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魔物の出逢いって何でこう

 機関車に乗って数時間、ほんのりと潮の香りが漂ってきた。

 どうやらうたた寝をしている間に随分と海に近付いていた様だ。

 目を覚ますとルビーが俺の膝を枕にして寝ている。


「よう、起きたか」

「お~マダス、おはよ。他の2人は?」

「そっちに居る。向こうは向こうで話してるよ」


 視線の先にはお菓子を片手にドラバカと野良猫が笑いながら話している。

 学生時代は数年前なのだから、あまりノリは変わらないのかも知れない。

 俺としては随分と前の事のように感じるが。


「どのぐらい寝てた?」

「2時間ぐらいかな。にしても相変わらずいいタイミングで起きるな」

「相変わらずって何だよ?」

「野外学習でも、修学旅行でも目的地に近付くと起きたじゃねぇか。もしかして自覚ない?」

「ないな。て事はもうすぐなのか?」

「ああ。もうすぐだ」


 先程よりも潮の香りが強くなっている。

 もうすぐ到着と言う話は本当のようだ。


「ん、んん?」


 俺が起きたせいか、ルビーが目をこすりながら起きてくる。


「マスター、着いた?」

「おはよルビー。もうすぐ着くってさ」

「すんすん、嗅いだ事のない匂いがする」

「多分潮の匂いだろ。もうすぐ海だ」


 そう言いながら外を見ると海が微かに見えた。


「ルビー、もうちょっとで到着だ。海が見えたぞ」

「え、本当!」


 そう言ってルビーは窓から顔を出す。

 本当は注意しないとダメなんだろうが、はしゃいでいる姿を見るとどうも微笑ましく思ってしまう。

 ルビーは微かに見える海を見て「お~」っと言っている。

 尻尾もよく振っているし楽しみなのがよく分かる。


「ルビー、パールクラウン駅は海のすぐ近くにある。少し見てからお姫様の別荘に行こう」

「ホントマダス!?」


 さらに尻尾を激しく振るルビー。

 その話が聞こえていたのかドラバカと野良猫がこっちを見て笑っている。


「ちょっと寄るぐらいなら構わないわよ。どうせ駅の近くだし」

「だってよ、ルビーちゃん。楽しみだね」

「うん!!」


 嬉しそうに笑うルビーを見て、本当に連れてきて良かったと思う。


『みな様、間もなくパールクラウン駅です。お忘れ物、落し物のないようにお願いします。繰り返します――』


 機関車の中で放送が流れる。

 それじゃすぐに出れるように荷物を背負っておきますか。


 -


「マスター!早く早く!!」

「1人で遠くに行くなよ!!」


 パールクラウンに到着してすぐルビーは機関車を降りて飛び出した。

 そんなに楽しみか。


 パールクラン駅を降りて改札口を出ると、確かに綺麗な砂浜が広がっていた。

 ルビーはそれを見て一直線に向かって海の方に走っている。


 実を言うと俺達は野外学習などで結構あっちこっちに行っている。

 海だったり山だったり、とある魔物研究所に行ったりと色々だ。

 その地特有の魔物に関してだったり、魔物の保護施設など見たり体験した。

 そう言う体験を経ていろんな職種に就いたんだろうな。


「ルビーちゃん随分はしゃいでるね」

「だな~。俺も童心に戻ってはしゃいだ方がいいか?」

「マスターの場合はルビーちゃんの保護者しないと」


 それもそうか。

 野良猫の言葉に頷く。

 ルビーはしゃぎ過ぎてるもんな。


 まぁあっちこっち行ったっと言っても、かなり真面目な感じで遊びっぽさは全然なかったからな。

 遊び感覚だったのは修学旅行ぐらいか?

 女子風呂突入隊とか作ってる奴らいたな……

 俺は戦力的に無理だと判断したので引いたけど。


「マスター!!なんかあっちに人だかりできてるよ!!」


 砂浜におりていたルビーが指で指しながら言う。

 その方向に視線と耳を向けると何やら違和感を感じる。

 何か面白い物があって出来た人だかりではなさそうだ。


「それじゃちょっと行ってくるわ」

「行ってくるって全員で行けばいいだろ。どうせ別荘なんてお姫様しか場所知らないんだから」

「そうよ。それに嫌な雰囲気もあるからね」

「当然私も付いて行くから。私がいると色々便利よ?」

「はいはい。それじゃ全員で行きますか」


 こうして人だかりが出来ている場所に向かって歩く。

 その人だかりに近付くほど喧騒が大きくなる。

 人を避けながら行くと、網を持った男性2人が1体の魔物に向かって網を向けている。

 魔物は警戒して腹ばいで逃げ回る。

 そして腹ばいになっている魔物に驚いた。


「初めて生で見たな、あれ人魚じゃねぇか?」

「そうだな。初めて見た」


 人魚、海洋哺乳類。

 上半身は人間で、下半身は魚という不思議な生き物、ではない。

 この世界の人魚は確かに上半身は人間なのだが、下半身は魚ではなく海洋哺乳類だ。

 手っ取り早く言うとイルカとかクジラとか、そう言う海洋哺乳類の下半身を持っている。

 今回の子は……多分イルカタイプだな、綺麗な流線形に背びれが見える。


「ドラバカ、パールクラウンに人魚って居たのか?」

「一応居るとは聞いてたけど、ギリギリパールクランの領域内に居る程度の認識よ。もっと沖の小さな島を縄張りにしているはずだから」

「それにこの辺じゃ人魚は神聖視されているの。何でも海の神様のお使いらしいわ。つまり天使の海バージョンね」


 ドラバカの説明と野良猫の追加説明で人魚が居るのは分かった。

 だがドラバカの説明だともっと沖にいる様だし、ここにいるのは迷子、もしくは何らかのトラブルに巻き込まれと見ていいのかも知れない。


 とにかくあの網持ってる2人は素人だな。

 ここにいたライフセイバーって所か?

