いきなり事故って死んだ。そして転生。
俺はケモナーである。
守備範囲は広い。
普通の動物からモンスター娘、ケモ耳もいける。
正直人間より動物に好かれたいと思うちょっとした変態だ。
いきなりの暴露で驚く人も多いだろうがこれが俺なのだから仕方がない。と言っても別にエロい意味で言ってる訳じゃない、単なる好みの問題だ。
もっと簡単に言うなら性格が犬っぽいのが好きとか、猫っぽいのが好きとかそんな軽い感じの話だ。
でも人間より動物ってのはホント、正直頭とか撫でていたい。
人間は物事を複雑に考え過ぎていると自分でも思う。
自分が単にバカであるという部分もあるんだろうが何となくそう思う。
腹が減ったから食う。眠いから寝る。それではいけないという事はないはずだ。
だから俺は素直な動物が好きだ。
ツンデレとか面倒な事は置いといて、俺はやっぱり相手の考えを読む事が苦手なのでドストレートに伝えてほしい。
その分正直犬猫どっちが好きと聞かれれば犬派よりです。
幅広い守備範囲と自称しているが守備範囲外なのは虫と魚だ。
個人的に好みなのは犬、狐、狼とやっぱり犬より。ああでも三毛猫とかは好き、縁起も良いしな。
犬は中型から大型、猫は小型が好き。
と言っても家で動物は飼っていない。
父親が動物嫌いだからだ。母親は母親で現実的な部分で色々否定的だ。餌とか躾の問題で。
そんなわけで将来独立したら何か動物を飼いたいと思っている。出来れば犬か猫で。
そう思いながら今日もいつも通りに学校から帰っていると強い衝撃が俺を襲った。
-
…………?
ここはどこ?私は俺!
ふざけてる場合じゃなかった。本当にここはどこだ?
辺りを見渡す限り真っ白、映画で見る無菌室かってぐらい白くて何もない。
なんか仰向けに寝ていたのでとりあえず起きる。
地面?も白い。でも立てるんだから多分地面何だろう。
「すみませーん!!誰かいませんかー!」
何もない空間でとりあえず叫んでみたが……何もない。そして何も起きない。
どうせなら何か起きるぐらいはしてほしかった。
『そんな大声を出さなくたってここに居るよ』
声が聞こえた。辺りを見渡してみるが何も居ない。
空耳?けど確かに声が……
『あ~聞こえてるならいいか。初めまして僕は……天使だよ』
何だ今の間、とにかく誰かいるのか。
それにしても天使とか、嘘クサ。
「どこに居るんだよ天使」
『別に見えてなくても構わないよ。それじゃお仕事始めちゃおっか』
お仕事って、ここは役所か。
俺の内心のツッコミに全く気付かず声は続く。
『え~っとまず初めに君は死にました。その辺覚えてる?』
「え、俺死んだの?」
『うん。交通事故だね。君は本当に何も悪くないよ、相手の車が君にぶつかって跳ね飛ばされちゃったんだ。しかもすぐ救急車を呼べばギリギリ生きてたはずなのにそのぶつかった車は逃げちゃった』
うっわー。マジで最低だなその車。
俺は手を額につけてしまう。
確かにイヤホンを耳に突っ込んでたけどそんな死に方なんて嫌だったな~。
『それで君には転生のチャンスを上げれる事になったんだけど……どんな転生をしたい?』
「え、転生なの?蘇生じゃなくて?」
『転生だね。蘇生は今生きてる人間の仕事、昔は僕たちや神様もしてたんだけど世界人口増えすぎちゃって僕たちじゃ手が回らないんだ』
結構普通な理由だな。
そうか転生か……
「突拍子なものでも出来るのか?」
『人間が想像できる範囲なら大抵はどうにでも出来るよ。えっと君の世界風に言うなら無双ハーレムでも生まれた時から勇者でも何でもできるよ』
「ゲームみたいな世界に転生したいって言ったら?」
『う~ん……内容次第かな?モンスターの蔓延る世界は確かにあるけど電脳空間に転生は出来ないよ。あれは人間が作った世界だから介入する訳にはいかないんだ』
ファンタジー系ならオッケーと解釈して良いのか?
