海で遊ぶ
全員揃うと海に出て人それぞれ遊び始める。
と言っても俺の場合はルビーに付き合って、海の面白さなどを教える事の方がメインなのだが。
「マスター!マスター!ここの水、本当にしょっぱいよ!」
「飲もうとするなよ。汚いだろうから」
「マスター!マスター!ここの砂ってどうしてこんなにサラサラなの?」
「それは俺も知らんが……常に潮にもまれてるからじゃないか?」
「ちょっと泳いでみる!」
「一緒に行くからあまり遠くまで泳ぐなよ」
こんな感じでルビーははしゃぎっぱなしだ。初めて来る場所と言うのは、やはりそれだけでも興奮する事なんだろう。
俺にもこんな時代があったんだろうか……記憶を引き継いでの転生だから、海を初めて見た~みたいなはしゃぐことは少ない気がする。
まぁ今でも魔物に出会うと興奮するが、はしゃぐとは違うよな?
で、ここでちょっと問題発生。それはルビーはあまり泳げないという事が判明したからだ。
と言ってもカナヅチと言う意味ではない。ただ身体の構造的に水に浮きにくい身体だったという事だ。
実際泳ぎ始めは犬掻きであるところ以外は問題らしいところは見つからず、泳ぎ方を教えれば問題ないだろうと考えていた。
しかしルビーは少しでも泳ぐのを止めるとすぐ沈んでしまう。
帰る時は俺の背に乗せ、おぶって泳ぎながら戻る。ルビーの胸を背中に感じてとてもラッキーだ。
それでいったん砂浜に戻って軽く調べてみると、ルビーの筋肉が問題の様だ。
こんな話を聞いた事はないだろうか?ボクサーやボディービルダーの様な体脂肪率の低い人は泳ぎが下手。
端的に言うとルビーはその状態と言える。
様々な動物が水に浮くのは脂肪のおかげである。その脂肪が極端に少ないと水に浮くための浮力が十分に働かない事で水に浮けないのだ。
ただルビーの場合はちょっと話が違う。
おそらくルビーの種族は元々筋肉が他の生物より発達しているのでその分密度と言うか、重たいのだ。ルビーの健康状態は毎日チェックしている。なので脂肪が少なすぎる事はないはずだし、筋肉をつけすぎている事もないはずだ。
と言っても機械を使って精密に調べた訳ではないのであくまでも予想の範疇だが、多分大きく外れている事はないだろう。
なのでルビーは健康状態であっても、浮力となる脂肪よりも重い筋肉のせいで浮けないという事が判明したのである。
でもクロールとか平泳ぎとか覚えさせればそれなりに泳げるだろうけど。
「………………」
で、現在のルビーは拗ねて砂浜に座っている。
尻尾で砂浜を叩いている所を見るとかなり不機嫌のようだ。ルビーは不機嫌だったり怒ってたりすると尻尾で地面や床を叩く癖がある。
海に来て海で遊べないって知ればそりゃ不機嫌にもなるだろうな。
と言ってもルビーは全く泳げない訳じゃない。ただ筋肉が重くて浮けないだけの話なので海で遊ぼうと思えば遊べるが……浮けない分体力を消耗しやすいんだよな……
ドラゴンの体力は人間よりもはるかに上なのは分かるが、心配に思うのは変わらない。だって足つった時とか動けない=直ぐ溺れるに等しいからな。当然心配にもなる。
それに海で泳ぐだけが海で遊ぶと言う訳じゃない。砂浜で少し遊ぶとしよう。
「ルビー、スイカ割りするぞ」
「それ、海で泳ぐんじゃないの」
「砂浜でやるから問題ないって、とにかくおいで」
ルビーはまだ頬をかわいらしく膨らませていたが、無理やり手を繋いで連れてきた。
スイカ割り会場では既にマダスがスイカの準備をしている。スイカを割る棒はドラバカが持っている。何だかやけに気合が入っている様な気がするが。
「マダス、スイカはどれぐらいある」
「全部で5玉だ。でも全部割らせるつもりはないぞ。これ高級品らしいから」
「え、そこら辺で売ってるようなやっすいスイカじゃねぇの?」
「用意したのはウティア様だ。普通に食べるために持ってきたらしい」
「……よし、3玉だけにしよう。あとは人間用で取っとけばいいだろ」
「十分贅沢な使い方だよな……」
スイカのお値段は全く気にせず、ブルーシートもどきの上に置く。
ルビーはよく分からなそうな表情をしながら聞いてくる。
「マスター、スイカ割りってこの丸いのを割るだけ?」
「そうだ。と言っても目隠しして少し回ってからになるけどな」
言葉では分かり辛かったのか、ルビーは首を傾げている。それでは見て分かってもらおうという事でドラバカに実演してもらう。
大体はバットなのだが、今回は持ち合わせがないので普通の木の棒を使う。
