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事件は起きた

 ぼんやりと目が覚める。

 いつもと違う感覚に戸惑ったが意識が覚醒すると今どこで寝ているのか思い出した。

 ドラバカのテント……というか屋敷の1室で寝たんだった。

 ベッドも高級品の様で滅茶苦茶身体が沈む。


 前世では低反発マットの方がいいと聞いてたが……うん。納得。

 柔らか過ぎるとあれだな。なんか寝返りとかし辛い。


 貧乏性だからか、はたまた本当に良いベッドで寝た事がないからか分からないがそれが俺の感想。硬すぎるのもあれだが柔らかすぎるのもあれだな。


「ううん」


 ふと俺の胸元で聞こえたので少し目線を下げる。ルビーが心地よさそうに寝ている。

 昨日ちょっと話したがこの様子だともう大丈夫だろう。あとの問題はドラバカなんだが……マダスたちが上手くやってくれた事を願おう。


 それにしても……腕が痺れた。抱き寄せてそのまま寝たせいか腕が痺れた。

 あとなんでルビーの髪って良い匂いするんだろうね。

 同じ石鹸使ったはずなのに。


 ……あれ?なんかルビーの背中が変だな。

 服を着ている感じがしないというか……直接肌に触っている感じがするというか……

 よし、現実逃避終了。そっと布団を持ち上げるとそこに居たルビーは服など着ていなかった。


 ………………マジでどうしよう!!

 昨日手を出さないって言ったばっかりだぞ!!いや実際に手は出してないんだがこれじゃ手を出したと思われてもおかしくない状況じゃねぇか!!


 どうしたもんかどうしたもんか!!

 とりあえず起こそう!起こしてもう1度服を構築してもらおう!!


「ルビー、朝だ。朝だから起きてくれ」


 肩に触れて揺すってみるがまるで反応なし!もう何度か揺すってみるがまるで起きる気配がない!!


「ん?ううん」


 何で抱き付く!?いや柔らかい肌が気持ちいいんだが……じゃなくて!!

 状況が悪化した!!この状況でドラバカが入って来たら……想像もしたくない!!絶対ブチギレる!!

 本当にどうすりゃいいんだ!?


 そんな時にノックの音が聞こえた。


『マスター、いい加減起きてる?』


 起こしに来た!扉越しではあるがこの声はドラバカだ!!

 と、とりあえず誤魔化さないと!!


「今起きた所だ!」

『そう。ちょっと話したい事があるんだけど』

「待ってくれ!今着替えてる途中だから!」

『そうなの?それじゃ着替えながらでいいから聞いて』


 一応部屋に入って来る事は阻止したがまだそこに居るだと!

 それにまずはルビーをどうにかはがさないと。


「ルビー、いい加減起きてくれ。マジで俺、社会的に死んじまうかもしれないんだよ」

「んん?それじゃルビーが守る~」


 護ってくれるのは嬉しいが今それ逆効果!寝ぼけてないで起きてくれ~

 背中に回された腕を必死にはがそうと奮闘しているがまるで振り解けない。こんな所でドラゴンの怪力発揮してるんじゃねぇよ!


 しかも言ってなかったが俺寝るとき下着派だから、今パンツとシャツでヤバいから!そしてルビーは裸だから余計ヤバいんだって!!

 そうとは知らずにドラバカは話を始める。


『その、昨日はごめんね。ついかっとなったというか、ルビーちゃんの事を考えずに言っちゃったというか……というかルビーちゃん起きてる?』

「まだ寝ぼけてる!ほらいい加減起きろって」

『手伝おうか?ルビーちゃんにも謝りたいし』

「大丈夫!大丈夫だからもうちょい待って!!」


 必死にはがそうとしながら奮闘していたがとうとうドラバカが入ってきた。


「別に私だってキュイを起こすのに慣れ……て………………」


 ドラバカが見ている光景はこうだろう。下着姿の俺に抱き着いて離れないルビー。

 強行策としてベッドの上に立てばはがれるかな~っと思って立っていたが、だらしないというか何と言うか、背を大きく逸らした状態なのにもかかわらず抱き付いたままの状態だ。


 しかも裸で。


 最初ドラバカは呆然と立ち尽くしていたが見るからに危険なオーラが身体から溢れ出ている!!

