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やっと終わった

 俺は海面から顔を出し、思いっ切り息を吸った。水の加護があったとはいえ、あのクジラが水に突っ込む勢いのままだった訳だから少し疲れた。

 胸の中のキュイも無事で、俺の頭の上に上がり身体を震わせて海水を飛ばす。


 そう言えば海面に出てからは人魚達の演奏や歌声が聞こえない。水中でしか聞こえない曲なのだろうか?

 とにかく、今回はこれでいいはずだ。クジラは落ち付いて人魚は仲間の元に帰った。あとは……集落まで護衛とか必要なのか?要らない気がするけど。


『マスター!!』


 そう思っているとルビーが飛んでやってきた。俺の目の前で飛んでいる姿はとても心配しているように感じる。

 俺は安心させるように笑ってから謝った。


「心配かけたなルビー。もう大丈夫だ」

『……心配、させないでよ』


 そう言って心配そうに俺の事を鼻先で突っつく。

 もうこれ以上の事件は起きて欲しくないし、元々バカンスのつもりで来たのだから後はもうゆっくりしていたい。

 となれば近付いてきている船に戻りますか。


「ルビー、俺を船にまで乗っけてってくれ。今日は疲れた」

『うん。分かった』


 そう言ってルビーは俺の事を掴んだ。どうやら濡れた俺を背に乗せるのは嫌なようだ。ま、普通はそうか。

 こうして俺は船の甲板まで飛んで帰る。


「おーい!マスター無事か!!」

「大丈夫ー!」

「……魚の餌になってない」

「この場合はクジラの餌じゃない?」

「全員まだ気を緩ませるな!人魚達が集落に戻るまで警戒を怠るな!!」


 甲板にはマダス、野良猫、ドラバカ以外の4姉妹がいる。エルノさんは少し離れた所で麒麟さん達と一緒に休んでいる。こちらに気が付くと手を振っている。

 ドラバカが見当たらないのは少し気になるが、とにかく甲板に降りた。


「ふぅ、ただいま~」

「ただいま~、じゃないよ!突然転移でどこかに行ったと思ったら、クジラをエルノさんと2人だけで止めようとするなんて無謀だよ!」

「そうよ!マダスや私だけじゃなくて、アイリアなんてずっと心配してて、ようやく今落ち着いたところなんだから」

「ドラバカの奴どこに居るんだと思ったら、寝込んでるのか?情けねぇな。このぐらいで」

「いや、情けなくないから。バハムートに立ち向かっていく方が異常だから」


 野良猫がなんか言ってるが気にしない。

 それより服の方が気になるんだよな……海水の着衣水泳とかかなり久しぶりだぞ。学校の授業以来じゃないか?あの時は何の役に立つんだと思ったが、意外な所で役に立ったな。

 とにかく脱いで絞って乾かすか。どこで乾かそう?


