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「白羽の矢が立つ」って元々は悪い意味だったんですって

みじ回です




 ミサキが最優先で読みたいと思っている本は地理学・歴史学などの異世界生活に必要な常識が含まれていそうな本や、魔法や魔物のような前世からは想像もつかないモノ達についての知識の載った本である。

 もっと言えばこの異世界における前世との相違点、それら全てが知りたいという事だ。

 しかし不幸な事に、それらの真面目な本は何故かディアンとレンが担当している側の書架の方に固まっているようだった。こういう細かいところでも世界に嫌われるとは流石と言わざるを得ない。


 ……よって実はこの時、ミサキは会話に割って入りたいなぁと思ったりもしたのだ。


「すいませーん、リオネーラさーん!」

「なんですかー、先生ー!」

「今から先生ちょっと用事があるのでー、こっちでレンさんと作業して貰えませんかー?」


 それぞれの組が仕事に慣れて余裕が出てきたあたりを見計らい、ディアンが告げる。彼女が元々二人ペアで作業計画を立てていたのはこの為である。本来彼女は手伝わず、生徒だけに任せるつもりだったのだ。

 止むを得ず手伝う形になってしまったものの、用事の方も捨て置く事は出来ない。よって後はリオネーラに任せる事にした。何故リオネーラに白羽の矢(いい意味で)が立ったのかは……説明は不要だろう。


(私の求める本は向こう側にありそうなんだけど……)


 ミサキは向こうの書架に並ぶ本達も見て回りたかった。よって、可能ならばこの会話に割って入りたかったのだ。

 もちろんレンにもディアンにも恐れられているため考えるまでもなく不可能である。あと多分そんなコミュ力もない。


「わかりましたー! ……ってワケだから、ごめんね、向こうに行ってきていい?」


 申し訳なさを顔全面で表現しながら二人に断りを入れるリオネーラ。いい子である。


「……リオネーラが謝る事は何もない。大丈夫」

「ホントに大丈夫?」

「……だと思うけど。何か不安?」

「だって……いや、うん、そうよね、ただチェックするだけの仕事だもんね、大丈夫よね……うん」


 二日続けてミサキは何かしらの形で大怪我を負っている訳で、面倒見のいいリオネーラとしては心配にもなるのだが……流石に本の整理なら何も起こらないだろう、と考え直す。

 ……別にフラグじゃないよ?


「よし。じゃあ行ってくるわね」


「行ってらっしゃい」

「お気をつけて~」


「何に!?」


 エミュリトスにツッコミながら去っていくリオネーラの背中に軽く手を振るミサキ。無表情で手を振る光景はなかなか怖いらしく、向かいから眺めていたレンの笑顔は結構引き攣っていた。


「……さて、しっかり仕事しないと」

「そうですね」

「……多分リオネーラは必然的に選ばれてしまったと思うから、残された私達が足を引っ張るような事はあってはならないし」

「……そうなんですか? あ、でも確かにセンパイを向かわせる訳にはいきませんしね。でもそれならわたしでも良かったんじゃ?」


 実際エミュリトスでも上手くやれるだろう。レンを嫌っている訳でもないしレンに避けられている訳でもないのだから。

 ただ、それよりも優秀で仕事を頼みやすい立場のリオネーラに任せてしまった方が間違いなく早々に片付く、というのはある。もしくは……


「……もしかしたら、私とエミュリトスさんは既にセットで見られてるのかもしれない。先生達から」


 少なくともミサキにベッタリになってからの姿を最低でもディアンとボッツと教頭には見られているわけで、有り得ない話ではない。

 なおミサキが信用の置ける生徒と見られているかはまた別問題である。最悪エミュリトスは「魔人に魅入られた哀れな生贄」と見られている可能性もあるという事だ。

 もっとも、仮にそう見られていたとしても本人はまるで気にしないだろうが。むしろ望むところなので。


「……それはつまり、先生達公認ということですね!?」

「…………? 何が?」

「……はぁ。なんでもないです」


 たぶんどう見られていようとこの二人はずっとこんなノリなのだろう。




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