 これはあれだ。契約関係の魔物の力が怒りによって逆流している状態だ。


 逆流する状態は基本的には危険とされている。理由は簡単、人間の身体では魔物の力に耐えきれないからだ。

 でも契約した期間や絆によっては耐えられたり身体が壊れない様に魔物の方が調整してくれるのでベテラン魔物使いは緊急及び戦闘用としていざと言う時に使えるように訓練していると聞く。


 と言っても逆流して影響が出るのは魔法が使えたり、種族特性の強い魔物だったりと特殊な魔物と契約した者の方が圧倒的に多い。

 例え魔法とかが使えない魔物と契約し、その力が逆流したとしても身体能力が上昇したり、普段より息止めが長く続く程度だったりと微妙な特徴が反映される事が多い。


 まぁその特殊な魔物と契約して魔物の力を自分の力のように使える奴は本当に危険なんだけどね。

 例えばキレたドラバカの姉たちとか、後キレたドラバカ自身とか。


 実際俺の目の間に居るドラバカは怒りでキュイの力が逆流し、精霊の力を扱う事が出来る。

 元々キュイ、フェアリードラゴンは精霊と共に生きるドラゴンと言われている。生息地域は精霊が多くいると言われる場所と言われ、森だったり海だったり、どっかの小島だったりと生息域が全く定まっていない。


 ただはっきりと分かっているのは、精霊が好む地にフェアリードラゴンも好んで住処にしているという事だ。

 と言っても大抵は断崖絶壁だったり強力な魔物が住んでいる森だったりと、精霊が元気な分多くの強力な魔物が生息している事が多いのが難点だ。

 しかもフェアリードラゴンは特に精霊に好かれる性質があるので他のドラゴンの様に肉体で戦うより精霊の力を使った戦いの方が得意である。


 ………………で、今その力を使えるドラバカが俺に美人がしちゃいけない顔をしながら思いっ切り力を溜めているんですが?

 …………ここは素直に殴られた方が楽かな?


「こんの、すけべぇぇぇぇぇぇ!!」


 とんでもない衝撃が俺を襲い、壁に激突した。


 -


「いってぇな~。朝っぱらからあんな強烈な威力で殴んじゃねぇよ」

「当たり前でしょ!!朝から裸で抱き合ってればあの反応は普通よ!」

「俺はちゃんと服着てたじゃん」

「下着姿はちゃんと服を着たって言いません!」


 俺はドラバカに殴られた頬を擦っていた。

 それにしても身体能力の強化に風属性の精霊の力を使ったスピードの拳、久しぶりに食らったな。


 流石にルビーもちゃんと起きて服を構築して一緒に食堂に移動している。

 俺が殴られて壁に激突した音で起きたもんだからルビーはとても驚いていた。すぐに駆け寄って心配してくれた後、ドラバカに向かって威嚇していたが俺が殴られた原因を聞くと自分のせいだと分かり落ち込んでいた。


「マスター、ごめんなさい」

「気にするな、寝てる時もずっと服の構築なんてできないもんな」


 これに関しては俺の不注意でもある。そりゃ寝てる時も服の構築なんてできる訳ないよな。

 慰めながら頭を撫でるとドラバカがすぐにむっとした表情で言う。


「マスターはルビーちゃんに甘過ぎ。もうちょっと厳しくできないの」

「厳しくっつったって昨日契約ティムしたばっかりだぞ。そんなすぐ丁度いい距離感がつかめるはずがねぇだろ」

「でも一緒に寝る必要はないでしょ」

「あるもん」


 ルビーが言った。

 そっぽを向いていたがあるって言ったな。

 それに対してドラバカが言う。


「昨日と同じように一緒に居たいだけでしょ」

「理由あるもん。そうしないとマスター死んじゃうもん」

「え」


 つい間抜けな声を出してしまった。

 俺が死ぬってどういう事?

 その返答に食い付いたのはドラバカだった。


「それってどういう事!」

「どうって当たり前でしょ?いきなりドラゴンの成体に近い私と契約したんだよ。キュイちゃんみたいに赤ちゃんなら問題ないけど、私の力がマスターに流れちゃったらマスターの身体が内側から壊れちゃうもん。そうならないようにできるだけ一緒に居て耐性を付けてるんだもん」

「え、マジで?ルビーの力が俺に流れたら俺死んじゃうの?」

「何もしなかったらね。だから寝る時も一緒に居て少しでも耐性が強く付く様に頑張ってるんだもん」


 この返答にドラバカは唇を噛んでいた。

 俺とルビーを引き剥がしたかったんだろうがそういう理由なら認めざる負えないと言った所か。


「なら仕方ないとは思うけど……それでも裸で寝るのはやめなさいよ!!」

「ヤダ!寝る時ぐらい服着たくない!」


 また喧嘩だ。

 俺はため息を付いたらふと頭のに何かが乗っかる。

 乗っかってきたのはキュイだ。キュイもドラバカの声が煩かったのか俺の頭の上で耳を塞いでいる。

 お互いの相棒が煩いと面倒なもんだな。

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