バーベキュー
夕方。キャンプで定番の晩飯って何よ?っと聞かれたらやっぱりバーベキューでしょ!
っという事で俺とマダスで仕込んでおいた肉を現在焼いております。
焼くのは俺とマダスが担当。女性陣は穏やかに待機中。
バーベキューコンロは2台あったので1台ずつ扱っている。
炭を入れて火を起こし、ある程度熱が出る様になったら肉を置いて行く。あとは時々野菜を挟んで焼いていけばいいだろう。
個人的に米も炊いておいたし。
ちなみに1部のパートナー達は肉の匂いがしていると今か今かとうろうろしている。
特にまだかまだかと待っているのはリーグだろう。リーグ用の皿の前で落ち着きがない。
他のパートナー達は人型なのでばかりなのでリーグほど目立っていない。と言っても遊びまくったから腹減ってるとは思う。
「よし。こっちはもういいぞ」
「「「「「いただきます!!」」」」」
………………一瞬で肉だけが消えた!?驚きながら顔を上げると全員口を動かしている。
あいつらそっけないふりして手と腹だけは正直ってか!?
「ほらリーグ。お肉食べていいよ」
野良猫はちゃっかりリーグの分も確保していたらしい。リーグ用の皿に乗っけるとリーグはがっつく様に肉に食い付く。
あ、ちなみにですが麒麟さんだけは別枠で飯を用意しています。
あの人草食と言うか、精進料理みたいな物しか食わないからな……なんだかんだで飯用意するの大変なんだよな。
ちなみに1番飯で手がかからないのは女王とシルフィーだったりする。
女王は直接口に入れるよりも生命力や魔力的なものを好んでいるし、シルフィーに関しては飯より菓子派。身体も小さいので大量に食べる事もない。
そんな中ちょっと気になるのはルビーだ。
いつもだったら誰より先に飯に食い付くと思っていたのだが、今はどこかよそよそしい。
詳しい事は分からないが、スイカ割りをして泳いだ後からずっとこの調子だ。
普段の天真爛漫な所が抜け、明らかに俺の事を気にしている。
ちらちらとこっちの事を見ているのに一定以上の空間を置いている。
今肉取った後も少し距離を置かれている。はたから見れば煙を避けている様にも見えるが……
「………………」
今眼が合ったのだがすぐ避けられた。嫌っている様な感じではないがそれでも目を合わせてくれないのはちょっとな……
こう言う時ってどうすればいいんだ?ここは放っておくべきか?それとも近付くべきか?
どうするべきなんだ?
「なぁマダス。こう言う時ってどうすればいいんだ?」
「う~ん。特に喧嘩したって訳じゃないし、明日には大丈夫だと思うよ?どうせ今夜も一緒に寝るんでしょ?」
「俺はそれでも構わないんだが……ルビー次第じゃないか?ってお前ら肉ばっかり食い過ぎだ!マダスの所で野菜も食え!」
やはりバーベキューの主役は肉のせいか、俺の所にばかり集まっている。
俺も肉食いたいんだぞ!少しは残してくれるよな!?
そう思いながら焼いていると、服を引っ張られる感じがした。
誰だと思いながら振り返ってみるとルビーがそこに居た。
「マスター……あーん」
まだまだぎこちない箸を使って俺の前に肉を差し出してくれる。
俺は素直にありがたいと思いながら肉を食った。
「えっと、どう?」
「うん。美味い。ありがとうな、ルビー」
「う、うん!もう1個」
「気にせず食っていいんだぞ?」
「でもマスターさっきから食べれてないから……あーん」
「あむ。ありがとなルビー。それから……」
「他のお肉食べたい?取ってくるよ?」
「いや、そうじゃなくて野菜も食えよルビー」
「………………あーん」
どうやら野菜は食べたくないらしい。
確かにバーベキューは好きな物を食う感じだから……今日ぐらいは許すか。明日は野菜多めのカレーにでもするか。
-
「………………」
「どうしたのアイリア。アイリアもそこに混ざってきたら?」
「……いい。勝てそうにないから」
「勝てそうにないって、前から反応なくてもずっとアタックし続けてたじゃない。急にどうしたの?」
マスターとルビーのいちゃつきを見ながらティナが肉ばかりほおばる。
その様子を見ているだけのアイリアにティナが疑問に思いながら聞いたら意外な返事が戻ってきた。
「だって今まではマスターの隣には私達ぐらいしかいなかったから少し心に余裕がったんだよ。でも今はルビーちゃんが居る。マスターも鼻の下伸ばしてるし、引き際かな~って思っちゃって」
「………………それ本気で言ってんの?今までずっと、諦めずにいたのに」
「だって聞いたでしょ?スイカ割りの時にマスターの本音」
そう言われると確かにアイリアは不利なのかも知れない。出会って少しの時間のはずなのに、そこまで言えるような関係になったのは確かに脅威だ。
だが――
「でも鈍感なあいつにずっとアタックし続けてたんでしょ?それだけ好きだったんじゃないの?」
「好きだよ。今も昔も。でもあいつは」
「確かに最後に選ぶのはマスターかも知れない。でもマスターはきちんと誰かを選んだわけじゃない。まだまだ戦っていけるって!」
