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ご挨拶?

 という事でバカンスはこれで終わりだ。

 人魚とバハムートに出会うと言う想定外の事が起こったが、今度からいつも通りの金なしフィールドワークの再開である。

 海の魔物はまだまだ直接見た事のない魔物が大量に居るのは間違いないが、準備も足りないし何を研究するのかも決めてはいない。パールクラウンを見に行くのもありなのかも知れないが……そこにはパールクラウン専門の研究者が居るから後で研究資料でも見せてもらえればそれでいい。


 とにかくバカンスはこれでお終い。明日はドラバカの別荘に1泊してから機関車できょうの近くまで行く。享にはまだレールは配備されておらず、むしろ避ける様に敷かれているのだから仕方がない。

 これは例の山に住む神や妖怪仙人の許しを得る事が出来なかったからだと聞く。

 魔物が身近に居るこの世界では人間の便利さより、魔物達の生活を乱さない様にする事の方が重要視されている事の方が多い。

 特に神やその眷族と呼ばれる存在であれば余計にだ。1体の魔物が町や国などを滅ぼせるほどの力を持った個体が居るのだから仕方がない。

 そんな存在を怒らせるより人間側が大人しく折れている方が色々と楽というものだ。


 という訳で現在後片付け中。

 持ってきたキャンプ道具をしまったり、色々して別荘に帰った。

 まぁそこで突然襲い掛かれたんだけど。


「天誅!!」


 そう言って戦闘系スキルを全部使ったんじゃないか?と思われる剣技を俺に向かってぶっ放した者が1人待ち構えていた。

 その剣技は周囲に配慮して下から上へと切り上げる剣技だったのだが、その斬撃は遠くに浮いていた雲を吹き飛ばした。

 相変わらずの剣技、本来なら長命で強い魔物を相手に放つであろう剣技を俺と言う人間に使用するのは1人しかいない。

 そしてその人物は怒りで震えながら俺に剣先を向けながら叫んだ。


「貴様!可愛い我が娘達とハーレム旅行とはどう言う事だ!!私なんか、ここ数年ろくに旅行すら出来ないどころか話しすら出来ていないのだぞ!!」

「そんなこと知るかよ。人ん家の家庭の事情に首突っ込むほど俺の心臓は強くねぇよ。そしてなぜ毎度会うたびにその剣技使う?それ確か対大型魔物用剣技だって前に聞いたんだけど?」

「我が怒りを知れ!!」


 娘と言った時点でお察しかも知れないが、これがドラバカ達姉妹の父で国王。シーサー・ドラグ・ノート王である。

 その手には代々国王だけが持つ事を許されたと言う宝剣が握られている。

 今日はフリーなのか動き難そうな王様っぽい豪華な服ではなく軍服を着ていた。だからあの剣技が使えたのか?

