熊が居る事は判明した。

 しかも親子という事は他の親子連れが居てもおかしくはないだろう。

 つまりこの山でクマが繁殖しているのは間違いないと言う事だ。


 これはとても大きな情報である。

 なので今度からその山を中心に捜索を始めた。

 マダスと行動した時は熊と思われる背中姿を発見。その時は遠く望遠鏡で見つけたので追いかけられはしなかったが複数の熊が居る事がさらに判明された事になる。


 と言ってもこの発見できた熊が新月熊なのかどうかまでは判明出来ていない。

 どの熊も動いているのでうまく胸の新月を確認出来ていないし、ただの黒い熊である可能性は捨てきれない。

 なのでこれからも調査を続けなければならない。


「っと考えてはいるものの、な~んか変なんだよな」

「変って?」


 隣に居るルビーが聞いて来る。


「1つは親子連れしか見当たらない事。1匹だけで発見する事はあっても基本的に山の奥の方で見かけるばっかりだ。森の奥の方はまだ調査してないって言っても変じゃないか?」

「そう?偶然だと思うけど……」

「2つ目はその親子連れにも奇妙な点がある事。母熊とは思えないサイズの親熊が居た。仮にこれが雄だった場合新月熊の可能性はかなり上がる」

「え?雄ってだけで?」

「普通の熊は雌が1匹で子供を育てる。逆に雄の熊は子育て中の雌熊は発情期が来ないから子熊を殺して発情期が来るようにしたりもする。仮に本当に雄熊だった場合新種、もしくは新月熊である可能性が高いんだよ」


 この辺の生態は満月熊もそう変わらない。

 魔物と言ってもほぼ野生動物と変わらない個体は結構いるのだ。ただ普通の生物以上の進化を遂げた個体だったり、魔力を持っている動物達の総称と呼んでも間違いない。

 それでも雄も子育てすると言う情報は全くないので、ただ俺達も知らない新種の可能性は否定しきれないけどな。


「へ~。ドラゴンは卵が産まれる事は低いから生まれたらみんなで守るんだけどな……」

「それはそれで素晴らしい事だと思うよ。ただ自分の血がつながった子孫を残そうとした場合、どうしても他の存在が邪魔になる時もあるって事だ」


 個人的な考えとしてはルビーの様な考えの方が好ましい。

 生まれた子供はみな宝。そう言う思考の方がなんかいいじゃん。

 向こうは向こうで死活問題なんだろうけど殺さなくてもいいんじゃないかなっと思う。


 そんな考えをしているとドラバカが現れた。

 その表徐はいい物を見付けたようには見えない。


「マスター、この山に猟師が入ってる。多分下の村の人達」

「そうか……目的はただの猟か?」

「多分それに近いはずだけど……キュイに頼んで盗み聞きしたらちょっと驚くような内容だったから」

「どんな内容だ?」

「………………これ以上被害が出る前に出来るだけ多く殺しておけって」


 作物でも盗み食いされたか?それとも飼っている鶏でも食われたか?

 なんにせよ不穏な空気なのは確かだ。

 あの村の人達は熊に何らかの恨みがあるのだろうか?

