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ドラバカの別荘

 俺は人魚を抱えてドラバカの別荘に向かう。

 ちなみに人魚は姫様抱っこ状態だ。

 脚の所が海洋生物だから負ぶったりはできないからだ。

 となると自然とお姫様抱っこしか選択肢がなくなる訳である。


 そんな状態で高級住宅街を歩くのはやっぱり悪目立ちするよな……

 普通魔物を運ぶときは檻とかに入れってる事が多いし、周囲への安全のためと言う面もある。

 基本的に契約ティム関係でない魔物は野生動物と扱いはあまり変わらない。

 違うのは精々危険視している度合いぐらい。


 魔物は魔法を使える個体が多くいるため、檻も魔道具そのものになっている。

 簡単に言うと魔法を使えない様にする檻だ。

 その檻の中では魔法を阻害する効果があるらしい。


「ところでマスター?この子の怪我が治ったらどうするの?」

「当然親元に返すさ。それが子供にとっては最善だろ」

「でも場所とか分かるの?」

「それは探してみるしかないな。一応人魚は巣を作って群れて暮らしてるって話だし、どうにか探し出すしかないだろ。最低でもこの子の群れの近くまで行かないと、また迷子になったりしたら意味が無くなっちまうからな」


 人魚が不思議そうに俺を見るので優しく笑っておいた。

 すると人魚は慌てて顔をそむけた。

 そりゃまだまだ人間を警戒してるよな。


「……マスターって魔物にはあんなに優しいのにどうして人間には厳しいんだろう?」

「さ~な、人間同士より魔物の方が付き合い長いんじゃねぇの?」

「あ、私も聞いた事ある。マスターは実はいいとこの魔物牧場の次男だって噂あったよね」


 ドラバカの疑問にマダスと野良猫が答える。

 その答えは簡単だ。

 ただ単に人間より魔物の方が好みなだけだ。


「野良猫、まーだその噂信じてたのか?魔物牧場を親が経営してるのは本当だが、大して名のない牧場だぞ?魔物より動物の方が多いし」

「え、どっちも育ててるの?普通の動物と魔物」

「まさか。それぞれ違う所に居るに決まってるじゃん。普通の動物用の牧場と、魔物用と別々に決まってるだろ?それに魔物用の方は1体か2体しか入れないような狭い牧場だし」

「へ~。でも十分凄くない?動物用と魔物用と2つあるのは」

「……どこも凄くねぇよ」


 学校の行事などで様々な施設を巡った事もあるが、俺ん家の牧場は本当に大した事はない。

 設備も充実してないし、狭い。

 それだけの貧乏牧場だ。

 ………………それだけだ。


「マスター、ここよ」


 そう言ってドラバカが止まったのは高級住宅地の1等地、そこにデカデカとある家だ。

 これ維持だけでどんだけの税金が使われてんだ?

 お国の金ってこういう所にも使われてんじゃねぇの?

