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帰せるかも?

 朝が目が覚めると、いつの間にか俺のベッドに潜り込んでいたルビーが寝息を立てていた。

 カールズトークは夜中まで続いたのか、静かな寝息を立てている。

 俺はそんなルビーを起こさないように、そっとベッドを出た。

 今日も人魚の朝飯と健康状態の確認を行わないといけない。

 そのため早く起きたという事だ。


 ぱっぱと着替え、歯を磨いたり顔を洗って欠伸をしながら厨房へ向かう。

 欠伸をしながらあまり重くない魚料理って何だろうと考える。

 ……無難に焼き魚定食っぽくいくか。

 丁度鮭の切り身もあるし、それで行こう。


 欠伸をしながら米を炊き、眠気と戦いながら味噌汁を作る。

 みそ汁の具はわかめと……豆腐入れても人魚食えるよな?

 上半身人間だから食えるとは思うんだが……大丈夫だよな?

 雑食である事を願い、普通に豆腐を入れた。


「おはようございます、マスターさん」

「おはようございます、ラファエルさん」

「いい香りですね。東方のスープでしたっけ?」

「はい。出汁は魚から採っているので丁度いいかと。ただ今更ながらアレルギーチェックしてなかったな~っと思いまして、大豆大丈夫ですかね?」

「ふふ、そちらは私の方で確認しておきました。アレルギーないようですよ。ですので安心して作って下さい」

「すみません。俺の『救世主』だと原因とかアレルギーの確認とかは出来ないので」


 あくまでもこのスキルは癒すだけ、原因を突き止めたり、発生した理由を調べるのは不向きなのだ。

 それに比べてラファエルさんは本当に凄い。

 医療系の知識やスキルを大量に保持しているのだから。


「十分マスターさんも凄いと思いますけどね。治療するには相手の緊張をほぐさないといけませんし、そこがネックになる事があるんですよ。警戒心が強い相手だとなおさら」

「ですよね~。相手が心を開いてくれないとできない治療もありますし、まぁ俺の場合はスキルでどうにかできていると思いますが」

「そうですね。あなたからは魔物に気に入られる空気と言うか、雰囲気がありますので、きっとそれが彼方のスキルの正体なのでしょう」


 スキルの正体か。

 あんまり考えた事なかったな……


「ところでスキルって増える事はあるのか?」

「スキルの取得の事でしょうか?それなら一応なくはありませんが……かなり稀な事ですよ。それこそ本当に命の駆け引きであったり、長い時間研鑽を怠らなかった者のみですよ。ただ生きているだけでしたら、絶対に手に入る事はないでしょう」


 やっぱりか。

 どっかのゲームとかチート系の漫画みたいにはいかないんだな。


「さらに言いますと、ほとんどのスキルは才能に依存したものが多いですね。もしくは種族としての進化による取得か。まぁ私の様に神に創られた存在からするとまた違いますが」


 本当に神様は居るのか。

 天使様が居るという事はいてもおかしくはないと思ってたが……天使の口から直接言われるとな。


「ちなみにですが、私たち天使もとあるエレメンタルドラゴンによって創られました」

「え、そうなの!?」

「はい、光のエレメンタルドラゴンです。普段は寝ているので平和なものです」


 な~んかとんでもない事を聞いちゃった気がするが……みんなには黙っておこっと。

 それよりも今は人魚の事だ。


「所で人魚ちゃんトイレしてた?」

「ここに来る前に確認しておきました。少々柔らかめでしたが、おそらく食べ過ぎが原因ですね。量も多かったように感じます」

「本当に助かります。魔物使いとは言え一応相手は女性ですから。その辺微妙なんですよね~」

「他種とは言え異性でのそう言う確認となると、難しい事は多いですから。私も男性の診察の時はちょっと気恥しい事が……」

「ラファエルさんは人間の治療も行っているんでしたっけ?」

「はい、重篤患者を専門に治療しています。その際の病気の原因、菌や他の方からもらった物なのかどうか、もしくは初めに感染したのが本当にその方なのか、調べる必要もありますからね。働いていると大変ですよ」

「さらに加えて長女様の軍事関連もか。仕事多過ぎません?」

「軍事関連に関しては私の他にも天使ひとがいるので大丈夫ですよ。ですのでほとんどは戦争時の衛生や治療施設などがメインですね」


 軍事って戦うだけじゃないのか……

 そういやナイチンゲールが現れるまでの戦死理由って拠点の衛生面が問題、だったか?