 だとしたら少々面倒な事になる可能性がある。


「ちなみにどれぐらいの規模だ?」

「30人近くは居た。それに犬型の魔物も引き連れてたからかなり本気って見ておいた方がいい」

「マスターどうするの?」


 ドラバカの報告に俺はどう動くべきか考える。

 今の俺達に彼らを止める術はない。あくまでも俺達は調査に来ただけで特別な権限を持っている訳ではない。

 ……いや、俺は一応特別な権限を持っているのだがこの国でも使えるかどうかまでは知らない。

 一応国際規模の免許なんだけどな……


「……様子を見るしかない。ただ遊び感覚で殺すのなら止めるが、生きるためなら仕方がない。ドラバカ、どんな様子だった」

「あれは害獣駆除って雰囲気だった。殺す事しか考えてなさそう」


 駆除……か。

 正直その言葉は好きではない。

 あとからやって来た人間が大好きな言葉の様に俺は感じている。

 とても都合のいい言葉だからな。


「どうする?助ける?」

「……今の俺達にはどうする事もできない。動きがあれば――」


 そう言っている間に銃声が聞こえた。

 俺達はその方向に一斉に顔を向ける。

 銃声は1度だけではなく何度も聞こえる。

 俺は気が付いたら走り出していた。


「ちょっと!マスター!!」


 身体強化を駆使して一気に森の中を走る俺。

 ルビーなら俺と契約している事で俺の居場所がすぐに分かるだろう。

 俺は安全を保つために、銃声が響いたと思われる場所の木の上で村の住人達を探す。

 探している間に村の犬たちが走っているのを発見した。

 あれは何かを見付けて走っているのではない。何かから逃げている動きだ。


 俺は犬たちが逃げてきた方向に木の上を跳びながら移動すると、そこには地獄のような光景があった。

 それは人間が熊に食われている光景。

 銃は破壊され、手や足が食い千切られたのか1部欠損してしている死体もある。

 そして何より地獄と言えるのは熊の数だ。


 1匹だけじゃない。

 複数の熊が人間の死体を喧嘩せず食べている。

 その複数の熊は決して親子の熊ではない。成熟した熊たちが、だ。

 熊は単独で行動する生き物であり、決して群れない。

 ギリギリ群れと言えるのは子連れの親子だけだろう。それ以外はありえない。


 だが目の前にある光景は明らかに成熟した熊の群れ。

 もしかして村の住人達が恐れていたのはこれが原因なのか?

 俺達が半端に興味を引き、この群れが村に来るのを阻止したかった?

 この群れの数を減らすために銃を持った男達が森で少しでも数を減らそうとしていたのか?


 呆然と見ている間に熊達が反応する。

 熊の数は5匹、俺1人なら逃げ切れる。


「ちょっと!そっちどうなってるの!!」


 急に下からドラバカの声が聞こえた。

 その声に反応したのか熊達がこちらに向かって行動を開始した!


「ルビー!今すぐドラバカを連れて逃げろ!!」

「え!?マスターは!!」

「俺は時間をちょっとだけ稼ぐ!!その間にドラバカを拠点まで戻してこい!!」


 俺の必死さを感じたからか、ルビーは本来のドラゴンの姿に戻りドラバカを握って逃げた。


「ちょ!ちょっとマスター!?どういう事よ!!」

「報告は美味く逃げ切れたら報告する!!早く逃げろ!!」


 そう言ってルビーが拠点に向けって移動し始めた直後だった。

 俺が掴まっている木が大きく揺れた。

 その原因は下に居る熊が木に向かって何度も立ち上がりながら木を揺すっているからだ。


 だがその衝撃は揺すってると言うレベルを大きく超えている。

 その衝撃だけで木の上から落ちてしまいそうなほどの威力がある。

 しかも下には既に5匹の熊が待ち構えており、落ちたら一巻の終わりだ。

 俺が出来るのは猿の様に木から木へ跳んで逃げる事だけ。

 俺はとにかく逃げる事にした。


 これこそまさに生死をかけた鬼ごっこ。負けたら食い殺される。

 それに熊の特徴として獲物へのしつこさがとても大きい。


 とある熊の被害で熊に襲われて死んだ者の遺体を埋葬するため、村へ持ち帰った村の住人が居たと言う。

 だがその後は悲惨なものだった。

 獲物を横取りされたと感じた熊は匂いから奪われた獲物を取り返そうと行動し、結果その村の住人をあらかた食い殺したと言う。

 原因はまさに死体を持って帰った事。そこから連鎖的にエサとして見ていた人間を食い殺したのだった。


 それに元の世界での研究資料の中に、熊の知能を試す物が存在した。

 大きなシカ肉を吊るし熊が食べに来るのを待つのだが、そのシカ肉は持って帰られない様にワイヤーで保護しているっと言う実験。

 そしてその実験結果は見事に熊がワイヤーからシカ肉を引きずり出し、どこかに持って帰って行った。


 それだけで熊がどれほどしつこいか想像つくだろう。

 獲物への執着心はとても強く、厄介である事が。


 で、今現在そのしつこい連中に追い掛け回されているのだが……普通に考えれば死ぬな。

 こうなるとどこかで巻くしかない。

 とても嫌なのだが……目の前にそれなりに大きな川が見える。

 生き残るためとはいえ何の準備もなしに寒中水泳は嫌だったが、生き残るために頑張るっきゃない。


 俺は逃げながら途中で地面に降りて、川へと飛び込んだ。

 マジで寒い中川を泳ぐ俺を見て熊達は立ち止まる。

 俺は向こう岸まで泳ぎ切ると熊達を睨みつけた。

 すると熊達全員で立ち上がり、威嚇の咆哮を上げた。


 そして気が付いてしまった。

 その熊達の胸元に丸い円が描かれている事に。


 そんな驚いている間にルビーの怒りの咆哮が聞こえた。

 熊達は即座に逃げ帰り、事なきを得た。

 だがこれからの捜索はとても厳しいものとなる。


 相手は群れる熊軍団だ。

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