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興味津々

 ルビーは俺たちのする事全てに興味を持っている。

 今はマダスの料理をじっと見ている。


「何してるの?」

「これは料理だよ」

「お肉は生で食べるのが美味しいのに?」

「料理したものだって美味しいよ。それに人間はお腹も弱いからこうしないとお腹を壊しちゃうかもしれないからね」


 そう説明しながらルビーに手元をじっと見られながら料理する姿はとても慣れている。

 保存食を料理したものだからあまり大した味ではないがマダス自身の料理の腕は高い。材料さえあれば菓子でも何でも作れる。

 シルフィはマダスが作った菓子が好物だ。


 ちなみに俺の料理は男の料理、つまり量はあるが大雑把な飯しか作れない。

 そして俺より料理が上手いはずの女子2人は自分たちで料理を開始している。マダスが持っているのは俺たち2人分の食料だけだし、仕方ないと言えば仕方ないが何だかな……


 しかも食材が保存食っぽくない。見るからにデカいステーキ肉を取り出しているしそれどっから取り出した。

 また姉から貰った魔道具か?これだから王族はズルい。基礎的な経済力がまるで違う。

 どのぐらいの食料が詰まっているのか分からないがなんかズルい。もとの世界のクーラーボックス的な使い方なのかな?


 特にする事もないので双眼鏡で辺りを観察する。野生の魔物が近付いて来ないかなど見張りの意味もあるし、個人的に珍しい魔物が居ないか探している。


 そう思っていると視線を感じた。

 振り向いてみるとルビーが俺の事をじっと見ていた。


「どうしたルビー。マダスの料理は見てなくていいのか?」

「あとは煮込むだけで暇だからマスターの方に来た。それなぁに?」

「これか?これは双眼鏡と言って遠くに物を見るための道具だ」

「貸して」

「ほれ」


 簡単に貸すとまずルビーは双眼鏡そのものを回しながら観察する。その後覗いているが……それ逆だ。


「……これ見づらいよ?」

「覗くところが逆だ。そっちの小さい方で覗くんだ」


 使い方を教えると「おお!」と言ってあっちこっち見始める。


「太陽は見るなよ。目が潰れるから」


 一応注意するとびくりと身体を震わせたあと太陽とは真逆の方向を見る様になった。想像以上に素直な子だ。

 見張りもほぼ意味が無くなったのでごろりと寝っ転がる。双眼鏡は一つしかないし、見た範囲だと大人しい草食の魔物しかいなかった。


 それにルビーの親が来たことにより、その魔物たちは遠くまで逃げてしまったのでしばらくは近寄ってすら来ないだろう。

 ゆっくりと飯が出来るのを待つ。


 眼を閉じてそよ風に吹かれていると不意に何かが乗っかってきた。

 乗っかってきたのはルビーだ。ドラゴンの時とは違い、今は俺のほうが背がある状態なのでなんだか考え深い。


 それに女の子特有の柔らかい感じが堪らない。とても大きくて柔らかい物が押し付けられている。

 ブレザーを着ているのにその存在感はまるで隠しきれていない。

 俺は平常心を保ったままルビーの頭を撫でる。


「なんだ。もう飽きたのか?」

「飽きたって言うよりマスターに甘えたかっただけ」


 そう言って俺の胸元に顔をうずめる。


「……なんか変な感じ」

「なにが?」

「だって少し前は私がお腹貸してたのに今は私がマスターの胸を借りてる」

「ああ、確かに」


 確かに今の状態だと背も何もかも違う。

 けどこの心地良さは変わらない。この温かさも変わらない。

 ついあまりの心地良さに欠伸が出る。そしてルビーを抱き締める。


「マスター?」

「ん?抱かれるの嫌だったか?」

「ううん。すっごく安心する」

「そうか」


 なんだかのんびりした時間が流れる。

 のんびりした時間最高。


 -


「…………何?あのラブコメ空間。あたしたちまだあんな自然とイチャイチャできてないのに何で出会ってそう時間が経ってないのにあんな自然とイチャイチャできるの?ねぇなんで?」