 俺の疑問はドラバカには当然届かないのだろうが、それでもやっぱスゲ~。


「アイリアです。門を開けてください」


 久しぶりにドラバカが王女らしい声で言う。

 さっきのは突然でパニックしてたからなし。


「その前にご友人3名の証明書をお見せください」


 さっさと通してほしいが、これは仕方ないか。

 と言っても証明書である、特級魔物研究者の証明書をルビーに出してもらう。

 門番はマダスと野良猫の分は普通に見ていたのだが、俺の証明書を見たとたんに表情を曇らせた。


「アイリア様、本当にマスターと言う男を入れなくればいけませんか?」

「当たり前です。彼の持つ特級魔物研究者の肩書は嘘ではありませんよ。それともただの偶然で通れるほど容易な試験だと?」

「そ、そうではなく実は――」

「ドラバカ、いい加減入れてくれないと人魚の方がもたないぞ。持ってた水だけじゃそろそろ限界だ」


 人魚は魚のように常に水の中に居ないといけない、という事はないが、それでも長時間の断水は体調に変化をもたらす。

 今は持っていた飲み水をかける事と、俺の救世主で繋いできたが、そろそろ限界だ。

 既に炎天下の中運んできたのだから人魚の体温が上昇している。

 いい加減水の中に入れないとヤバい。


「早くしなさい。私の前で魔物を死なせる気ですか?」

「い、今開けます!!」


 ドラバカの冷たい声により、ようやくデカい扉を開けた。

 扉が開けきる前に聞く。


「ドラバカ。この今プールってもう用意出来てるんだよな?」

「出来てるわよ」

「場所は」

「南東の屋外プール。一応天井の開け閉めできるから、天井を閉める事も出来るけどどうする?」

「……まずは屋内の方からだな。ちなみの他に動物や魔物は」

「いる訳無いじゃない。元々ただの別荘なんだから、魔物の研究施設じゃないの」

「……今は開いてるのか」

「開いてるはず。一応開けとけって言っといたから」

「そうか、それじゃ先に行く。ちょっと我慢してくれよ」


 そう言って扉が十分に開いてから俺は走り出した。

 身体能力強化で素早く、真っ直ぐプールに向かう。

 人魚は突然の行動に驚いて、俺に回す腕の力を強くする。

 俺は開いた天井に向かって思いっきりジャンプした。


 天井は余裕で俺が通れるぐらいに開いていたので、何のためらいもなく跳び込んだ。

 人魚は怖かったか目を強く閉じている。

 俺はそんな人魚にダメージを与えないために俺は背中からプールに落ちた。


 ………………思っていたよりも痛い。

 そういや今ほどの高さで水に跳び込んだ事はないな。

 水中で目を閉じたまま水面まで泳いで思いっ切り息を吸い込んだ。


「ぷっは!おーい人魚、どこも痛くしてないか?」


 そう言うと人魚は恐る恐る周りを見てから俺の胸を何度も叩いた。


「地味に痛い地味に痛い。それよりもう腕を放すぞ」


 そう言ってから、抱き締めていた腕をそっと放した。

 すると人魚は直ぐに俺から泳いで離れた。

 そして遠くから警戒して俺を睨む。

 あんなプールに飛び込みじゃ嫌われて当然か。


 ふと暗くなった気がして上を見ると天井が閉まっていく。

 本当に閉じたり開いたりできるんだな。

 これ費用どれぐらい掛かってるんだろう?


 そう思いながらも俺はプールから出る事にした。

 何と言うか、イルカショーにある岸みたいな奴を発見した。

 そこに向かって泳ぎ、陸に上がった。


「……思ったより潮臭いな。脱ぐか」


 なので服を脱いでとりあえず絞る。

 あとでちゃんと洗わないとな。


「マスター!大丈夫!」

「おールビー!大丈夫だ!」

「大丈夫ならよかった。でも何で服脱いでるの?」

「海水で濡れちまったからな。脱いで絞ってた」

「これが海水か……しょっぱい!!」


 ルビーが試しに指に付けた海水を舐めて言った。

 俺は笑いを我慢しながら言う。


「そりゃそうだ。海の水はしょっぱいんだ」

「何でしょっぱいの?」

「確か……海の水と岩の成分が何とか……とにかく、しょっぱいのは海の水が岩とかを削っている間に出来たんだ」

「岩?そう言えばしょっぱい岩ってあったかも……」


 それって岩塩の事か?

 岩塩ってそんな内陸にあったかな?


「ま、詳しい理由は知らねぇ。俺は地質調査じゃなくて、魔物の研究者だからな」

「ふ~ん。マスターでも知らない事ってあるんだね」

「人間は万能からほど遠い生き物だからな、仕方ねぇよ」

「それからマスター、気付いてる?」

「殺気の事か?」

「うん。マスターに向かって強い殺気を感じる」


 ルビーが警戒してこのプールの出口を警戒している。

 その殺気を感じながらルビーに言う。


「ルビーは手を出すなよ。これは俺の問題だし、ルビーに頼る程じゃない」

「でも強そうだよ。心配だから手伝う」

「ダ~メ。一応は知らない仲じゃないし、おちょくるのは得意だ。って事でルビーは俺の服持っててくれ。ちょっと遊んでやる」


 俺が出口に向かうなか、ルビーは俺の服を持つ。

 そして心配そうに言う。


「ホントにいいの?お父さんたちに似た気配なんだけど……」

「大した事ないから。所詮本気で人を殺した事がなく、引きこもりで、実力差の分かってないバカの集まりだからよ。それよりルビーが巻き込まれない様に気を付けてくれ。もしルビーを傷付けられたら、本気で殺したくなる」

「………………分かった。その人たちが殺されない様に後ろに居る」


 そう言ってルビーはプールから動こうとしない。

 その方が楽かな?

 あのバカ共の狙いは俺1人だ。

 門番が渋っていた理由もそれが原因だろう。


「それじゃ、いっちょ遊んでやりますか」

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