それからいくつか聞いときたい事がある。
「勇者とか無双ハーレムとか言うけどそれってどんな感じなんだ?運命論的な感じなのか?」
『運命論?ああしないしない。神様や僕たちだって暇って言う程暇じゃないんだ。一人一人の運命なんて決めてたら過労死しちゃうよ』
「そんじゃどうやって勇者や無双ハーレムが出来るってんだ?」
『力をあげるだけだよ。そうだな……君たちの世界のゲームで言うスキルとか称号とかそんな感じだよ。君たちの望む力をあげてそれでお終い』
なる程、望む力をもらって後は好きに生きろと。
そんじゃ次。
「望む力っていくつも望んでいいのか?」
『流石に多過ぎるのはダメだよ、その世界のバランスが崩れちゃうからね。でも程度によってはいくつも手に入るよ。単純に力が欲しいって子には怪力とか俊足になるスキルとか、後は賢くなるスキルとか。ああ後はコミュ障?とかって奴だから人付き合いの上手くなる力が欲しいとかあるよ。人徳のスキルを欲した人もいるし』
「それって結構色々望んでね?」
『その辺は十人十色ってね。勇者になりたいっていいた子にはやっぱり力とか人徳のスキルとかを欲しがってたから。あとはどんな武器でも使いこなせるスキルとか。ああ後魔法使いになりたいって女の子も居たよ。その子には魔法に関するスキルをいっぱいあげたよ、まだまだ子供で危なっかしかったから』
…………となると人が望んだスキルの度合いによって数は上下するって感じか。
俺が望むスキル……俺の欲望……
『質問してばっかりだけど決まった?そんなに強力なスキルが欲しいの?それとも逆に望みがないの?』
「…………うん決めた。言っていいか?」
『お、やっと決めたんだね!!それでどんな力が欲しいのかな!?』
どこかワクワクした感じで聞いてくる。
俺は俺の欲しいスキルを言う。
「まずはやっぱりモテたい」
『やっぱりそれは王道か。それじゃ人間の女の子にモテモテになる力を――』
「そうじゃなくて動物にモテたい」
『…………え?同種の人間じゃなくて?』
俺が訂正するとちょっとあっけにとられたような感じがする。
「人間の方は……まぁ普通に人徳があればいいや。全くいないのは寂しいし」
『それなら人間にモテモテになる力は要らないね……本当に動物でいいの?』
「出来れば魔物とか聖獣とか全部ひっくるめて頼む」
『わ、分かった。動物全般だね。……これは動物にモテる制限をしなければ済むからまだまだ欲しい力は手に入れるけど……』
「そんじゃ次は……向こうの文字は全部読める様にしてくれ」
『これも普通だ……あとは?』
「ない」
『え、もうないの!?』
なんか驚かれた。
でもな。
「だってあと思い付くのとか特にないし……」
『でもまだまだお願い聞けるよ?何かないの?ほら王族に生まれたいとか』
「そんじゃ自然豊かな村」
『……そう?場所指定もサービスみたいなものだからあまり意味ないんだけど……他には?』
「う~ん……じゃあ癒す力」
『お、おお!!やっとまともな力を欲しがってくれたよ!!それで一財を築くんだね!!』
「え、飼ってる動物とかを癒すつもりで頼んだんだけど」
『…………もうちょっと欲を持ったら?君みたいなお願いをする人は大抵おじさんぐらいの人たちだよ。仕事が忙しくて今度はのんびり暮らしたいって人の』
どこか飽きられているような感じがする。
というか。
「何でそんなに力を与えたがるんだよ。少なくてもいいじゃん」
『それは……その、僕たちにもルールがあって……』
「ルール?」
『不幸な死を迎えてしまった子には出来るだけ優しくしてあげるって言うルール。と言っても暗黙上のルールって奴なんだけどな』
「でも俺普通に事故死しただけだろ?」
『確かに君の好きな誰かを救っての事故死って訳じゃないよ、でも君の命は本来助かるはずの物だったんだ。けれど悪いドライバーのせいで死んでしまった。これだって十分不幸な死って言えるんじゃないかな?』
…………まぁ言われてみれば。
助かるはずだったみたいだしな。そのドライバーが逃げてなければ。
でもだからって必要以上に力をもらっても持て余しそうだし……あ、そうだ。
「それなら残りは全部力に振ってくれよ」
『力に振るってどんな力に?』
「さっき言ってた身体能力とかを強化してくれる奴、それから健康面でも頼む」
『えっと……つまり残りは全部身体能力と健康面に力を与えればいいって事でいい?』
「それから世界の指定って出来るんだっけ?」
『出来るよ。えっと君に与えられた力を活かす世界は……この5種類からだね』
何だか地球儀に似たホログラムみたいなのが5つ浮いている。
「特別戦闘とか望んでないから平和な所がいい」
『今平和なのは……この2つだね。100年ぐらいは戦争とか起きそうにないよ』
「それじゃ……こっちで頼む」
なんとなく1番地球に近い物を選んだ。
大陸の形とかなんとなく似てる気がする。
『分かった。それでは君の選んだ力を与えるよ、その後君には新たな生としてが生まれる』
少し厳かに聞こえる声と共に俺の存在が希薄になる。
「ちょ!消えかかってるけど問題ないんだよな!?」
『問題ないよ。そういう仕様だから、それでは2度目の人生、謳歌してくれ!』
少し笑われている様な気がした後、意識が消えて――――