 まぁフリーの王様って言葉も変な感じするけど。


「シーサー。近所迷惑になりますよ」


 そう穏やかに言いながら国王を止めたのはドレス姿でドラバカの面影がある女性。

 その女性の後ろには3体の女性型天使が居るのだが、どの天使も髪型が違うだけでどれも同じ顔をしている。武器の槍も同じ、丸い盾も同じ、背中の翼の数も同じ。

 違うのは声と髪形、そして髪の色ぐらいか。

 女性は優雅な足取りで国王に近付き、耳を引っ張った。


「い!いだだだだだ!」

「全く。訓練場でならともかくこのような人通りの多い所で剣技を放つのはお止め下さい。それにもし上空の魔物に当たったりしたらどうするおつもりで?」

「だ、だがこの男は私達の可愛い娘を!」

「彼は信用に値する殿方です。頭では理解しているでしょうに」


 ため息を付きながら国王から耳を話した彼女こそドラバカ達の母、レイン・ドラグ・ノートだ。

 元宮廷魔物使いの身でありながら王子だった頃の国王と一緒になった魔物使い。王子を産めなかった事だけは残念であるが5人の娘を生んだ王妃様である。

 魔物使いの地位向上、魔物使いの学校の設立、国絡みの魔物に関する事業は全てこの王妃が関係していると言われている。


 その王妃が国王の耳を引っ張った後、俺に向かって頭を下げた。


「お久しぶりですね、マスター。娘たちがお世話になったそうですね」

「あ、いえ。俺も協力していただいた所もありますので頭を上げてください」


 多分この間のバハムートの件だろう。

 あれはエルノや長女の協力があってこそ迅速に還す事が出来たと思っている。俺1人だったらもっと時間が掛かり、もしかしたら津波の被害に遭っていたかもしれない。

 まずはその事を伝える。

 この人が俺1番苦手なんだよな……ことある毎にドラバカとくっ付けようとするから色々苦手なんだよ。

 そのせいで国王から未だに誤解受けてるし……


「ふふ。それでそちらの魔物は……」


 そう言って王妃はルビーの事を不思議そうに見る。


「あ、こいつは俺が契約ティムした魔物でルビーです」

「こんにちは」

「ごきげんようルビーさん。早速で申し訳ございませんが、マスターとはただのティム関係で?」


 そう言うとルビーは少し固まった。

 ルビー何か吟味するような気配を出してから、作った笑みで返しながら俺と腕を組んだ。


「ただの関係じゃないよ?私はマスターのお嫁さんだから」


 俺との関係を見せつける様に返すと、王妃は驚いたように目を大きく開けた後ドラバカを非難するような視線を送る。

 ドラバカはその目線を浴びて縮こまった。

 母親には頭が上がらない様だ。


 そしてその言葉を聞いてもっと驚いていたのは国王だ。

 何故かオロオロとしている。

 そこは父親として大喜びするべき所じゃないの?


「マスター。少しお話を伺っても?」

「え~?」


 その声色には否定する事を許す気はないとはっきりと伝えてくる。


「バハムートの件について娘達だけではなく当事者であるみな様にお聞きしたいのです」


 それは構わないし当然だとも思う。

 でもその後に個人的な質問が入る気しかしない。

 俺が誰を選ぼうが自由だろ!?


 -


 で、別荘で王と王妃にバハムートについての説明をする。

 詳しい内容に関しては長女とエルノの部下達が現在報告書として書いているので、そちらと照らし合わせながら確認すると言われた。

 そしてバハムートからの謝罪として魔道具をもらった事も一応報告。

 どんな魔道具かは聞いた事をそのまま話したが、効果の方はまだ実験していないので何とも言えない。


「承知した。それでバハムート様は何と?」

「まだ数が揃ってはおらず、王家への謝罪として今お作りになっている最中だとか」

「ふむ。ではマスター以外は下がってよし」


 あ~はいはい。ある程度予想してましたよ~

 でも俺は僅かな抵抗としてルビーを抱き寄せる。


「でもルビーと一緒に居させてもらう。相棒なら構わないよな?」

「構いませんよ。むしろルビー様からもお話を聞いてみたいと思っていましたので」


 むしろその場にいろとでも言わんばかりの圧力。本当に王妃は苦手だ。

 ドラバカ達姉妹も何か言いたげだったが大人しく下がった。

 野良猫とマダスも静かに下がる。マダスだけ「頑張れよ」っと言ってくれたのはちょっと助かった。多分マダスも経験した事があるのだろう。

 俺とルビー以外が下がった後、王は言った。


「楽にしてくれて構わない。これはただの話なのだからな」


 ただの話にしては随分と気合が入った様子ですが?特に王妃。

 そしてその王妃にメンチ切るのがうちのルビー。

 王妃の後ろに居る3体の天使たちは王妃を援護しようとしている様だが、ルビーの一睨みですぐに視線を逸らした。

 そして王から話を切り出した。


「次はどこに行くつもりかね」

「享で新月熊の調査をしたいと思っています。満月熊との違いを発見できればいいな~っと思っています」

「享で新月熊か、また危険そうな話だ。それに娘を連れて行くとはどういう了見かね」

「危ないから連れて行くなと言うなら父親としてそちらから説得してください。押しかけ助手なんですから」

「しかし新月熊とはまた発見するだけでも大変でしょう。享以外で探そうとは思わなかったのですか?」

「現在の論文によれば新月熊は享で目撃されている事が多いらしく、発見を第1に考えるのであれば享で行う事が最も効率がいいと考えました。それにあそこには満月熊もいるので、その差を調べると言う点でも都合がとてもいいのです」