「と言うか本当にあなたって行動するのが早過ぎない?いっつもこんなんなの?」

「ほとんどはそうですね。普段は観察とかなのでまだマシなんですけど」

「あいつのの頭どうなってんの?普通はまず自分の危険について考えるでしょ」

「……明らかに異常」


 3姉妹の言葉にマダスが律義に返す。

 ちなみに現在の俺は既に上の服は全部脱いで現在1枚1枚絞っている所。

 次はズボンだな。


「ちょっと、マスターの身体前よりもよくなってない?本当に食べちゃダメなの?」

「何であなたはそう言う事しか考えないんですか?確かに引き締まっているとは思いますが」

「……普段からあっちこっち歩ったりしてるからでしょ」

『儂にはよく分からんが、良いのかのう?』


 4姉妹のパートナー同士で話をしている。アスモデウスの目線が怖い。

 そしてエルノさんは俺から思いっきり顔を背けた。と言っても横目でちらちらと見ている様な気がするが。


 そして最後にルビー。

 ルビーは人型になって俺にずっとしがみ付いてる。服を絞り終わってからずっとだ。

 正直に言うとすっごく温かい。元々ルビーの体温は高く感じがしたが、こうして直接触れ合うとよく分かる。

 それにしても柔らかいな……動物や魔物相手だったら何度も触れてきたが、人間やそれに近い存在とはあまり触れあってきてなかったかも。


「ルビー?」

「……マスターのバカ」

「悪かったって。俺にはあれ以外の方法が思い付かなかったんだよ」

「でも心配かけた」

「それはそうだが……」

「心配、かけた」


 しがみ付きながら俺の目をしっかりととらえて言う。

 俺はルビーの頭を撫でながら謝る。

 だがルビーはまだ不満そうだ。頬を膨らませて不謹慎ながら可愛い。


「……どうしたら許してくれる?」

「満足するまで一緒に居させて」

「それでよければいつまでもどうぞ」


 それで済むのであれば好きなだけ抱き付いていればいい。ルビーの頭を抱き寄せ、少しでも満足するまで抱き締める。

 他の船員からものすんごい目線を感じるが、スルーしてやり過ごす。


「マスターが返って来たって……何してるのよ2人とも!!」


 人肌で温まっているとドラバカがやって来た。キュイはドラバカの登場に喜んでドラバカの頭に乗っかる。

 にしても煩いな。


「何だよドラバカ、今回俺すんげぇ頑張ったんだぞ。人肌で温まるぐらい許せ」

「ぬ、濡れた服を脱いで乾かすのは仕方ないけど、ルビーちゃんにくっ付くのはどういう事なの!?」

「だって温かいし、パートナーだし、ルビーが1番頼みやすかったし」

「それでも……それでも裸で抱き合う事はないでしょ!!」

「パンツぐらいは履いてる。ルビーは何も着てないけど」

「それが問題なの!!ルビーちゃん服着てよ!」

「マスターの身体冷え切ってるからこのぐらいしてあげないとダメなの」


 ルビーはそう言うと更に身体をくっつける。滅茶苦茶柔らかいな……特に女性らしい部分が。

 そうするとドラバカはさらに顔を真っ赤にする。頭の上のキュイはなだめるようにか弱く鳴く。


「キュ~」

「キュイ、これは人間の問題なの。付き合っている訳でもない男女が抱き合っちゃダメなの!!」

「医療行為」

「そんな言い訳通用しません!!」


 ルビーの言葉に過剰反応し過ぎだろ。

 仕方ないと思いながらルビーに言う。


「ルビー、温まったからそろそろ大丈夫だぞ」

「ヤダ」

「ヤダって……」

「これは心配させた罰でもあるんだから離れない。私が満足するまでマスターは大人くしてないとダメ」


 そう言われると弱いな……

 困った表情をしてドラバカを見ると、ドラバカは意を決した様にして俺の後ろに回る。

 何するんだろ?と思っているとドラバカも抱き付いてきた!?え、何してんの??


「な、なら私も抱き付いたっていいわよね……私だって心配したんだから……」

「む~」


 目の前のルビーから不満そうに唸り声をあげる。が、ドラバカを退けるような行動には出ない。

 どうやらドラバカにも結構迷惑を掛けた様だ。だからルビーも何も言わないんだろう。

 と、思いつつも1つ気にしていた事を言う。


「なぁ2人とも、そろそろ服を干したいんだが」

「「それよりも構え」」

「……はい」


 ちなみに服はマダスが干してくれた。海水特有の匂いが付いていたので、洗って干してくれた。本当に助かります。


 それから今回のまとめ。

 クジラと人魚達は無事に海の底だかどっかに帰って行った。俺達が警備していたからか、あのクジラを敵に回したくないからか密猟者が現れる事はなかったので安心した。

 その後はゆっくりとパールクラウンに帰ったのだがその間が面倒臭い。


 俺に抱き付くルビーとドラバカに混じってアスモデウスもくっ付いて来そうになったところをラファエルさんに止められたり、エルノさん以外の姉妹がいい加減離れろと迫ってきたり、何故かこう言う時だけ仲がいいルビーとドラバカのファインプレイ連続で回避したりと色々大変だった。


 そしていつの間にかいい雰囲気になっていたのがマダスと野良猫だ。夕日をバックに映画のラブシーンのような様子だったので羨ましい。

 俺は2人も美少女が居る?こういうのは雰囲気が重要だと思う。

 美少女がしちゃいけない顔をしている2人に挟まれて見ろ、めっちゃ怖いから。

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