一緒問題
テントを改めてしまった後、ドラバカのテント?に寝泊まりする事になった。
しかもあの過保護な姉らしくこのテントの頑丈さも対魔物用に建築された屋敷と同等の頑丈さだそうだ。マジで過保護だよな。
しかも1部屋ずつにバスもトイレも付いてる。これ金額にしたらどれぐらいの価値があるんだろう?
ま、その辺は考えたって無駄か。きっととんでもない価値があるんだろう。
そして晩飯を食った後、修学旅行の様に部屋割りでいざこざなど起きないと思っていたのだが……
「ダメです」
「ヤダ」
「ダメったらダメです」
「ヤダったらヤダ!!」
…………ドラバカとルビーが盛大に喧嘩しています。
内容は俺とルビーが一緒に寝るのは問題あるんじゃない?ってとこ。
魔物とは言え一応人型でいる以上俺と一緒の部屋ではなく他の部屋で寝るべきだとドラバカは主張。
それに対しルビーは契約関係なのだから一緒に寝てもいいはずだと主張。
俺個人としては一緒に寝ようが他の部屋で寝ようが問題なし。心配事としてはルビーが寝ている間にドラゴンの姿に戻ったりしないかだったんだがルビーはそれはないと言ったので多分大丈夫だろう。
まぁどっちの主張も間違ってはいないんだよな……
ドラバカの不健全って所はどうしても人間から見れば当然行き当たる問題だし、ルビーの主張だって契約関係であればみんな普通に一緒に寝ている。それは人型でもほとんど関係ないのだが……俺の場合ほらあれじゃん。重度のケモナーじゃん。
多分そこから警戒心がドラバカの中で強まってるんだろうな……
改めてじっくりとルビーを見る。
鱗に守られていたからか肌は白い。何度も抱き付かれたりしている内にルビーの身体は柔らかい事も知っている。抱き締められた時何となくいい匂いがしたしな。
それにルビーの角もとても綺麗だ。綺麗な流線形は黄金比によって作られている様な気がするし、ルビーの金色の瞳も綺麗だと感じる。
そして尻尾は人型で唯一鱗に覆われている。感情の状態によって動いたりするのは他の動物と変わらない。ただその尻尾のしなり具合と言うか鱗が光に反射している所がどうも艶めかしく感じる。
「……私、王女様に1票」
「俺も姫様に1票」
「え!ティナもマダスもなんで!!」
ルビーの叫び対して2人は。
「何と言うか……マスターが危険な視線をルビーちゃんに向けてたから」
「俺もだ」
え!?そんな顔に出てたか俺!
「ほら見なさい。マスターはルビーちゃんの事を危ない目で見てるの。だから今日は」
「別にエッチな意味で襲われてもいいもん!!番になれたらむしろ嬉しいもん!!」
あ~またこの爆弾か。
それ言うとドラバカがさらに興奮してくるから出来るだけ言わないでもらえると助かるんだけどな。
案の定ドラバカは顔を真っ赤にしながら言う。
「そういう間違いが起きてしまうからダメだって言っているんです!!マスターもはっきり言いなさい!!そうすればこの子だって諦めるでしょう!」
「いや~俺は別に一緒に寝るだけなら問題ない」
「問題大有りだって言ってるでしょうが!!」
「間違いを起こすつもりはないから許してやれよ。ルビーはまだまだ子供でもあるんだぞ、多分卵はまだ産めない……よな?」
確認するためにルビーに聞いてみると悲しそうな顔をしながら言った。
「まだ準備できてない。でもあと半年もすればできるから!」
「うん。そこまでは聞いてないから。それにドラバカ、確かにルビーは可愛いが出会ってすぐエロい事する程俺も節操なしじゃねぇぞ。金の問題もあるしすぐどうこうするつもりはないって。だからルビーの一緒に寝たいぐらいは聞いてやっても良いんじゃねぇの?」
そういうと俺の顔をじっと睨みつけながら言う。
「…………ちゃんと、我慢できるだよね」
「手は出さねぇよ。まだまだこの子を養えるだけの稼ぎがない」
「…………信じるからね」
そう言って俺とルビーの同室を許してくれた。
俺は取り合えずほっと息を付いた。ドラバカの主張はもっともだし何も間違っちゃいない。
でも頭ごなし過ぎないか?何に対してそんな熱くなってるんだ?
