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細かい事は下請けに丸投げ

トテモ ミジカイ デス



「ささ、ミサキさん、一緒に作戦を考えましょう! わたくしに仕掛けた不意打ちのような面白い作戦を!」


 サーナスのテンションが高い。怖い。あと面白さ最優先でないといけないのだろうか、なかなかの無茶振りである。


「……待って、サーナスさん。作戦を考えると言うけれど、まず誰を対象とした作戦なのかをハッキリさせないといけない」

「対象? ……ああ、なるほど。作戦を考えたとしても誰が従ってくれるのか、という事ですわね? 大丈夫ですわ、わたくしの名の下に全員ビシッと従わせてみせますから! お任せくださいまし! おーっほっほ!」


 こわい。


「……無理強いは良くない。それに一緒に作戦を考えてくれる人もいるかもしれない。一通り意見は聞いておかないと――」

「皆さんの中に何か物申したい人がいるなら立ちなさい! いなければわたくしとミサキさんの作戦に従うものとみなします!!!」

「ええ……」


 唐突にサーナスが立ち上がって宣言した。強引すぎて怖い。


「……サーナスさん、そんなやり方で意見できる人が居る訳が――」


 言いつつミサキもチームメイト達の顔を見渡す。だが意外にも、誰もが吹っ切れたかのような顔で首を横に振るだけだった。

 サーナスには何を言っても無駄だと諦めている――という訳ではない。いやそれも多少あるのかもしれないが、それ以上に二人の考えた作戦に従うと最初から決めていたからである。

 なんだかんだでさっきまでずっとミサキ以外誰も三人のやり取りに口を挟めずにいた。つまり、ミサキこそがあの不毛な言い争い(やっぱり話し合いとは呼べない)に終止符を打った英雄であり、そんな者の作戦になら従ってもいいか、とほぼ全員が考えていたのだ。一部にはミサキを試すような意図も混じっていたが、作戦立案を丸投げした事に違いはない。

 無条件でミサキを恐れているクラスメイトはゲイルチームに行ってしまっていたのも大きかった。こちらに残ったのはミサキから見れば『多少は話のわかる人』ばかりだった、という訳だ。あくまで多少はであり、距離を取られている事に変わりはないのだが。


(いいのかな……)

「ふふ、反対意見は無いようですわね。では……残る問題は貴方達二人です」


 内心戸惑うミサキとは正反対のノリノリっぷりとドヤ顔でサーナスが振り向いた先には当然、先程まで言い争っていた二人の男の姿がある。

 正直、彼らについては作戦の枠に組み込まない事も考慮しなくてはならないとミサキは考えていた。ついさっきまで対立していたサーナスの言葉に従う義理も道理も無いからだ。だが意外にも彼らは前向きな答えを返す。


「俺の望みはクラス長と戦う事だけだ。他の雑魚との戦いに手を貸すつもりはないが、奴と一対一で戦う場を整える為の作戦になら乗ってやる」

「オレの望みはボッツ教官が得意とした正面突破をもって教官に勝利を捧げる事……だけど、まぁ、そうだな、オレ自身は正面突破以外したくないが、他の奴まで付き合わせるつもりはそこまでない。余所で搦め手を使う事まで止める気は無いさ。何ならオレを囮にしてもいい、勝てるならな」


「あら、意外と丸くなっておられますのね」


「「お前が言うか……」」


 お互い様である。

 というかむしろ、動機が若干邪なサーナスと違って最初から二人は説得力のある作戦――勿論自身の望みが叶うという前提の――を提示されればそれに乗っていたと思われる。サーナスが感情のままに終始噛み付いていたからそう説明する暇が無かっただけで。

 ……まぁ、今更そこを掘り返すのも詮無き事だ。ようやく丸く収まりそうなのだから。後はサーナスとミサキの二人で皆を納得させられる作戦を立てるだけ。ここからが本番、二人で力を合わせて頑張る時だ。


「さぁミサキさん、後はわたくし達に全てが懸かってますわよ! 何か良い案をお願いしますわ!」


 ……どうにも他力本願に聞こえるのは気のせいだろうか。



ぶくま ガ フエテキマシタ アリガトウ ゴザイマス

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