「……流石マダスを勝ち取ったティナ。説得力が違う」
「当然。私は好きな人を勝ち取った女だからね」
誇らしそうに言うティナ。
学生時代。マダスは多くの女子生徒にモテまくり、マダスの知らない所で女同士の戦いが頻発していた。
その中で数多のライバルを倒してマダスの隣に立ったのがティナと言う訳だ。
ちなみこの海に居るメンバーは知らないが、学園でティナは戦乙女と後輩達から言われていたりする。愛しい異性を実力で射止めた恋愛戦争の象徴になっている。
「……もうちょっと頑張ってみようかな」
「頑張った方がいいよ。結局マスターって結構優柔不断だし」
「ぷっ何それ」
そんな女子同士の温かい友情の光景を遠くから見ている1団が居た。
それはアイリアの姉達である。
「アイリア、そう言う相談は私達にしてもいいのに……」
「……アイリ姉さん。マスターとアイリアの間を邪魔してた私達には無理だと思う」
「だよね~。私はまだ認めてないし」
「私は認めてますよ。魔物に対する知識や傷付けまいとする姿勢はよく知っていますから」
アイリは寂しそうに言い、イージスはアイリに対して冷静に言う。ウティアは頬を膨らませながら言い、エルノはワイン片手に言う。
「ちょっとエルノ。それじゃあなたは私達に付き合わされていたような言い方じゃない。1人だけ逃げようとしても逃がさないわよ」
「アイリ姉様。それは最初の頃の話です。ですがその後彼の性格や思考に関してはある程度把握したので、安心して任せても良いのではないかと思います」
「あ~!そんな事言っちゃっていいんだ!!お父様の前でも言っちゃっていいの?」
「いいでしょウティア姉様。私はちゃんと見定めた上で言ってますから」
「……でも、確かに1番安心出来る相手ではある」
「イージスお姉ちゃんも!何で!?」
「……他の見定めてない男に比べたらってだけ。……アイリア、よく他の国の王子に狙われてる」
「それって本当に1番危惧してる事じゃない……特に帝国の王子は厄介だよね~」
「彼もアイリアと同じドラゴン使いだと聞いていますから。おそらくそれも理由の1つでしょう。悪い噂も多いですが」
4姉妹同時にため息を付く。
帝国の王子は傲慢かつ強欲であるという噂が後を絶たない。と言うかもみ消されているだけで実際にそうなのだ。
特に見た目麗しい女性ドラゴン使いに目がなく、帝国内に生まれたドラゴン使いの女性は全員自分の物だと公言したぐらいだ。書類上ではもみ消すことは出来ても実際に聞いた各国の記者達がいるのでどうしてもその噂は広まってしまったのだが。
もしくはそれすらも目論見で、実際に全てのドラゴン使いの女性を自分の物にしようとしている、とすら言われているのだ。
「アイリアも厄介な男に好かれたわよね……」
「……ドラゴンはどの時代でも力の象徴。……時に天使や悪魔より求められる」
「と言うか私達にだけ縁談の話しすらきてなくない?アイリアには常にあっちこっちから縁談の話が来てるって言うのに」
「あ、すみませんが私は1つ考えてもいい縁談が来ているのでそちらも考えてますよ?」
さらっと言うエルノに他の姉妹が固まった。
そんな話耳にした事がないからだ。
「なん……だと……」
「え!ど、どこから来たの!?どこの国から縁談が来たの!!」
「東方の田舎の国です。土地だけは広いですし、農業に関してとても高い生産力がります。それにその国は麒麟を神聖視しているらしく、それも相まって縁談が来ました。帝国の食はその国がまかなっているとの話もあります」
「それって大丈夫なの?下手すれば帝国の傘下に入る様なものでしょ」
「そのあたりはお母様が話をしています。婿養子としてなら考えなくはないと。ですのでアイリお姉さまが心配するようなことは少ないかと」
ならば結構未来があるのではないだろうかと言う内容に、イージスが膝から崩れた。
「……私、1度も縁談が来た事ない……」
「イージスお姉ちゃん泣かないで!!私なんて、私なんてロリコンの変態王子からしか求婚された事ないし!!」
「私はお前達よりも早く結婚できるだろうからそんな心配はないな。長女が1番先に結婚するのは当然の事だ」
「「「いや、それは難しい(よ)(です)」」」
「何でそう言うの!!」
長女の言葉に姉妹特有の息の合った返しをする。
「……だって」
「来る相手全員と戦って」
「追い返してしまいましたから」
それ故にアイリへの求婚は一気に減少した。
求婚するのまでは上手くいっても、その後の腕試しで実力が足りない!!と言うものなのでどうしても力の無い者達では求婚しても結婚までにこぎつけないのだ。
アイリはオロオロとしながら言う。
「で、でも!私の夫、つまり未来の国王には力も必要でしょ!?それに全力で戦った訳じゃ!!」
「全力で戦ってないのに勝っちゃうんだよ。男の人にとっては辛い現実だって」
「そ、そんな……」
アイリも膝から崩れ落ちた。
その光景をバーベキューコンロ越しに見ているマダスはただ苦笑いをするしかなかった。