ドラバカに目隠しをさせて、棒に額を付けてもらって10回転。フラフラしてきた所でスイカに向かって歩いてもらう。
「アイリア!もう少し左だ!」
「あと5歩分!」
「行き過ぎだ!2歩もどれ!」
フラフラと周囲の声を頼りにドラバカがスイカがあると思われる方に歩き、「そこだ!」っと俺が言うとドラバカは思いっきり棒を振り下ろした。
だがそこはスイカから1歩ほど離れた所であり、アイリアは目隠しをとって俺の事を睨んできた。
「とまぁこんな感じの遊びだ」
「へ~人間ってこういう遊びもするんだね」
「正確に言うと、これは俺が考えた遊びだから俺と一緒にこれをやった事がある奴は大体知ってる」
「マスターって色んな事を思い付くんだね」
尊敬そうに見ているところ本当にすみません。これは前世の知識です。
前世じゃこういう漫画のワンシーン的な事はやった事がないのでやって見たくなっただけです。それに1部からは食い物を粗末にするな!という人も居たし。
ついでに広まって流行ったのは富裕層だけというよく分からない結果になった。やっぱりみんな食い物は粗末にしたくないんだと。
「そんじゃ次はルビーやってきな」
「うん!!」
そう言ってルビーは面白そうにみんなの輪に加わった。
野良猫やドラバカと仲良くしている所を見ているとすごく安心する。ドラバカとの関係は俺に関するところ以外じゃ仲良くするようになっていたし、良好と言えるだろう。
ルビーは目隠しをされて回転し始めた。
「あなたって本当に面倒見が良いわよね」
気が付いたらアスモデウスが隣に居た。
水着は先程のヒモよりはマシになったが、布面積がかなり少ないビキニだ。さっきよりはマシ……なのか?
「突然どうした」
「だってマスターったら親のような目線でルビーちゃんを見てるんだもの。それになんだかんだでうちのイージスちゃんとも仲良くしてくれてるし、そう考えたら面倒見いいなっと思って」
「そりゃ個人的には親代わりのつもりでもあるから」
「夫じゃなくて?」
「……正直その話はいまだに実感持ってねぇよ。確かにルビーの事は好きだが……恋愛感情という意味で好きなのかまだはっきりと分かってない」
そう言うとアスモデウスは意外そうに眼を大きく開いた。
「ちょっとそれホント?私達が見るにすっごくイチャイチャしてるように見えるんだけど」
「俺にとっての好きは結構広い意味の方で使ってるぞ。確かにルビーの事は好きなのは自覚してる。でも恋人だとか妻とか、そう言う関係じゃないと我慢できないって訳でもない」
「……他の誰かに取られてもいいの?」
「そんな訳ない。でもな、一緒に居られるんならどんな関係でもいいんだよ。番でも、友達でも、親子でも良い。一緒に幸せになれるんならどんな風に呼ばれても構わないって感じか?」
正直自分でも自分の事をとらえきれていない部分がある。
ルビーとの関係。初めて会った時はとにかく親元に帰す間の親代わりって感じで接していた。でも再び会った時には番になりたいと求婚され、結果契約した。
確かに俺はルビーと一緒に居ると幸せだし、ルビーと離れる事など微塵にも思っていない。けれど恋人とかの関係には拘っていない。
どう言えばいいんだ?この感じ?
「はぁ、人間って本当に複雑。それともマスターが難しく考えてるだけ?」
「さぁ?他の連中と比べた事はないし、アスモデウスが言うように難しく考え過ぎてるだけかもしれない。でもこれだけは言える」
アスモデウスを正面から見て堂々と言う。
「俺はルビーに惚れてる。だから決して手放さない。今言えるのはそれだけだ」
「………………あ~あ。これはアイリアちゃんもエルノちゃんもダメか」
「なんだよ。ドラバカとエルノがどうした?」
「なんでも無~い。ただハーレム築く時は私に相談してね。アドバイスするから」
ハーレム築く予定はないし、何故そこにドラバカとエルノが入り込む?そう考えていると爆音が聞こえた。
俺とアスモデウスは驚いて爆音がした方に目線を動かすと、スイカがあったであろう場所が大きな穴が開いている。
その穴の近くには棒を振り下ろした格好のままルビーが固まっていた。
まさかルビーがやったのか?今の爆音。
と言うかスイカはどこ行った?まさか……
「う、う、うわあああぁぁぁぁぁぁ!!」
目隠しをその場で外して海に向かって走るルビーの姿があった。
「って!!お前水に浮けないの忘れてるだろ!帰って来い!!」
「あ~あ。やっちゃった」
アスモデウスが嬉しそうに言うなか、俺はルビーを追いかけて海に入るのだった。




