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現在フィールドワーク中

 いきなりだが転生後は普通のとある村の息子として生まれた。

 赤ん坊の頃の記憶はなしで物心ついた頃に転生した事を思い出した。でいいのだろうか?

 余りにも自然と思いだしたのでいつ頃思い出したのかよく分からない。


 とりあえずこの世界について語ろう。

 俺に適した世界と言っていたが確かに俺の望む世界と言ってほぼ間違いなかった。


 この世界には様々な生物が居る。

 前世で見た動物だけではなくモンスターとか魔物とか言った方がいいような生物が多くいる。

 けれど人間と険悪な仲とは言い辛い。なんせモンスターと人間は共存しているのだから。


 人間はモンスターに契約ティムを行う。

 その契約によっては単なる友達関係の様なものもあるし、最も深いものだと結婚の様なものもあるらしい。

 まぁ基本友達関係の様な物は契約を結ばない者の方が多いが。


 ちなみにこの国では魔物と呼ばれる事が一般的だ。国によってはモンスターだったり妖怪と呼ぶ国もあるそうだ。

 妖怪と呼ぶ国にはちょっと親近感が湧くので行ってみたい。


 そして俺は現在とある場所に居た。

 だだっ広い草原の丘に一人双眼鏡で野生のモンスターたちを観察している。


 人間と共存しているとは言ってもそれは魔物専用の牧場で生まれ育った存在がとても多い。ある程度の知性があったり、人間によくして貰える内に自然と人間と共存する魔物も居るがそれはかなりのレアケース。大抵は自然の中で生まれ、自然の中で死んでいく。


 それから自称天使から貰った力はこの世界ではスキルとして現れた。

『寵愛』『救世主』『読破』『身体能力強化』『健全』の5つだ。


『寵愛』は俺が魔物にモテたいと言ってもらったスキル。

『救世主』は癒す力、決して勇者とか英雄的な行動を取るためのスキルではない。

『読破』は外国語だろうが古代語だろうが読めるスキル。お陰で学生時代は色々助かった。

『身体能力強化』は普通は戦闘向けのスキルだが暴れる魔物を抑え込むのに意外と役に立ってる。

『健全』は健康維持のスキル。お陰で風邪一つひいた事がない。


 そして現在は魔物に関する学校を卒業して魔物の生態を研究者として生きている。

 大抵の研究者は国が所有している魔物牧場で調べているが俺は直接魔物が住む地域に赴き、魔物相手にストーキング行為を繰り返していた。

 人間相手にすれば犯罪だが魔物相手なら犯罪ではない!そして研究者と言う肩書がある以上堂々としていていいのだ!


 はっはっは!!ここは天職だぜ!


「お~いマスター!こっちに合わせてくれよ!」


 俺の後ろを疲れた様子で追い掛けて来るのはマダス、学園時代からの悪友と言う奴だ。

 マダスの頭の上にはその相棒である風の妖精が座っている。


「何だよマダス、情けねぇな。見ろよブラッティーホーンの群れだ。しかも中々デカい群れだぞ」


 ブラッティーホーンとは牛の魔物だ。牛と言っても前世で言うバイソンぐらいの体格と角で正直いかつい。

 牛なので当然草食なのだが性格は凶暴、自分たちの群れでないブラッティーホーンにだって容赦なく攻撃する。

 その代わり家族愛がとても強い。そのせいか10頭以上の群れをあまり形成しないのだが、今俺が見ている群れは25頭ほどの大きな群れだ。


「あ~そんな余裕ねぇーよ。シルフィ、涼しい風くれ」

「ヤダよマダス。そんな事に力を無駄使いしたくない」

「頼むよシルフィ~」


 相変わらずいいコンビだ。なんとなく見ていて安心する。

 するとシルフィがどこかに顔を向ける。


「どうしたシルフィ?」

「知り合いからの連絡だ。……マスター!王都から研究結果の申請が来ているそうだ!」

「え、もうそんな時期だっけ?この間出したよな?」


 ちょっと思い出してみるが……うん。1か月前に出したはずだ。

 大抵一年周期なのに何故か俺だけ早く成果を出せと言われている気がする。


「それは名目上でお姫様がマスターに会いたいってさ」

「パス」


 俺は再び双眼鏡でブラッティーホーンの群れを観察する。

 あ、子供が母親の乳飲んでる。あれは……生後5か月か?


