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契約

 太陽が雲に隠れたのかと思って見あげると3体のドラゴンが空を飛んでいた。

 ついコーヒーを吹き出してしまう。

 3体のドラゴンには見覚えがある。ついこの間見たばかりのドラゴンだ。

 その内の1体が俺に向かって急降下してくる。


「え、ちょ!!」


 ドラゴンが降りてきた衝撃で土埃が舞う。慌てて両腕で土埃から身を守ったが、ゆっくりと降りてきた他のドラゴンたちの羽ばたきで土埃はどっかに吹き飛んだ。


 そしてその中の1体のドラゴンが俺に駆け寄ってきて俺の顔を舐める。

 まさかこの子と再び会えるとは思ってなかった。


「この間ぶりだな」


 そういうとドラゴンは嬉しそうに尻尾を振る。なんか犬みたい。

 他の降りてきたドラゴンたちは多分この子の家族だろう。この子と似た綺麗な鱗に巨大な身体、特に大きな2体が親だと思う。


『お前がこの子のつがいか』

『気が早過ぎますよ。まだこの子について聞いてはいないですよ』


 どこからか男性と女性の声が聞こえた。

 声が聞こえてきたのは親ドラゴンの方から、という事は。


「これってお前の親の声か?」


 そういうと肯定なのかどうか分からないが一応鳴いた。

 疑問に思うと父親と思われる声が響く。


『私はこの子の父親だ。私たちの不在の間この子の事を守ってくれて感謝する』

「まぁほんのちょっとの間だけですけどね」

『しかしそれまで心無い人間にイジメられていたと聞きました。再びあの国に行こうかと思いましたがこの子が否定したので止めました』


 ナイス!!一難去ってまた一難になる所だった。

 ん?使い方あってるっけ?


「ありがとうございます。それで今日はどうしました?」


 親同伴で俺に会いに来たという事は何か用事があるんだろう。

 そう思い親御さん達に聞いてみるがじっと見ているだけで何も言わない。


「えっと……」

『アナタ、この人間は大丈夫じゃないでしょうか。この子の事を真摯に考えてくれていますし、何よりとてもいい眼をしています』

『そうだな、この人間の雄なら問題ないだろう。しかしやはり寂しいな……』

『ほんの数100年早まっただけですよ。少し早いのは分かりますがまだこの子たちもいますしそんなに寂しがらなくてもいいでしょ』

『しかしだな……』

『もう、その分私が一緒に居てあげますから』


 …………なんか堂々と夫婦がいちゃついてるのを見ている気がする。

 1回り小さいドラゴンが大きいドラゴンに甘えた様に喉を鳴らしている。

 どうすっかなこれ?


『あまりそういった事は人前でするなと言っているだろう。それで人間、名は何という』

「あ、はい。俺はマスターって言います」

『ではマスター、1つ聞く我が娘の事をどう思っている』

「絶対に護らなくてはいけない存在だと思っております。なぜならば希少な種と言うだけの大雑把な物の考え方とは関係なく、彼女自身が素晴らしい存在であり決して人間がどうこうするべきではなく、大自然の中で生きてこそ本当の美しさを見せ、それこそが彼女にとっての本当の自由であり――」

『分かった分かった!!娘の事をよく考えてくれているのは分かった!それ以上は話が長くなりそうだ』


 少しでも短くなるように早口で話したんだけど……

 しかも後ろで「またやったよあいつ」「変わらないね」「……魔物バカ」と聞こえた。だってあの子はやっぱり自然の中で生きるのが1番良いと思うんだけどな……


『それでだ。我が娘の願いを聞き届けて欲しいと思いマスターの前に姿を現した訳だ』

「願い、ですか?」

『この子の番になってほしい』


 …………………………はぁ?

 番って……夫婦になれって事だよな?つまりこれは見合いか?

 いやそれよりも重要なのは。


「いいんですか?俺みたいな人間と。俺基本フィールドワーク、外で巣を持たずに旅の中で生きている様なものですし、収入とかも安定していません。そんな俺より都合の良い人間もっといると思いますが」


 いくら理想があっても現実は付いて来ていない。旅をして生きているという事は基本食料は安定していないし、金だって研究結果が実を結ばない限り金になる事はない。


 そういう意味ならドラバカの様な王族なんかが1番いいのだろう。

 金に困ってもいないし、十分な飯も食える。生きるだけならその方が楽なはずだ。


 と言っても俺としては飼い殺しにしているようで気が進まないし、嫌いではあるんだか。


『そういった事は気にしていない。この子がマスターの番になり、共に居たいと言っているのだ。人間の事は人間であるマスターがどうにかしろ。私が聞いているのはこの子を受け入れるのか、受け入れないのかだ』


 分かりやすい2択だな。

 それなら答えは1つだ。


「受け入れます。俺はこの子が欲しい。そんでもって絶対に幸せにします」

『なら良い。ではその証拠として契約の儀を』


 契約ティムしろって事か。そのぐらいは何ともない。というか一般的には契約ティムされていない魔物は違法とされているので法律的にも契約しないといけない。

 そういう意味では手短に済んでよかったかも。


 契約ティムの方法は互いに身体の一部に触れた状態で行う。

 1部の地域じゃ触れる面積が大きい程契約しやすいなどと言うが特に根拠はない。大方そのぐらい仲が良ければ契約できると言いたいだけだろう。


 俺はこの子の額に手を置きこの子の呼吸に合わせながら目を閉じる。お互いの存在を確かめ合い、感じ合い、意識し合う事でよりスムーズに契約ティムできる。

 契約ティムした証拠として身体のどこかに紋章が出る。そこは個人差がありマダスは首の後ろ、野良猫は左肩、ドラバカは腹にあるらしい。ちなみにドラバカの紋章は見た事がない。


 初めて契約する時に身体の一部が温かくなるので分かるというが……

 あ、なんか背中が温かくなってきた。てことは俺は背中に紋章が現れるって事か?


 そう思っていると背中の温かさが引いていく。

 眼を開けると目の前には全裸の女の子が居た。


 ………………え、なんで?


 目の前の女の子ははっきり言って超絶美人だ。

 赤い髪を腰まで伸ばしたストレート、身体の凹凸は普通よりデカい。特に胸、スンゲー主張してるように見える。


 と言っても人間ではないらしい。

 頭には1対の角、瞳は縦長で金色、髪と同じ色の1対の鱗に覆われた翼、そしておそらく臀部辺りから生えているであろう1本の赤い爬虫類型の尻尾。

 うんこれ人間じゃない。


 そして俺はいつの間にこの子の頭の上に手を置いてたんだ?

 つい触り心地の良い髪を撫でると気持ちよさそうに目を瞑る。

 予想は出来てるけどマジか。


『それでは契約の最後だ。この子に名を決めてくれ』


 ああやっぱりこの子なんだ。やっぱりこの子があのドラゴンなんだ。

 しっかし名前か…………どうすっかな……

 ここは変に考えずに決めてみよっか。


「ルビーって名前じゃダメかな?」


 そういうとこの子が赤く光った。

 一瞬だけ眩しかったがすぐに落ち着いた。


『ではこれで完了だ。娘、ルビーをよろしく頼む』

『お願いしますね、マスターさん』


 そう言ってまた空へと飛んで行ってしまった。

 見送った後改めてこの子、ルビーを見る。


 キョトンとした表情をしているが、まずは服をどうにかするか。

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