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ファイヤーボールって何回言うねん

短いです




 リオネーラは胸騒ぎを感じていた。


(何だろう、あの子の目を見ていると……不安になる。自分が何か、大きな間違いを犯しているような気分に……)


 だが、自身の行動のどこが間違いなのかと自問しても答えは出ない。

 勿論、レベル50の彼女がレベル1のミサキに攻撃するという事自体が非常に危険な行為ではある。よって魔法が得意なクラスメイトに協力してもらい、ミサキの魔法防御力を底上げしてもらったりリオネーラの魔法攻撃力を下げてもらったりはしている。

 ボッツもそれでOKを出した。そのくらいにまで調節は出来ているはずなのだ。それなのに彼女の胸騒ぎは止まらない。


(あたしはただ、彼女に請われるままに『ファイヤーボール』を撃とうとしているだけなのに……)


『ファイヤーボール』。今日一日だけでも何度も見た、魔法の初歩中の初歩。誰もが知っており、魔法が使える者ならば誰でも使える入門用の魔法。

 簡単ながら見た目がそれなりに魔法らしいため、初めて使えた時の達成感はなかなかのもの。

 しかし威力、難度、派手さ、どれをとってもこれ以上の魔法はごまんとある。所詮はその程度の位置付け。

 ミサキに見せるためにそんな入門用の魔法を選んだ自分の判断はおかしくないはずだ。おかしいなら教師も止めるはず。

 それにこういった下級魔法は実は剣を使っての防御でもほとんど防げる。ミサキは防御の仕方をちゃんと覚えているから尚更問題はないはずなんだ。


 リオネーラは何度もそんな問いを繰り返す。しかし、嫌な予感を拭い去れない。


(……念のため、小さくしておこうかしら)


 放出する魔力量を調節し、頭上に浮かせて留めておいてある『ファイヤーボール』の大きさを小さくする。ミサキはそれをじっと見つめていた。

 彼女は「魔法を見たい」と言ったのだから、その行動自体におかしいところはないのだが……


(ええい、これ以上考えてても埒が明かない!)


「……い、行くわよミサキさん! 《ファイヤーボール》!」





 飛んでくる、火の魔法。


(ファイヤーボール。火の玉が直進する魔法。火を発生させる魔法と、それにベクトルを持たせる魔法の組み合わせと言っていた。そして大きさも調節可能……これは魔力量によるのだろうけど)


 ミサキはそれを相変わらずじっと見つめている。『知る』ために、見つめている。


(燃焼に必要な要素も酸素以外は全て無視されている、か……いや、もしかしたら酸素さえも必要ないのかも? それを知る為にもやっぱり自分で使ってみたいな) 


 知りたいから自分で使いたい。自分で使いたいから知りたい。だから今、こうして見つめている。

 間近で見せてもらった事で魔法の唱え方はわかった。目の前にある魔法の仕組み――術式もわかった。あと『知らない』ものは……


(あの大きさとあの速度で、どのくらいの威力になるんだろう)


 これは知っておく必要があるんじゃないか。というか知るべきだ。

 勤勉で、尚且つ魔法を使いたくてたまらないミサキはそういう結論に達し――


「ほぶっ」


 変な声と共に、顔面に火の玉の直撃を受けた。



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