「お~い、お姫様直々の指名だろ?そんな簡単にパスとか言って良いのか?」

「いいんだよ。どうせいつもと変わらない小言だろうよ。それより今はあいつらの生態を調べる方が先だ」

「……ブレないな、お前は。それよりコーヒーとか飲まないか?」

「あ~頼む」


 マダスはなんだかんだで気が利くしお人好しだ。

 俺が研究者になる時も「お前1人じゃ不安だ。助手として一緒に居てやる」と言ってくれた。なので学園を卒業しても変わらずこうして男二人いる訳。

 1部の女子からは俺とマダスのBL疑惑が上がっていたそうだが何故か人気が高かったらしい。

 ちなみに俺は今もケモナーだが性的な対象は雌だ。魔物でも人間でもな。


 俺が双眼鏡で観察しながら細かくメモを取る。

 子供が生まれて時間が経っているがそのおかげで少しは生態が分かってきた。ブラッティーホーンの雌は中心辺りで塊り、雄がその周囲で子供と雌を守っている様だ。

 ただハーレム制なのか、そうでないのかはまだ分からない。まだ観察を続けて2ヶ月ほどだからな。


 そうしていると肩を叩かれた。

 マダスがマグカップを片手に俺の事を叩いたらしい。


「コーヒー出来たぞ」

「お~助かる」


 マグカップを受け取り観察しながらコーヒーを飲む。

 マダスも俺の隣に座り、コーヒーを飲む。

 シルフィはマダスの肩に座ってクッキーを食べてる。


「全く、俺がいねぇと本当に飯も何も食わねぇんだから心配するっての」

「でも一瞬でも目を逸らすと希少な生態を見逃しそうでな、見逃したら後悔する」

「本当に魔物バカだな。お前がしなくても誰かがするだろ」

「そんな事言ったら何も出来ねぇよ。それに俺みたいに直接出向いて調べる奴はレアだろ?」

「ほとんど危険のない近場の奴で済ますか、牧場に居る奴で済ましちまうもんな。お前みたいなのは……知ってる限りじゃ数人だもんな」


 これが現実と言う奴だ。

 フィールドワークなんて言葉があるがほとんどの奴はしない。

 牧場で獣医兼研究者と言うのがとても多い。その方が給料も多いし楽だからだ。


 でも俺は自然の姿を見たい。

 動物は自然の中で生きるのが最も美しい姿だと思う。

 生き残るために戦い、食う食われるの戦闘は善悪のないとてもシンプルな戦いは避けられない。

 それは今世いま前世むかしも変わらず続くものだ。

 どうしようもない自然の摂理と言うものだ。


 その全力で生きてる姿を目に焼き付けておきたい。

 少しでも彼らが生きていたその姿を、未来に繋げたい。


「あ、ティナから連絡きた。早く帰って来いって」

「え、マジ?」


 そういったのはマダスだ。

 ティナとはマダスの彼女である。


「お~気を付けて帰れよ」

「他人事みたいに言うんじゃねぇよ。お前1人残す訳ねぇだろ!俺がいなかったら餓死するだろ!」

「草食って生き残るさ」

「いやマスターもだぞ」

「え?」


 ついその言葉を聞いて振り向いてしまった。


「マスターにも仕事があるらしい。何でも怪我をした魔物の治療だそうだ」

「野良猫のとこには宮廷付きのお偉い医師がゴロゴロいるだろ。そいつらに任せりゃいいじゃん」

「警戒心の強い魔物らしい。お陰で手が出せないそうだ」


 …………俺はため息を付きながらのんびりと立ち上がった。


「……仕方ない。バイトに行くか」

「いや重要な仕事だろうが、バイト感覚で行くんじゃねぇよ」


 マダスはそういいながらも飲み終えたマグカップを洗って片付けている。

 俺も飲み終えたのを渡すと洗ってしまった。


「そんじゃ久々に帰るか。王都に」

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