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拠点構築

 川を求めて歩くこと30分程、穏やかに流れる川を発見した。

 ここら辺なら問題ないだろう。


「ふぅ。ここに来るだけでもちょっと大変ね」

「何と言うかこの辺一帯岩山って言った方が正しそうだもんな」


 ドラバカの言葉に俺は頷く。

 しかしこの辺に新月熊が出てくるかどうかは不明である。

 出てくる可能性があれば、出てこない可能性だってある。

 だが水があると言う事は何らかの動物は寄ってくるだろう。水源の近くに動物はいる。


「マダス、テントはり手伝って」

「おう」


 岩場でもテントを張るのは変わらない。

 最初こそ少し離れた所に張ろうと思っていたのだが、思っていた以上に気の値が複雑に絡まっておりテントを張るのは無理と判断したからだ。

 そして野良猫とリーパは縮こまって震えているので早く済ませるべきだろう。


「ただいまー」


 テントを張っている最中にルビーが帰ってきた。


「おかえりー。ちゃんと話してきたか?」

「してきたよ。何か悪い事する気がないなら別にいいって」

「そりゃよかった。これで遠慮なくストーキングできるぜ」


 ふっふっふ、久々のストーキングだ。

 気配を殺し、そっと離れず近過ぎない距離を保ちながらじっと観察する。

 今回の相手はまだ生態がきちんと判明していない新月熊が相手だからより注意しないと。

 あと木々が邪魔なんだよな……双眼鏡で覗いても木々や葉が邪魔しては見えるもの見えない。切り落としたら逆に向こうから丸見えになって警戒されたら元子もない。

 となると警戒しないギリギリのラインを見極める所から始めて……とりあえず、桑の木でも探すところから始めるか。


「え、何あのあくどい顔。あんな顔して観察してたの?」

「ほとんどあの顔だね。観察対象を見付けた時はもっと真面目な顔をするけど」


 野良猫とマダスが何か言ってるが気にしない。

 どうせ調べるのは明日からなのだから――


「あ、熊居た」

「マジで!?」


 ルビーの言葉を聞いてルビーが視線を向ける方向に目を向けるが、どうやら違う。


「マスター、もしかしてあの熊?」

「いや違う。あれは満月熊だな。腹の所を見て見な」

「でもあれもお腹に円が書いてあるよね?」

「そうだな。でも新月熊の円は円を描くように線で書いてる感じだ。毛色が違うって言われたらそれまでかも知れないが……」


 反対岸の川に居た熊は3頭。1頭はおそらく母親で2頭の一回り小さな熊は子供だろう。

 熊の子育て期間はおよそ2年。と言っても最近の研究だと約2年と言う形に変わりつつあるらしい。

 通常では1年半と言った所なのだが、人間による狩猟が盛んな地域、熊よりも強い魔物がいる地域では子育ての期間が長くなっているとのデータがある。

 研究者によれば地域ごとに変わる食物連鎖の変化による物ではないかと言われている。

 例えば食物連鎖の頂点が熊であった場合は1年半、食物連鎖の頂点額でなかった場合はその頂点捕食者から身を守る術を教えるために子育て期間が長くなるとのデータだ。


 なので最低でも母親熊は1年半の間子供を育てる。

 あの子熊の様子を見る限り1年は経過していると思う。そろそろ大人になる時期だろう。

 体格に関してはほぼ成熟していると言って間違いないし、最後に人間と言う敵について教えていると言う感じだろうか?


 そしてそんな親子熊はどうやら魚がいるかどうか確認しに来たらしい。

 川に入って何か探す様な素振りをした後、森の中に帰っていった。


「本当にあれじゃないの?」

「多分違うと思うけどな……一応発見されてきた新月熊はみんな黒毛だって話だし、新月熊の子供は発見されてない。黒毛でない新月熊がいるかどうかもわっかんないしな……まぁ一応匂いは覚えておくけど」


 雨などが降った場合だと匂いが消えてしまうが、それでも一応っと言う感じだ。

 だがルビーは唸りながら考える。


「う~ん?動物を見分けるって難しいね」

「似たり寄ったりの動物ってのは意外といるもんだからな。それに新月熊も満月熊も同じ熊のはずだし、仕方ない部分もあるだろうさ。さて、今日はもう休むか」

「あれ?今日は熊探ししないの?」

「まだ午前3時だが明日から捜索に力を注ぎたいから体力を溜めておきたい。俺とマダスだけならどうって事ないんだが……流石にドラバカと野良猫にいきなり今日からって言う訳にはいかないだろ」


 ドラバカはともかくとして野良猫はアウトだ。

 元々寒さに弱いと言うのは知っていたが、このまま山に登ればそのまま寒さで動けなくなってしまうのではないかと考えてしまう。

 それに今の装備ではちょっと危険と言う面もある。


 この軽装のまま山に入ったとしても寒さで動けなくなることはまず間違いない。山頂の方に向かえば向かう程気温が下がるのは目に見えている。

 それに今回の相手は岩山。いざと言う時のためのロープや登山グッズを装備していない状態で山の中に入るのは危険だ。

 流石に断崖絶壁を上り下りするような真似はしたくないが、事故で落ちてしまう可能性を考慮して安全に行うための装備は整えておかなければならない。


 この世界にカイロとか売ってないからな……今度お手製のカイロでも作ってみるか?

