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到着、そして拠点探し

 魔力制御の訓練をしながら3日目の昼、川で渡っていけるところまでは川で渡って行き、後は歩いてようやく目的地である秘境にたどり着いた。

 切り立った岩山、深すぎる谷、自然と溢れ出る濃い自然エルギー、この環境がより強い魔物を生み出し進化させるのだろう。

 そして複雑な山の形をしているせいか風が強い。

 山頂の方に行けばさらに風は強くなるだろうから、もう少し風対策を用意しておいた方が良かっただろうか?


「ルビー、寒くないか?」

「水の中じゃないから大丈夫だよ。このぐらいの風なら平気」

「そうか。他に寒そうなのは……野良猫とリーパか」

「ちょっとマダス、もう少し上着出して」


 そう言いながら野良猫はマダスのリュックから厚手のコートを自分取り出している。

 野良猫とリーパは本当に寒さに弱い。

 猫だから当然といえば当然なんだろうが、風の冷たさだけでもダメか。

 まぁ標高が高いから肌寒さも仕方ないと言ってしまえばそれまでなのだが、それでも1人だけ厚手のコートを着ていると本当に寒いんだな~っと思う。

 ちなみに現在のリーパは既に野良猫の胸の中に居る。

 寒いから温かい所に閉じこもっている。


「それじゃまずはこの付近の村に行って挨拶をすませてこよう。こういう時はちゃんと挨拶しておかないと痛い目見るからな」

「あ~分かる分かる。それじゃ私も挨拶しに行こうかな」


 そう言ってルビーはドラゴンの翼を広げて飛び立とうとする。


「え、挨拶って誰に?」

「確かこの辺に縄張りを張ってるドラゴン達がいたはずだから一応言っておこうかなって思って」

「1人で行って大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫。これでも私お姫様なんだから、礼儀ぐらいはあるよ」


 そういや忘れてたけどルビーって激レアドラゴン種のお姫様だもんな。

 一緒に居るって言うのと甘える姿から忘れてた。


「大丈夫なら信用するが……菓子折りぐらい持ってかなくて大丈夫か?」

「ドラゴンの世界じゃそんなの必要ないって、本当に挨拶だけだから。それじゃ行ってくるね!」


 そう言ってルビーは久しぶりにドラゴン本来の姿に戻って飛んで行ってしまった。

 その飛び立つ姿に雄々しさと美しさを感じながらも思った。


 確かに成長している。

 以前よりも大きさだけではなく羽ばたく際の音、鱗の光り方、筋肉の密度などある程度は見て分かる。

 普段は人型の状態でしか検診していないが、やはりこの間のブレスの威力の時といいドラゴン状態でも検診はするべきかも知れない。

 でも俺の場合最新器具に頼らない触診がメインなんだよな……ドラゴン状態だと時間掛かりそうだ。


「にしてもこの辺を縄張りにしてるドラゴンか……聞いた事あるか?」

「私はないかな。アイリアはどう?」

「……大体の予想は付くけど……あり得ないっていう方が正しいかな?この辺を縄張りにしてるドラゴンは気まぐれで有名だし……」


 マダスが野良猫たちに聞いている。

 まぁ俺の見解ではルビーがあいさつしに行くってだけでそれなりに高位のドラゴンである事は察する事が出来るけどね。

 この間のバハムートの奴が原因かな?いや、ルビーは始めから縄張りに関して慎重な気がする。

 お姫様だしその辺のルールみたいなものはきっと守ってるんだろう。


「ま、なんにせよルビーがこの辺を縄張りにしているドラゴンに許可貰いに行ったとすればそれはそれで助かる。知らず知らずにそいつらの縄張りに入って殺されたくないからな」


 少しオーバー気味に言うとドラバカ達は頷いた。

 ではこちらはこちらで人間同士の縄張りに関して話し合いに行こう。

 俺達はこの秘境にある村を目指して歩いた。


 道なき道を進んで見付けた村はとにかく小さいし貧しそうだ。

 この享特有の魔物と思われる猿や山羊などの崖の中でも生きていけそうな魔物達が多い。

 俺達はこの村の人に事情を話すと村長の元に連れて来られた。

 長老の家に通されると、そこには長老と思われる人物との他にもう4人の年寄りがいた。

 そしてその者達の足元には同じように年老いた犬型の魔物が足元で伏せている。


「初めまして、私はこの村の長をしている者です。何でも新月熊を調べに来たとか」

「はい、そうです。新月熊は新種の魔物としてこちらでは考えられています。ですので危険が訪れる前にその生態を少しでも調べ、互いに傷付け合う事がない様にするのが俺の目的です」


 そう言うと村長は首を横に振ってから言った。


「新月熊の事を調べるのは勝手にするが良い。しかしこの村に居る事は禁ずる。村から離れた所で調べるが良い。決してこの村を巻き込むでないぞ」

「分かりました。調べる許可をくださりありがとうございます」


 それではいお終い。

 俺達はさっさと村から出る事になった。

 そして野良猫が言う。


「あの言い方何なの?別に歓迎しろとは言わないけど村に近付くなって言ってる様な物じゃない!」

「多分既に新月熊に何らかの被害が及んでいるんだろうよ。年寄りと子供は居るが、若い大人が見当たらない。仮に都心部に出稼ぎに行ってるって言っても少ない。子供が出迎えてるのが親じゃなくて年寄りって言う所も気になるしな」


 この村に入って出るまでにちらっと見た程度だが子供の数に対して若い大人がかなり少ない。

 この辺では確か20代~30代の若い大人が結婚して子供がいるという事前情報を得ている。

 だと言うのに畑仕事をしているのも、子供と一緒に居るのも爺さん婆さんばかり、せめて畑仕事をしているのが若い大人ぐらいだったら何てこと思わなかったんだが……


 さて、問題はここからだ。

 簡単に熊を観察しに行こうと言ったが今日は流石にそんな事出来ない。

 この地域では夏が終わって秋に入るかどうかと言う所、そうなると普通の熊ならまだ少し早いが冬眠前の食い溜めを始める時期だ。

 本来なら川の近くでテントを張りたいところだが……そこに新月熊や満月熊が来た場合を想定すると少し危険かな~っとも思う。

 この山でも鮭みたいな魚が上って来ないとは限らないし、川には必ず何らかの生物がやって来る。

 それが猪なのか、野犬の類なのかまでは想像しきれないが確実に野生動物がうろつくだろう。


 そうなると川に近いが離れすぎている訳でもない位置がちょうどいいという事になるのだが、そんな場所があるかどうか確認する必要がある。

 あの屋敷型テントなら川の近くに建てても問題ないのかも知れないが……それは最終手段にしておきたい。

 安全を確保するのは当然の事なのだから。


 さてどうするかと考えていると、俺達とすれ違うように男性達とすれ違った。

 犬型の魔物を連れ、猟銃を担いでいる。

 その手には獲物を所有してないみたいだが随分と装備を整えているように感じる。


 軽く会釈しながらその集団とすれ違ったが、恐らくあの村の男達だろう。

 流石に女性はいない様だがやはり出稼ぎだろうか?


「マスター。それでどうする?いつも通りの所を探すか?」

「出来ればそうしたいが……この切り立った岩山のどこに水脈があるのか探し当てるのが面倒なんだよな、毎度の事だけど」

「そしてシルフィの出番って事な。シルフィ頼む」

「はいはい」


 マダスはシルフィの力を借りて音で川がどの辺にあるのか探る。

 目をつむって集中し終えると、目を開けて指をさした。


「川の音はあっちからだな。そう遠くないはずだ」

「よし、それじゃまずは川を目指して歩きますか」

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