序章 「暇」
注意事項を読んでください。お願いします。
死神は途方にくれていた。
刈れる命は大体、いや、全て刈った。
もう殺る奴が何処にもいない。
こうなっては自分の死神としての存在する意味が消えてしまう。
ーーー早く血を浴びないと。
殺せる奴、殺せる奴、殺せる奴はーーーーーー,,,
「自分くらいか」
背中にくくりつけている鎌を手に取り、自分の首に軽く当てた。
「この世界ともおさらば、か。」
楽しいことも悲しいこともない。ただ自分の命を、特に理由はないが、守ることだけが大事だった。
自分の命を守ること、つまりは自分の存在意義を無くさないことだ。
死神は、殺すことを仕事としている筈だ。
つまり、殺す行動自体が死神である自分の存在する意味なのだろう。
とにかく人や動物はもちろん、悪魔、神等の死を恐れていない奴等、ましてや同じ種族の死神なんてのも殺し続けた。
殺すこと、それが自分にとって一番大切な行動なのに。
今、全てを殺してしまったせいで、その行動が取ることが出来ない。
もう、自分の命を守る意味について考えても無駄だ。死のう。
今まで殺した奴等の行ったところへ行こう。
そしてまたそいつ等を殺せば良いんだ。
そうだ、そうすれば良いんだーーーーーー,,,,,,
自分の頭は死を目の前にして狂っているのだろう。だが、その考えで楽に死ぬことが出来そうだ。
「この世から生命が無くなる瞬間に立ち会わせられるなんてな。
俺ゃあ、幸せもんだよ。」
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と,,,いうわけで、世界では、最後の生命 【死神】 が自殺したことにより、その世界自体が消えてしまいました。
そっか。てか、ソイツ、死神のクセに世界壊したんだ?
こりゃ罰を与えないといけないねぇ。暇だから。
そうですね。地獄にでも落として永遠に労働させます?勿論、あなた様の奴隷として,,,。
ありゃ。それは罪として重すぎるんじゃないかしら?
ええ、珍しいですね。この程度で重い罪なんて言うの。
ううん。違うんだよぉ、私はその死神を認めてあげてるんだよぉ,,,。
役にたちそうだし、なんつーか、凄いから,,,。
暇,,,とかいうのもあるけど。
あー,,,そーゆー罰ですか。だったら逆に天界でゆっくりしてもらいます?勿論、あなた様の奴隷として。
あーうん。まー、それもいいけど、罰は罰。異世界転生とかいうやつで良くない?世界一個壊した奴を野放しにするのも面白そーじゃん。観察でもしてよーよ。どーせ暇だし。
そうですね。じゃ、この世界で。
ちょっと。勝手に決めないで,,,てぇっ!もう転生しちゃったの!?
はい。見た目性格記憶体の質、怪我はすべて回復させましたが。
しばらくは困惑しそうです。て、あれ。
これじゃダメでした?一応転生場所は望んでそうな場所にしたのですが。
,,,。
,,,。
黙らないでくださいよ。もう。暇潰しにはなるでしょう?
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「ラブリーパニック!いでよ!
ハートの女神!私に力を与えたまえ!」
これから少女はある場所へ行こうとしていた。
王子に頼まれた【ある仕事】を完遂するために。
その場所は森を越えた先にある村だ。
だがその森はある魔物によって管理されている。
王子の使いと魔物に説明すれば、森を安全に抜けることが出来る。
だが、その魔物に会えるまでの道中が問題だ。
森に住む手下達は、少女の事をすぐ侵入者と決め付けるだろう。
困ったことに、ここの魔物達は好戦的である。
「うう~流石にこれは油断できないなぁ」
少女の息はどんどん荒くなっていった。
走っているからか、恐怖からなのかは分からない。
でも、王子の為だ。
そう思えば何も怖くない。そう。何もーーーー。何も怖くない。
なにも。
少女が落ち着きを取り戻した時だった。
目線の先に倒れている人を見つけた。
「なんでこんなところに人?んん?
あれは、【ひと】なの?」
少女には闇が見えたのだろう。人とは思えない闇だった。
誰しもが持つ、人間の闇ではない。
つまり、あの闇を放つアレはーーーー。
「大人しい、魔物様の手下さん!?
なんてラッキーなのかしら!?女神様のお導きだわ!!」
そう言うと、少女は闇に向かって走っていった。
少女はそれが【偶然】でしかなかった。
事実、それは【偶然】でもなんでもない。
唯の、神によって造り出された【運命】であった。
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「おかしい」
死神はまた途方にくれていた。
「俺は死んだんじゃなかったのか?」
これは1分前の話だ。
訳あって命を諦めた死神、まとい自分は、自分の首を自分ではねて自殺した筈。
それが、1分経つとここはどこだ?青い青い空の下!鳥が鳴いて蝶が楽しそうに舞っているし、花や木が静かに風に揺られている,,,だと!?死神が死んでから来る世界にしてはあまりにも平和すぎるんじゃないのか!?