ドラバカはまだ熱が冷めないのかそのまま自室に戻って行った。
これ以上喧嘩が起きるとは思わないが……これはこれで雰囲気が悪いな。どうにかしたいが今すぐ行動すると余計こじれそうだしな……
「おいマダス。こういう時俺ってどうしたらいいんだ?」
「何もするな。俺とティナでどうにか落ち着かせるから」
「そうそう。いっつもこういう時喧嘩を治めてたのは私たちなんだからね。いつも通り頼りなさいよ」
「いつも悪いな」
片手をあげながら言うと二人共も苦笑いをしながら多分ドラバカの部屋に向かって言った。
マダスから何もするなと言われているし、ルビーを連れて部屋に戻るか。
「行くか、ルビー」
「……うん」
ルビーが元気ない。
とにかくドラバカはマダスたちに任せて俺はルビーのフォローに入るか。
部屋まで一緒に行くとルビーは直ぐにベッドに倒れた。顔を枕にうずめてピクリとも動かない。
俺はその隣に寝て何も考えず天蓋を見る。
こういう時は天井の方が何か落ち着くな。なんとなく、雰囲気が。
そう思っていると枕に顔をうずめたままルビーが言いだした。
「私、そんなに変かな……」
「何がだ」
「マスターに、人間に本気で番になりたいって思う事」
その質問に関して少し考える。
確かに普通なら同種族同士であるだろう。俺は人間でルビーはドラゴンだ。他の人が聞いたらきっと信じないし、あり得ないというだろう。
でもルビーは本気だ。本気で俺と一緒に居たいと思っているんだろう。
その感情そのものは俺は嬉しい。ただ今すぐ結婚だなんだとなると俺も少し戸惑う。
金だなんだと言う必要な物を揃えるのも不安だし、フリーの研究者と言う立場から給料だって不安定だ。他にも色々不安はある。
俺の中で一番の不安は種族差による寿命の違いだ。
人間、あくまでこの世界の平均寿命はざっと男だと60~70ぐらい、女だと65~77ぐらい。前世よりだいぶ寿命は短い。
恐らく俺は自称天使から貰ったスキル、『身体能力強化』『健全』によって他より長生きはすると思う。でも俺は人間だ。種として人間である以上100年以上生きられるとは思えない。
その先に関しては……どうも出来ない。たとえ事故や病死になる事はないとしてもだ。寿命だけはどうしようもない。
これだけは自然の摂理としか言いようがないし、俺自身も不老不死とかに憧れた事はない。
でもせめて……子供が成人するぐらいは……普通に生きられるか?
いやでもドラゴンとのハーフって人間寄りに成長するのか?それともドラゴン寄りだとすれば……100年でどうにか成人するまで育てられるか分かんないな……
「…………」
おっと、意外と長い事考えてたみたいだ。そろそろ俺の考えをルビーに伝えないと。
顔だけを動かしてまだ枕に顔をうずめたままのルビーに言う。
「良いんじゃね?あくまで俺個人の考えだが……別に誰を好きになろうが良いんじゃないか?」
「ホント?」
「ああ。と言っても周りが反対したり親がダメって言った場合はどうなる変わらないが基本的に恋愛は自由だろ。その後は自己責任って奴だろ」
俺なりに考えてみる。
と言っても恋愛に関しては初心者だし、詳しい事は分からないが……その時はマダスと野良猫にでも聞いてみよう。少しは答えにたどり着くかもしれない。
「じゃぁ……私がマスターに恋をするのは変じゃない?」
「それは分かんね。ドラゴンの常識も分かんないからだけど」
「……普通は同じドラゴン。でも私の種はとても数が少ないから他のドラゴンとも番になるよ。たまにだけど……」
ふ~ん。やっぱりそうなのか。
てかあの時見たドラゴンの他にもいるのか。会ってみたいようなないような。
「マスターは……迷惑?」
「え、何が?」
「私が、その、番にしたいって所」
表情は枕のせいで分からないが尻尾が小刻みに震えているのを見ると俺の返答に怖がっている。
分からないだろうが俺は軽く笑いながらルビーの頭を撫でながら言った。
「迷惑だったら契約なんて最初からしない。まぁ確かに結婚って所は急で驚いたけど」
「……急ぎ過ぎ?」
「ちょっとだけな」
そういうとルビーは顔を半分だけこちらに向けると言った。
「……じゃぁ今日は一緒に居て」
「喜んで、お姫様」
俺はルビーを抱き寄せる。
ルビーは枕から俺の胸に顔をうずめて言う。
「温かい」
ルビーは頭を撫でられている間に眠りについた。
こういう部分もまだまだ子供だと思いながら、俺は目を閉じた。