 とにかく砂浜に居る客の安全のために網を広げてるって感じか?

 とにかくあれじゃ余計警戒されるだけだ、代ろう。


「すみません。魔物のブリーダーです。あの子の捕獲を代ってもいいでしょうか?」


 魔物使いの証を見せながら2人に近づくと、2人は網を持ち上げる手を下ろした。


「え?ああすみません。一応私達もライフセイバーの資格で試験だけは合格したのですが、こういうケースは初めてなもので」

「一応仲間から人魚は神聖視されていると聞いたのですが間違ってはいませんか?」

「あ、はい。それは本当です。地元の方から見るとそうらしいです」

「そうですか。では代わっても問題ありませんね」

「お願いします」


 さらっと片方のライフセイバーが地元民ではないようだと分かったが、俺がやる事は1つだけだ。


「1人で行くの?」

「その方が俺はやり易い」

「でもすっごく警戒してる」


 ルビーが人魚を見て言うが俺は1人の方がやり易い。


「大丈夫だって。それより助けないと」


 ぱっと見まだまだ子供のようだ。

 下半身がイルカのために少し体長が長く見えるが、人間の部分はどう見ても子供だ。

 黒く短い髪に、つるっぺたで裸の上半身。

 その眼は怯えと警戒の色が強く出ている。

 下半身のイルカの部分は砂のせいか所々傷付いている。

 速めに捕まえないとな。


「よ~し、捕まえるか」


 俺は何のためらいもなく人魚に近付く。

 人魚は近付く俺に向かって唸るが俺はしゃがんで左手を差し出す。

 そして警戒心が強くなり過ぎたのか、人魚は俺の左手に噛み付こうとした。

 俺は左手から素早くわざと左腕を噛ませるように移動させる。


 人魚が噛みついた後、俺は空いていた右手で人魚を抱き上げた。

 人魚は驚いてじたばたするがその程度では俺から逃げられない。

 そして俺は人魚と自分を癒すために、救世主を発動させながらドラバカに言う。


「ドラバカ。この辺で人魚の治療を正しく行える施設ってあるか?」

「それよりうちの別荘に運んだ方が速いわ。マスターは大丈夫なの?腕」

「どうせスキルですぐに癒せる。この子の怪我も治したがすぐ海に戻す訳にもいかないだろ?」

「当然。別荘に連絡してすぐその子が入っても大丈夫なようにプールの調整しておくから」

「待ってください。彼女はちゃんとした治療施設に送ります」


 そう言ったのはライフセイバーの1人だ。

 俺と話した方ではなく、もう1人の方だ。


「別荘などと言う場所にちゃんとした医療施設があるのですか?もっと言ってしまえば人魚様を狙う不届き者では」

「あんたは地元民みたいだな、とりあえず密猟者じゃねぇよ」

「その証拠は」

「ドラバカ、久しぶりに()()、やるぞ」

「あれって……まさかあれ!?嫌よ絶対!!あんな三文芝居みたいな事!!」

「マダス!野良猫!準備!!俺もやりたいけど、この子抱えてるから無理」


 ふ、ふ、ふ。

 俺のドラバカ嫌がらせ術の1つをここで出来るとは、しかも絶好のチャンスだ!

 2人はああ、と思い出すと準備を始める。


「え、本当にする気なの?本当に止めて!私お姉さまみたいにできないから!!」

「何する気なの?」

「なーに、ちょっとドラバカの力って奴を使わせてもらうだけだ。邪魔にならないようにちょっと退けるぞ」


 腕の中にいる人魚もオロオロとしている。

 俺を止めたライフセイバーは何をするんだと言う感じで見ているが、俺は邪魔にならないよう退散退散。

 マダスと野良猫のあわせは終わったみたいでマダスが大声で声を張り上げる。


「控え控え!!このお方をどなたと心得る!!」

「この方こそアイリア・ドラグ・ノート様!このドラグ・ノート王国の第5王女であられるぞ!このキュイ様と家紋で分からぬか!」


 それに続いて野良猫が意外と堂々と声を上げる。

 ドラバカの頭の上にはキュイが小さな体を少しでも大きく見せようとしている。

 そして野良猫が王家の家紋を高々と広げる。


 いや~昔は教師相手にこれで驚かせたわ~。

 第五王女の威光と言う奴だな。

 本当は俺とマダスでやってたんだけど。


 そしてこの光景を見て、聞こえた者達は膝を付いた。

 立っているのは俺達だけ。

 ドラバカは野良猫に泣きついている。

 しっかし野良猫も堂々とやれたもんだ。

 いきなりやれって言われてできるもんじゃないぞ。


「と、言う訳で俺達が預かる。第五王女の名を勝手に使うバカに見えるか?」

「……頼みがある」

「なんだ?」

「様子を見たい。地元の者としてはやはり気になるのだ」

「それぐらいならちゃんと頼めば大丈夫でしょ。それじゃみんな、行くぞ」

「第五王女とか言わせながら仕切ってんじゃないわよバカ!!」

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