夜デート
その日の深夜、俺はこっそりと起きる。
ドラバカの心配はもっともだが、それでも研究のためだ。
俺は行く。
そっとベッドから抜け出すために、ルビーの様子を確認しようと思ったらすでにベッドの中に居ない。
あれ?っと思っていると、月明かりに反射して金色の瞳が光っていた。
「行くんでしょ?」
「行くつもりだが……付いて来る気か?」
「え、行くよ?それにバレた時私も一緒の方が言い訳もできるよ」
「……それもそうだな。でも夜食は出ないぞ」
「う、でも行く」
「夜食はダメだったが一緒に行くか」
「うん!」
嬉しそうに言うので抱き締めながら頭を撫でた。
ルビーは頭を撫でられて尻尾を大きく振る。
素直な反応にちょっとほっこりする。
そんなルビーを待たせる訳にはいかないので素早く着替える。
昼間着ていた服とは違う、夜に目立ちにくくなるようなデザインの服だ。
ちなみに長袖長ズボン。
理由は虫対策だ。
夜中は虫がよく出るので仕方がない配慮なのだ。
夏場は困る。
冬場は特に問題ないが。
着替え終わってこっそりと部屋を出る。
ルビーはちょっと面白がっているのかどこか楽しそうだ。
まだまだ子供だからちょっとした冒険気分なんだろうか?
それとも単にちょっと悪い事をしている感覚が好きなのか?
この日は運がいいのか単に警戒していなかったのか、ドラバに見つかる事なく外に出れた。
そして思いっきり背伸びをする。
「う~ん」
「マスターどうかした?」
「ん?別に何でもねぇよ。最近人が増えたからな、ちょっと肩凝った」
突然助手をすると言いだしたドラバカに、その護衛として付いてきた野良猫の影響でまだ慣れなかった。
しかもその後、まさかの俺に従魔が出来ると言う事実。
最近色々と急激に環境が変わった様な気がする。
何気なく言うとルビーは落ち込んだように見える。
「マスター、私、負担になってない?」
「んん?何でそうなる?」
「だってマスター最初すんごく迷ってたみたいだもん。……ドラゴンは嫌い?」
……あ~これはしくじったな。
人が増えたって所に、自分が負担になっているんじゃないかと思われてしまったようだ。
確かに今現状ルビーの飯はドラバカに負担してもらっている様な感じだ。
そこは負担と感じるより俺自身への不甲斐なさの方が個人的には大きい。
金に関しては俺が働けば済むだけの話だし、ルビーのためならば頑張れる。
そこには嘘など微塵もない。
俺は基本的に口下手なので行動で示す。
ルビーを抱き寄せてそっとキスをした。
「ん!?」
突然のキスにルビーは驚いた様だが、すぐにおとなしくなる。
俺は唇をくっつけるだけでよかったのだが、ルビーが俺の唇を舐めた。
その行動に驚いて声を出そうと口を開いた瞬間、その舌が俺の口の中に入ってきた!!
流石にそこまでは想定してしていなかったので、俺は硬直してしまう。
「んん……」
そんなルビーは一心不乱に俺の口の中を舌で舐めまわす。
背の差でどうしても俺が下を向いてしまうので、俺の唾液がルビーの方に流れていくのだがルビーは気にした様子もなく俺の唾液をコクコクと飲む。
顔をほんのり赤くしながら懸命に求めるその姿が何故か妖艶に感じてしまって、つい俺も強く抱きしめてしまう。
互いに求め合うと言う行為がこれ程までに気持ちいいとは知らなかった。
ルビーの感情が流れ込む様な感じがとてもいい。
出会って共に居た時間はとても短いはずなのに、これは俺の大切な人だと認識される。
これだけは譲れない、これだけは手放したくない、これだけは絶対に不幸にしてはいけない。
そう言う感情がどんどん湧き上がる。
「んん、けほっけほっ」
気管に入ったんだろうか、ルビーが小さな咳をして俺は唇を放す。
「大丈夫か、ルビー」
「うん。ちょっと咽ちゃっただけ」
「そうか」
そう言っている間も腕だけは放さない。
ずっと抱き締めたままだ。
ルビーの顔は子供っぽさが抜け、まだ色っぽい。
上気した表情に口元がまだ涎が付いている。
それだけなのに何故か興奮する。
そう思っているとルビーが急に顔が真っ赤になった。
先程よりも真っ赤になって頭から湯気が出ている。
「あ、あうあうあうあうあうあうあうあうあうあう」
「え、ルビーどうした?」
「どうしたじゃないよ!あ、いや私も正気じゃなかったと言うか興奮して我を忘れちゃったと言うか!何で急にキスしちゃうの!?心の準備とかいろいろできてなかったんだけど!!」
「そりゃ~あれだよ。なんか不安そうな顔だったから励ますにはこれかなぁっと」
「励ますのでキス!?え、マスターってそう言うの積極的な人?私はそう言うの嫌いじゃないけど……やっぱり、リードされたいって言うか、そう言う時は男らしい方がいいと言うか」
後半どんどん声が小さくなりながらも嫌じゃないのならよかった。
でもちょっとだけ反論させてくれ。
「俺がしたのは普通のキスだったはずだが?舌突っ込んだのルビーの方からだろ」
「だ、だって!好きな人からキスされたんだよ!興奮しない訳ないじゃん!!」
「それは同意する。俺も気持ちいいって思ったし、めっちゃ興奮もした。でも切っ掛けはお前のディープだろ」
「切っ掛けはマスターがキスしたから!!これだけは譲れないの!!」
「え~」
「え~じゃない!最初にキスした人の責任!!」
「でも責任ってどうとればいいんだ?」
キスの責任の取り方なんて知らない。
無理矢理好きでもない相手にキスされたー、とかだったらぶん殴られるとかで解決できるかもしれないが、お互い問題なしって感じの場合の責任の取り方なんて知らないぞ。
そう思って聞くとルビーはまた顔を赤くしながら目を逸らして言う。
「………………お姫様はキスをご所望です」
「キスの責任がキスをするって変なの」
「いいから!それとももう、しない?」
「いえ、させていただきます」
こうしてすぐ2度目のキスをした。
そして感想は一言。
惚れた相手とのキスって本当に甘く感じるんだ。