 傷口に菌が侵入して腐ったとか、膿んだとか、そう言うのが原因だったような……


 とにかく、軍事面は武器揃えるだけじゃないって事みたいだな。

 うん。


「いい匂いがする~」

「お、ルビーおはよう」

「おはよ~マスター。今日の朝ごはん何?」

「シンプルに焼き鮭定食だ。もうすぐできるからちょっと待ってな」

「それじゃ先に人魚の所に行くね~」


 そう言ってフラフラと厨房を出た。

 その姿に俺とラファエルさんは軽く笑う。


「そんじゃ腹ペコのために飯持って行きますか」


 焼き上がった鮭や味噌汁を皿に乗っけるのだった。


 -


「マスター、今日人魚を放しちゃダメかな?」


 3人で飯を食っている最中に、ルビーが言った。

 人魚も飯を食っているが、少し離れた所で食っている。

 これって一緒に飯食ってるって言えるのか?


「出来なくはないが……人魚の棲み処って大雑把にしか知らないぞ。それが分かるまではな……」

「そんなの人魚ちゃん自身に聞けばいいでしょ?早く帰りたいって昨日言ってたし」

「その場合俺ちゃんと群れに戻れたか確認するまでしつこくいるぞ。それにこの前みたいに網に引っ掛かる用の事も避けたいし、と言うか肝心の船がない状態でどうやって家に送れと?」

「そんなの私が背中に乗せて」

「前見た時そんなに大きくないように感じたが?」


 前と言っても最後にドラゴン状態を見たのは契約する時だったから……ほんの少しだけだな。

 そんな急に成長しないだろう。

 それに人魚を帰すのはよくても、他の連中も絶対一緒に来たがるだろうからな。


「ちょ、ちょっとは成長してるもん」

「出来るだけ早く帰すって所は構わないが、手段がないんだよ。ドラバカに船を頼むとしても、船員が居なきゃ動かしようがない」

「な、なら海の住む魔物に力を借りて」

「そんな当てはない。こればっかりはドラバカと相談するしかないんだよ。それに障害は網だけじゃない、ハンターたちもだ」


 俺としては漁師の網よりもこちらを心配している。

 いまだに人魚の不老不死伝説を信じてるバカはいるし、単に下心だけで奪おうとする連中も居るだろう。

 そう言うバカを警戒してるんだよ。


「……じゃあ今すぐは無理?」

「無理だな。最低でも船の手はずだけでも」

「それなら多分大丈夫ですよ」


 俺とルビーが話している間に割って入ったのはラファエルさんだ。


「大丈夫って、小型船でも所有してるとか?」

「もっと大きい船だって用意できると思いますよ。最低でも人魚さんを乗せられる船となりますと、大型船でないといけないでしょうし、ハンターに対する備えと言う意味でも必要だと思います」

「なら余計に無理じゃ」

「今回はアイリ様、もしくはエルノ様の協力があれば大丈夫だと思いますよ。人魚の送還となると、アイリ様よりもエルノ様の方が良い気がしますが」


 ………………あ、忘れてた。

 そういやドラバカの姉達ってみんなお偉いさんじゃん。

 その権力を使えという事か。


「でもそんなすぐには動けないだろ?」

「恐らく大丈夫だと思いますよ?エルノ様は既に船の準備をしていましたし、マスター様とエルノ様は親しい仲ですので頼んでも問題ないかと」


 親しいって言われるほどでもないと思うんだけどな……

 と言うか既に船の準備してるとか、手際よすぎるだろ。


「……そんじゃ頼んでみるか?」

「うん!」


 そう言うルビーは口に米粒を付けたまま喜ぶ。

 人魚はよく分からない表情で驚いてた。

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