「さすがに変だ。俺はまだ死ねていないんだ」
死ねてないのなら仕方がない。もう一度,,,。
鎌をとろうとして背中を触る。
「無い」
触る。
「無い」
,,,触る。
「無,,,い」
鎌を探して背中を触っているのだ。
それなのに鎌が無いなんて,,,回りの人が見ればただの背中がかゆくて背中をとにかくかいている奴になってたぞ今の,,,。
「どうゆうことだ?鎌が消えているなんて,,,」
もう、色々分からなくなった死神は死ぬことを諦めた。というより、諦めることしか、出来なかった。
ゴロン,,,。
もう、自分には鎌も無けりゃ、動く気力さえも無い。
芝生の上に寝っころがて空を見た。
本当に空が青い。このような空を見たのは何年ぶりだろうか。
「天空神共は7年前に殺したんだっけ?なら、7年ぶりの青空だな」
その年にはムカつくやつらなら何であろうと殺す事にしてたな。
,,,そんなことしなきゃ、生命は途絶えなかったかもしれねぇ。
とりあえず、今の自分には大量の問題がある。
口に出していった方が楽になれるかもしれない。
てか、それしかやることがない。ええ、まず,,,
「俺はここでどう生きりゃ良いんだ?ここはどこだ?ここには殺せる生命が大量にあるのか?鎌は何処に行った?俺は今死ぬことが出来ねぇのか?あと,,,」
「ちょっと待った。それ以上は私が答えられなくなるわ」
次の問題を言おうとしたところで口に手を当てられた。
その手の主を見て驚いた。見たことのない奴だ。
俺はこの世の奴全員殺したのではなかったのか?
なんなんだこの【少女】は,,,?
まだ幼いような、大人のような,,,12才くらいか?
そのぐらいの見た目で、ピンクの髪、ピンクの瞳、ピンクの服、ピンクの靴,,,
とにかくピンクをまとっている。
髪はロングで下ろしているが、所々の下ろされている髪と髪を水色のリボンで結んでおり、頭の上には,,,変な形をした王冠を3つぐらい着けている。
スタイルは普通に良い。微かに体から甘い匂いがする。
顔立ちはまだ子供のようだが、かなりの美少女だ。
そんなやつ。そんなやつの手に俺は口を塞がれている。
手を切ってやろうかと思って鎌を探すが,,,無いん、だよな。
「全く、ここの魔物じゃないのね。でも人間ではないんでしょ?
あなた、何者?いや、何物?私はあなたを助けた方がいいの?
,,,てっ、なんで私があなたに質問しちゃってるのよ!ダメダメ!
ていうか、あなた、別の村から来た系でしょ。もうそれはあっちにある私が来た方向の村の人に助けてもらって。ごめんね。私は今あなたを助けることができないのよ。急ぎの仕事だから。ああ、多分魔物は大丈夫!だってあなた、ここの魔物より闇を放ってるもの。怯えて出てこないわ。ここのボス魔物は出てくるだろうけど、事情を説明すれば大丈夫。意外と話は通じる魔物だから。なのになんで手下達はあんな好戦的なんだろう,,,生まれつきの野生の本能?なんか怖くなってきた,,,私にも血が流れてんのかな。野生の,,,。だとしたら恐怖でしかないよ!こ、この私にも流れるのなら、他の人達はもっと流れてることに,,,いやああ!どれだけ流れてるのおおおおおお!怖いい!
あれ。ごめん。ずっと口、塞いでたね。」
そう言って少女は俺の口から手を離した。
息が少し荒くなってる。強く塞ぎすぎだぞ、コイツ,,,。
「それにしても、あなた、今死ぬことって言ってなかった?
死ぬつもりだったの?ねえ、聞いてる?」
「,,,。」
「もう、死ぬなんてバカなことを。
この世界の掟を知らないの?」
「この世界は壊したんだ。もう、すでに俺が,,,」
「え?何言ってんの?
まあ、よく分かんないけど、死ぬことは阻止させてもらっても良い?
魔法少女として。」
魔法少女。ああ、なんとなく理解したよ。なんとなく。
この世界は、魔法少女とかいうのが存在してんだな。
はあ、転生したんだな。魂が。
,,,問題が増えたな。俺は無事に死ねんのか?
ありがとうございました。