 砂鉄と塩水があればカイロ(仮)ぐらいはできるだろう。

 安全性は保障できないけど。


 いざとなったらルビーに頼んでストーブ代わりになってもらうのが1番確実かも知れない。

 ルビーの身体ってほんのり温かいし、いざと言う時は頼もう。


 テントを張り終えて中に入ると外に比べると大分暖かい。

 次女の話だと屋敷内は常に一定の温度に保たれているそうなので、寒い外寄りは大分マシと言えるのだろう。

 野良猫はいそいそと屋敷の中に入ると暖炉の前を陣取った。

 リーパと共に毛布を被って温まる。この間まで真夏のリゾート地に居たのが嘘の様だ。


「野良猫、明日っから寒い中熊探しするんだから防寒着と登山道具はしっかりまとめておけよ?」

「分かってる。でも今は温めさせて」

「ミ~」


 リーパが同意するように弱弱しく鳴く。

 こうなると野良猫とリーパはここで大人しく川に新月熊が来ないか、見張ってもらっている方がいいのかも知れない。

 その場合一応ドラバカかマダスのどちらかを置いて行った方がいいかも知れないな……

 野良猫に戦闘能力などまるでない。

 もし野生動物に襲われた時身を守れるのか?と聞かれると正直微妙だ。


 このテント型屋敷も普通の屋敷同様の頑丈さと聞くが、熊は獲物に対してとてもしつこい。

 仮に熊さんに出会って、すたこらっさっさっと逃げたとしても追ってくる可能性の方が高い。

 動けない者を無理に動かすと更に危険が高くなりそうだからな……


「てなわけでちょっと相談。誰か野良猫と一緒にテントで待機してくれない?」

「それならマダスの方がいいんじゃない?ほら、彼氏だし」

「いや、姫様だって久しぶりの登山なんだからここに残っておいた方が安全じゃないか?」


 ………………あれ?

 なんか妙な感じがしてきたぞ?

 ドラバカとマダスの間で火花が散っている様な……


「いやいや、お姫様だからって守られてばっかりはダメでしょ?ブラッティーホーンの時は結局ダメだったし、私だって守られるだけのお姫様じゃないってところアピールしなくちゃ」

「それでも姫様は姫様だから、危険な所を散策させる訳にはいかないって。それに俺ならマスターの行動は大体分かるし、逃げる時は一緒に逃げれるしさ」

「私はドラゴン使いよ?戦闘や逃走になったら全力で逃げれる。こんな所でお留守番なんてしてたら何のためにマスターに付いて来たのか分かんなくなっちゃうわよ」

「御身をお大事に姫様。ここは下々の出る場所、姫は安全な所でごゆるりとお待ちください」


 少しずつヒートアップしてる!?

 え、みんなして新月熊見たいの?最初渋ってなかった?

 あ、それは野良猫だけか。

 なんにせよなんでこんな事態になった!俺はただ野良猫1人じゃ不安だから一緒に居てくれないかって言っただけのつもりだったのに!


 穏やかに、確実にヒートアップしていく光景に俺は小さくなって嵐が過ぎるのを待つ。

 そうしているとそれぞれのパートナー達が話す。


「マスターってモテモテだね」

「そうじゃないわよ。みんなマスターの運にあやかりたいだけよ」

「キュイキュイ」

「え、どうして?マスターってそんなに運がいいの?」

「キュ~」

「へぇ~。とある湖でずっと昔から伝説とされたアクアドラゴンを運だけで見つけたんだ。しかも友達になったって確かに運良いかも。あ、だからマスターと一緒に行けば新月熊に会えるかもって思ってるって事?」

「そう言う事」

「キュイ!」


 ちょっと待てキュイ、そしてルビー。

 今のキュ~にそんな説明的な言葉が隠されていたのか?

 そういやのネ〇シー的なアクアドラゴンにしばらく会ってないな……今度魚もって会いに行くか。

 あいつに関しての論文また書いてくれって言われる事もあるし。


 そして最終的にマダスとドラバカの決着は1日ごとに交代すると言う事で決着した。

 その言い争いをそっと物陰から見みていた野良猫の頬には少し水滴きがついている様な気がした。

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