 それが享に行く理由だ。

 新月熊と満月熊の生息を比べるためにはその2種が存在している場所で調べるのが最も手っ取り早い。新月熊を調べるために別の場所に行き、満月熊を調べるために別の場所に行くなど時間が掛かり過ぎる。

 それなら多少危険であっても両方生息している場所に赴いた方が調べ易い。

 それでも難色を出す国王。


「しかしあの場所はまさに秘境。地元民ですら神と崇める存在達への供物を運ぶ際に死者が出るとの噂だ。それに動物や魔物に襲われたのが原因ではなく、切り立った断崖や険しい山道が原因だと言われている。本当にそんなところに娘を連れて行くのか?」

「個人的には麓に村などがあればそこに置いて行きたいですがね。どれ程のものかまでは分かりませんが、おそらく付いて行けないと思いますので」


 あくまでもこれは予想だが、仮に中国の秘境と呼ばれる場所と酷似していた場合俺以外付いて来る事など無理だろう。

 写真やテレビで見た程度だが、前世の俺には100%たどり着けないような道だと予想できる。

 そしてこれから行く道は人間が通れるように板を張り付ける様な事すらされていないだろう。

 まさに天然の要塞とでも言うべき状態だとしたらドラバカも野良猫もマダスも連れて行くのは恐らく無理だ。大人しく待ってもらう方が無難だろう。

 ルビーに関しては……飛べるから大丈夫かな?


「それならばそろそろアイリアを返して――」

「いけません。アイリアにはもっと魔物使いとして成長するために旅に出す事を結局許したではありませんか。それなら親として無病息災を祈るのが親の役目ではありませんか?」


 王が言い切る前に王妃が口を挟んだ。

 どうやら飛び出し娘はただ飛び出しただけではなかった様だ。


 今更ながらそりゃそうだろうな、と思う。

 ドラバカだって一応お姫様の1人。5番目とは言え王族としての仕事をしているだろうし、国民からも慕われているのだから途中で投げ出す事など出来ない。

 押しかけなのは間違いないが、前の仕事を途中で放り出している訳がないか。


 そう思っていると王妃は頭を下げながら言う。


「あの子は目標に向かって真っすぐすぎるところがありますが、どうか少しだけ面倒を見てやってください」

「王妃様なのに簡単に頭を下げるのはどうかと思いますよ?まぁ押しかけですが助手なのは間違いないのでちゃんと守りますよ」


 そう言うと王妃の表情は一気に明るくなった。

 安心して任せられるという事で間違いないよな?この人色々と口挟んでくるから……

 そう思っていると王妃は言う。


「それでアイリアとは上手くいっていますか?」

「え、まぁはい。まだまだ不慣れな所はありますが大雑把な所を引き締めてくれるので助かってますよ」

「それは良かったです。マダスさんがおりますので不要と思われていないか心配で……」

「本当に色々役にたってますのでそう心配しないで下さい」


 これは普通に親として心配して言っているんだろうなっと思う。

 だと言うのに隣のルビーは俺の腕を強く掴んだ。

 まるで奪われない様にするように。


「ルビー?どうかしたか?」

「………………この人はお母様と同じ顔してる」

「ルビーの母親と?」

「うん。私とマスターをくっつけようとしてた時の顔とそっくり」


 あ、あ~

 諦めておりませんの?わたくしにはルビーがおりますのですが?

 そんな心の声が届くように祈りながら王妃に視線を送るが、王妃は軽く受け流してルビーを見て言う。


「ルビー様も娘の事をよろしくお願いします」

「何をお願いする事があるのかな?」

「それはもちろんライバルとして」


 あっれ~?こういうのは本人同士がするものじゃないの?

 何でルビーとドラバカの母親が火花散らしてんの?

 王に目線を送ると……あ、目逸らされた。

 そうですか~放置ですか~。それとも触れたくないだけ?

 ともあれそろそろ終わらせよ。


 俺は立ち上がって王と王妃に頭を下げる。


「それじゃ明日の準備もありますのでそろそろ」

「そうですね。明日はみなで見送りをさせていただきます」

「秘境では何が出るか分からないのだから準備は怠らない様に」

「ご忠告ありがとうございます。それでは」

「待ちなさいマスター!娘は、アイリアは、押せば落ちます!!」

「失礼します!!」

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