「俺に聞かれても……それよりお姫様の方がヤバいだろ」


 2人重なってのんびりする姿を見て自分たちとの差を見せつけられている様な気分のティナにマダスがもっと危険な雰囲気を出しているアイリアの姿を見て怯える。

 アイリアの背後に黒い靄の様なものが見えていた。


「ぽっと出の女の子にデレデレして!!」

「なら早く告白しなさいよ」

「だって昔からあいつ鈍感だったし……」


 マスターは勘違いしているがアイリアがマスターと行動をよく共に行動していたのは恋心あっての事だ。けれどマスターは始めから女性にあまり関心がなく、恋愛とは全く関係の無い学生生活を送っていた。


 実を言うとマスターに好意を向ける女子は少ないが居た。

 大抵は自分の相棒である魔物に関する相談などを請け負っている間に魔物に対する真摯な行動が彼女らの心を射止めていた訳だが、マスター自身はそういった感情に気付いてはいたが自分の勘違いだと思い、最後まで告白などにはつながらなかった。


 その分アイリアは余裕を持っていたのだが、突然現れたドラゴンの少女に強い危機感を感じていた。

 マスター自身彼女に好意を抱いている様に見えているし、何より嫌がっていない。

 ときおり好意を抱いた子が積極的に動いていた女の子も居たのだが、そういった子たちを遠ざけていた。


 今回現れたドラゴンの少女、ルビーも積極的な部類に含まれるがマスターは彼女の行動を嫌ったり行動を止める様に言わない。それだけでも強い好意を抱いているのは目に見えていた。


「私も積極的に行かないと」

「でもどうだろうね~。マスター積極的過ぎる女の子苦手そうだし」

「それは確かに。マスターの奴意外と繊細と言うか好みが厳しいというかなんというか」


 積極的に動こうとしているアイリアに少し待ったをかけるティナとマダス。

 確かに積極的に動くのも手段かもしれないがそれが上手くいくともティナとマダスには思えなかった。


「ならどうするの?このままじゃあの子に絶対取られちゃうし……」

「そこは……ファイト?」

「ちょっとはアドバイス頂戴よ!!彼氏持ちでしょ!?」

「でもマスターってかなり特殊だし……」

「それに絶望的な情報教えた方がいいか?」

「な、何よ絶望的な情報って?」


 マダスの言葉に危機感を覚えながらも聞く。

 そしてマダスは重たい雰囲気を出しながら口にする。


「あいつは……マスターは本当の変態なんだ」

「変態って、変わったところが好みなの?それとも変な性癖でも……」

「性癖と言えば性癖だが……あいつは、マジで魔物とエロい事をしてもいいと考えているんだ!!」


 その言葉にティナは頭を抱え、アイリアは驚愕した。

 確かに学生時代からマスターはそのような事を口にしてはいた。けれどそこまで本気で言っているような雰囲気はなかったし、みんなそれは魔物に対する愛情表現の1つとしか考えていなかった。


 しかしそれが真実ならば話は違ってくる。

 今彼の隣にいるのは人間の姿形に似てはいるものの、確かに彼女は魔物でドラゴンだ。

 つまり彼の好みドストライク。

 ティナはそんなバカげた話に本当だったのかと思い頭を抱え、アイリアはさらに危機感を感じていた。


「あれ冗談じゃなかったの?本気で言ってたの?」

「半々か?現実的に考えてもそうなる事はないと思ってたみたいだし、できっこないって考えてたみたいだけど現実になりつつあるからな……」


 マスターとルビーの様子を見て言う。

 2人は重なり合いながら穏やかな時間を共にしている。その様子はまるで長い時間付き添ったカップルのようにも見えた。

 そしてアイリアは強く拳を作って言う。


「そんなの許さない。真っ当な道に戻さないと!そして私がマスターを手に入れるんだ!!」


 強く宣言するがマダスとティナには旨くいく気があまりしなかった。

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