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せっかくガールズラブタグ付けてるんだし多少はね?


「ちょ、ちょっとミサキさん? 何を言い出すんですの?」

「……私のワガママだけど、出来れば二人には仲良くして欲しい。勝負するにしてももっと爽やかに競い合える関係がいいと思う」


「敵意をむき出しにするのではなく、ライバルとして競い合うような、ですか?」

「うん」


 エミュリトスが上手に援護する。サーナスはあたふたしているし、リオネーラは困惑しているが。


「……うーん、ミサキが言うのならちょっと考え直さないとね……確かにサーナスはミサキには若干優しかったし」

「や、優しくなんてないですわ!? わたくしは――」


「サーナスさんお静かに」

「むぐっ」


 エミュリトスが今度はサーナスの口を手で塞ぐ。またしても上手な援護である。

 しかしプライドの高いサーナス相手にその方法はどうなのか……と思いきや、意外にも普通に大人しくしてくれている。


「……………むへっ」

(うわ……)


 よく見たら可愛らしい女の子の手が口元にあるというシチュエーションに脳をやられているだけだった。

 気づいたのは――というか本性を知っているのが――ミサキだけであり、彼女も気づいた事を表に出さなかったため残り二人は気づかない。

 否、一応あと一人、ここ保健室の主もミサキ側ではあるのだが……どんな魔法を使ったのか、いつの間にか姿を消していたのでノーカウントとする。


「…………リオネーラ。サーナスさんは人付き合いに関して不器用なだけで、本心では仲良くなりたいと思ってるみたい。勝負を通して」


 人付き合いが不器用とか、本来ならお前が言うな案件なのだが事情を知っている人が他にいないのだからしょうがない。


「不器用ねぇ……それを信じるとしても、なんで勝負を通す必要があるのよ?」

「それは、その……自分の強さを認めてもらいたいとか、頼りにして欲しいとか……そんな感じ?」

「なんで若干疑問系なのよ……」

「気にしないで」


 勿論サーナスの本心である『幼い子に懐かれたい』というちょっとアレな願望をいかにしてマイルドな表現にするか脳内で四苦八苦しながら喋っているからである。


(サーナスさんの願望はリオネーラに勝たないと叶わない。だからこそ何でもかんでも勝負にしようとしてる……それはわかる。けど――)


「うーん、まぁ……今日と昨日の戦いを見て、サーナスがレベル相応の実力をちゃんと持ってるのは認めてるわよ。そこに辿り着くまでにちゃんと努力してるのも」

「むごっ……?」

「特に魔法に関してはエルフだけあってかなり洗練されたものを感じるし。あたしがレベル29だった頃と比べてもかなり、ね」

「……………」


 かなりの塩対応をされていたはずのリオネーラからの賞賛の言葉を聞き、サーナスは(口を塞がれたまま)フリーズした。

 だがまぁ、強さに対してストイックなリオネーラが相手の強さを正確に評価するのは至極当然の事である。そのくらいはミサキにだってわかる。


(そう、懐いてもらうまでは行かなくても、実力を正当に評価してもらう位なら実力を見せるだけでいいはずなんだ。勝負する必要さえない)


 そして、リオネーラからちゃんと評価して貰えている事を知れば、サーナスも無意味に鬱陶しく絡む事は止めるはずだ。

 絡み方さえ改善されればリオネーラも見所のあるサーナスをそこまで邪険にはしないだろう。そこから懐いて貰えるかは本人の努力次第。


(これで全て丸く収まる……と思うけど、念のため誰かの意見も聞いておきたいな)


 ちょんちょん、とミサキが手招きするとエミュリトスは手を離し、そのまま歩み寄ってミサキの居るベッドに腰掛けた。

 若干距離が近く感じたがミサキは特に気にも留めず、小声で耳打ちする。


「これでいいと思う? あまり自信ないけど」

「い、いいと思います……」

「……あ、もしかしてくすぐったい?」


 顔を少し赤くして身じろぎする様子からそう察したが、返ってきたのは否定の言葉。


「い、いえ、そういうわけではないので遠慮しないでください!」

「……遠慮?」

「いや、その、えっと、気にせずもっとしてください!」


 否定どころか催促され始めた。


「って違う! そんな変態的な催促をしたい訳じゃなくて! ミサキさん引かないで!」

「いや、大丈夫、引いてないから……どうすればいいのかわからないだけで」

「そ、そうですか、ありがとうございます。あのですね、別にくすぐったいわけじゃないんです。ちょっと緊張するだけで……」

「……そう。こんな外見だし、仕方ないか」


 自身の外見が恐れられるものである事は既に嫌というほど自覚している。ならば近づくだけで身を引かれたり、身を固くされたりしても仕方がない。


(少しばかり仲良く話ができたからって、浮かれて近づきすぎたかな。普通に話をしてくれるだけでも感謝しないと――)

「ち、違います! 外見とか関係ないですし、そもそも怖いって意味の緊張じゃないです!」

「……違うの?」


 本気でそう思っていたが違うらしい。必死に語る目の前の少女が嘘を言っていない事くらい、コミュ力の低いミサキにもわかる。

 じゃあ何なのか、という所まで想像出来ないのは彼女の残念な所であるが。


「わたしは……ミサキさん、あなたを尊敬しています。さっきの戦いを見て、あなたこそが尊敬に値する『お姉さま』だと確信しました。わたしはあなたを崇めます。信奉しています。だから……近づかれると緊張してしまうんです」


「……………えっ?」


 前言撤回。ここまでの重い想いを想像出来てたら逆に怖い。


「ミサキさん。わたしは理解したんです、あなたについていくべきだと。心で理解したんです。お願いです、わたしを妹としてお側に置いてください……お姉さま」

「…………………???」


 今度はミサキがフリーズする番だった。


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