表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/186

あ、クマの照明!

ややみじ回



 ――と、そんなこんなで三人がツンデレ筋肉トークを終えた丁度その頃、一人で悶々としていたボッツもどうやら脳内で結論を出したようだった。


「……ま、ありのままを報告するっきゃねぇよな……結論にだけは俺の主観を混ぜておくか……」


 何やら意味ありげな独り言に皆の視線が集まる。そもそも脳筋のボッツがこれだけ悩んでいる時点で物珍しさは否めないのだが、それに加えあれだけ悩んでもなおハッキリとした結論が出ているようには見えないのもまた珍しい。

 そんな珍しいボッツに空気を読まずに好奇心のまま切り込んでいくのはもちろんミサキの役目である。


「……ボッツ先生、何の話ですか?」

「ん、おぉ、どうしたゲロ。もう魔人は大丈夫なのか?」


「………?」


「………あ?」


「………………逆です」


「ん? ……あ、マジか、すまん、悪かった。どうも上の空だったようだ、本当にすまん」


 教師公認の悪質すぎるイジメかと思ったが謝り方から察するに素だったらしい。

 リバースに触れられようと別に構わないと思っているとはいえ、流石に教師からゲロなんて渾名で呼ばれた日にはいくらミサキでも数十分落ち込んだ後に数時間かけて仕返しの計画を練る程度には傷つく。素で良かった。


 なお、ボッツがここまで呆けている理由についてだが……まぁ流石に誰にでも予想はつく。当然ミサキにも。


「……やはり前例は無いんですか、魔物が人の言う事を聞いて物を食べるなど」


 この流れでボッツを悩ませるものなどそれしかない。事の重大さが具体的にどのくらいなのかまでは想像できないが、自分が招いた事であるならば向き合うべきだ。ミサキが自ら進んで切り込んでいったのには勿論好奇心もあったがそういう風に考えた面もあったと言えなくもないかもしれない。

 まぁ好奇心を満たそうとしたにしろ筋を通そうとしたにしろ、あるいはその両方だったとしても、それに対するボッツの返答が少し予想外だった事には変わりないのだが。


「あー、まァそうなんだが、ありゃ別にお前の言う事を聞いた訳じゃないと思うぞ。あくまで俺の考えだがな」

「……そうなのですか?」

「ああ。お前の言う事を聞いて食ったならちゃんと飲み込むだろうよ、魔物が薬草をエサとして食ったという報告はあるんだからな。しかしそれをせず吐き出した、という事はやはりあれは攻撃のつもりだったんだろう……というのが俺の結論だ」

「……ですが、魔物は遠距離攻撃をしてこないのが定説だったのでは?」


 そう、それが定説だったからこそ檻の中に入れておくだけで済んでいた筈なのだ。どのくらいの距離からの攻撃を遠距離攻撃に分類するかは定かではないが、今回のアレが檻だけでは防げない攻撃だった事に変わりはない。


「そうだな、アレでどのくらいのダメージを喰らうかは別としてもその認識は改める必要がありそうだ。奴らは遠距離攻撃の手段を持っていなかっただけに過ぎず、使える物があるなら何でも使って攻撃してくるのかもしれん」

「手段、ですか……。そう考えると私は今回、あの魔物に餌ではなく武器を与えていたという事に?」

「結果的にはそうなるな。奴はお前を攻撃する為に薬草を食ったのさ。まァ多少認識を改める必要があるとはいえ結論は変わらん。結局魔物はどいつも誰に対しても攻撃的であり、人の言う事を聞くなど有り得ないって事だ」


 起こった事自体はありのまま報告しつつ、結論だけはこういう方向に持っていってどうにか大事(おおごと)にせずに収拾をつけようとボッツは考えたのだった。

 理由は勿論罪悪感からである。ミサキをここに連れて来たのは他ならぬボッツだし、油断したのもボッツだし吐瀉物(アレ)から真っ先に逃げたのもボッツである。その結果ミサキはリバースしたわけで、そんな少女をこれ以上何かに巻き込むのは流石に彼でも気が引けたのだ。

 ただし事実を捻じ曲げはしない。そこは人として当然である。その上でミサキを庇うような推論を述べる。新発見はあったがミサキはその場に居ただけに過ぎないと証言する。それだけの事。

 実際、状況を見ればボッツの推論は筋が通っていて説得力はあり、方向性に無理は無いと言える。彼と同じ結論を出す人は多いだろうし、その上で事実を見ればミサキはむしろ魔物に敵意を向けられやすいという事になり逆に同情される可能性さえある。

 ミサキに対する敵意から魔物が限界突破して魔法に目覚めた、とかだったら流石にこの推論では庇いきれないと思われるが、所詮は食べた物を吐き出しただけだ。物を食べる生き物に吐き出す機能が備わっていたとしても何もおかしくはない。

 脳筋のボッツの頭でもここまで考えられる訳で、彼以上に頭の回る人ならばいたずらにミサキを疑う事もしないだろう。つまり今回の出来事はミサキが居たから起こった事ではあるが彼女にとって悪い方向に働くものではないようだ。だが……


(だが魔物研究が一歩進んだ事は確かだ。そして研究が進んだ結果、もしも魔人以外にはこんな行動を取らないと証明されてしまったら……こいつはどうなるんだ? 魔物を僅かとはいえ凶暴化させる存在だと証明されてしまったら、こいつは外に出られなくなるんじゃねえか?)


 それを証明する為にはこの世界の住人全てにミサキと同じ行動を取らせる必要がある訳で、つまりその証明は困難を極める。実質的に不可能と言ってもいい。だが証明までは出来ずともそう思い込む人が出ないとは限らない。


(それに魔物のさっきの行動だって、魔人の奴を油断させる為に『あえて食べた』のだとしたら……? 可能性は限りなく低いが、もしも魔物にそんな知性があるとしたら? 俺達の知らない間に知性が生まれていたのだとしたら……?)


 ボッツ自身の思っている通り、その可能性は限りなく低いのだが……彼ほどの雑で大雑把な人間にもそんな一抹の不安を抱かせかねない出来事だった事も、また確かなのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